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Wi-Fiとモバイルは5Gに向け融合が進み、Hotspot2.0が鍵を握る
岩本賢二
Wi-Fiとモバイル(携帯電話網)は相反するという意見がありますが、WBAの会長でありAT&T副社長のウィルソン氏の意見は、それとは随分違うようです。「FierceWireless」の記事を紹介します。
Wi-Fiオフロードを始めたAT&T
Wi-Fiと携帯電話網の融合を議論する際、必ず出てくるキーワードとしてオフロードという言葉があります。
AT&Tは初期のiPhoneの独占キャリアでした。そのAT&TがiPhoneをリリースした当時、大量のトラフィックが携帯電話網を圧迫し、ユーザーに迷惑を掛けないように開始したサービスがWi-Fiオフロードと呼ばれる、携帯電話会社によるWi-Fiサービスでした。
世界で最初にオフロードサービスを行ったAT&Tはそのサービスのお陰で、Wi-Fiと携帯の両方を融合して行うサービスの重要性にいち早