イベント報告
Wi-Fi Allianceと共に「2017 Tokyo Wi-Fi Summit」を開催
総務省渡辺局長、NTT栗山取締役が講演
無線LANビジネス推進連絡会 事務局
7月25日、ウェスティンホテル東京で、「2017 Tokyo Wi-Fi Summit」がWi-BizとWi-Fi Allianceの共催、総務省後援で開催されました。今後のWi-Fiの発展を展望する方向が示され、昨年を上回る157名の国内外の専門家が参加しました。
「日本におけるWi-Fiの未来とは - IoTから2020東京オリンピック・パラリンピック、そしてその先へ - 」と題して、世界と日本の無線LANビジネスの現状と今後について理解を深め、2020オリンピック・パラリンピック等今後の無線LANビジネスの推進を図るため、総務省 総合通信基盤局長 渡辺克也氏、日本電信電話株式会社 取締役新ビジネス推進室長 栗山浩樹氏、Wi-Fi Alliance マーケティング担当Vice President ケヴィン・ロビンソン氏、Wi-Biz小林忠男会長から講演が行われました。
無線LANビジネス推進連絡会 会長 小林 忠男
小林会長がWi-Fiへの期待を語る
司会のWi-Biz渉外・広報委員長である江副氏の開会を受けて、挨拶に立ったWi-Biz小林忠男会長は、昨今のWi-Fi利用可能エリアの拡大を例に、既にWi-Fiは人々の生活で無くてはならない存在となり、今後4K/8KやVR/AR、さらにIoTのアクセスなどとしてますます活用され発展が期待されると語りました。
「Wi-Fiは2020年の生活基盤の一部になる」
サミット最初の講演として、総務省 総合通信基盤局長 渡辺克也氏より、「2020年のワイヤレス社会実現に向けて」と題して、2020年に5GやWi-Fiが一翼を担うワイヤレスを機軸としたスーパースマートインフラが人々の生活の基盤となり、家電、クルマ、社会がネットワークに繋がりIoTを実現すると、社会の進展やサービス例を織り交ぜつつ具体的に判りやすく講演されました。
これまで音声・ブロードバンド等コミュニケーション中心であった携帯電話は、2020年には5Gの高速・多接続や低遅延と言った特性を生かし、ロボットのリアルタイム制御やIoT等様々なサービスが実現できるようになり、その際に、既に家庭やオフィスに普及しているWi-Fiは市場の早期立ち上げに重要な役割を果たすこととなることから、Wi-Fiが更に広げ様々なサービス展開につなげたいと、Wi-Fiへの期待が述べられました。
総務省 総合通信基盤局長 渡辺克也氏
「5Gの時代にもWi-Fiは更に拡大」
続いて、Wi-Fi Allianceのマーケティング担当Vice Presidentのケヴィン・ロビンソン氏より、「Wi-Fiの今後の展望」と題して講演が行われました。
家庭には現在、8400万台以上のWi-Fi対応のスマートホームシステムが、2021年には5億台近くまで爆発的に増え、さらに5Gの登場でWi-Fiへのオフロードトラヒックが低下するという意見もある中、今後は64%まで増えると予想されており、5Gの次世代においてもWi-Fiはモバイルネットワークを補完する重要な役割を果たす存在であると述べました。
他方、Wi-Fiは既に5Gのビジョンを具現化しているものの、周波数帯が不足してきており2020年にはデータ容量が周波数容量を超えてしまうという問題が示されました。本問題に対しては、Wi-Fi Allianceとしても各国政府へ働きかけており、既に欧州やアメリカでは6GHz帯の利用を検討する動きがあることが報告され、引き続きWi-Fi業界全体で、この問題に対する取り組みを訴えて行きたいと語りました。
Wi-Fi Allianceマーケティング担当Vice Presidentケヴィン・ロビンソン氏
「Wi-FiはB2B2Cのデジタルマーケティングの手段となった」
日本電信電話株式会社 取締役 新ビジネス推進室長 栗山浩樹氏からは「ワイヤレス・Wi-Fi・光の融合」と題して、今後のWi-Fiビジネスで参考となるWi-Fiの活用例や、都市化等社会的課題解決に向けた取り組みの方向性について講演が行われました。
これまで、訪日外国人客拡大に向け劇的にカバレッジを改善してきたWi-Fiは、単に通信環境の提供だけではなく、福岡市におけるWi-Fiベースの導線分析や滞留ヒートマップ等様々なサービスに付加価値を提供しています。また、高密度Wi-Fiが設置されたスマートスタジアムでは、観客への各種コンテンツ配信に加え、飲食物の受発注にも活用する等、B2B2Cのデジタルマーケティングの手段となっており、さらにドコモの「Dazn」を例に、高密度スタジアムWi-Fiでの観客向け通信サービス提供や光ファイバーによる企業へのコンテンツ提供、モバイルを使ってコンシューマ向けコンテンツ配信等、顧客ニーズに応えるためトータルでの設計が求められると語りました。
また、既に日本は人口減少・高齢化だけではなく、都市化の問題においても世界のフロントランナーであり、量・規模から質・調和といった、都市のQuarity of Lieが実現できるかが問われており、様々な産業やサービスのスマート化が社会的、経済的課題を解決するドライバーとなると同時に、2020年のレガシーとして、ユニバーサルデザインの考えや仕組みをスマートの中に組み込むヒューマンストーリーを目指す方向であると語りました。
日本電信電話株式会社 取締役 新ビジネス推進室長 栗山浩樹氏
「マネージドWi-Fiネットワークを実現するWi-Fi Vantage」
引き続き、Wi-Fi Alliance ケヴィン・ロビンソン氏より「マネージドNWの進化・発展」と題し講演がありました。
東京のようにAPの密度の高い地域で、シームレスでより良いユーザエクスペリエンスの提供にはマネージドWi-Fiネットワークが必要となり、これに向けWi-Fi Allianceではいくつかの認証プログラムを提供しています。Wi-Fi CERTFIED Passpointは手間いらずでシームレスな接続を実現する認証機能と、業界標準の高いセキュリティ機能を規定し、既に多くの端末OSに実装されています。
また、Wi-Fi VantageはこのWi-Fi CERTFIED PasspointとWi-Fi CERTIFIED acを基盤としたもので、ネットワークオペレータやデバイスメーカがマネージドWi-Fiネットワークを実現するためのリファレンスとなるもので、2018年までに順次機能強化され、殆どのサービスが提供される予定になっています。
また、60GHz帯を利用しマルチギガビット接続を可能とするWiGigも2018年までに提供されます。
さらに、IoTに適した長距離伝送を可能とする802.ahの認証プログラムであるWi-Fi HaLowや、802.11acに継ぐより効率的かつ高速に通信が可能となる次世代の高速規格802.11axが2020年以前に提供可能となると語りました。
「Wi-Bizの出番、役割はこれまで以上に増える」
最後の講演としてWi-Biz小林忠男会長から、「日本のWi-Fi動向」と題して講演が行われました。
802.11bの相互接続認証が礎となり、Wi-Fiは18年で光やLTEと並ぶ情報通信基盤となりました。また、ここ数年の官民あげての取り組みで公衆無線LANが一気に拡大した反面、品質やセキュリティ及び接続手続き等普及に伴い顕在化してきた課題に加え、802.11adの日本での商品化の遅れやIoT向けの802.11ahの実用化の目処が立っていないこと等、日本における牽引役不足に関する課題が示されました。
また、今後のWi-Fi市場創出に向け、更なるWi-Fiスポットの充実・拡大の他、4K・8Kの高画質映像配信やSNSでのリアルタイム映像配信等Wi-Fiならではの機能を活用したサービス・コンテンツ一体ソリューションの提供、モバイルとWi-Fiが連携し全体最適化されたワイヤレスシステム提供、IoTへの展開に向けた各種提言等が示されました。
最後に、今後ビジネスチャンスの増加に伴い、業界が一丸となり取組むべき課題も増加する中で、推進役や調整役としてWi-Bizの出番や役割がこれまで以上に増えるとの認識が示されました。
無線LANビジネス推進連絡会 会長 小林 忠男
なお、当日の講演資料の一部はWi-Fi AllianceのHPよりダウンロード可能です。
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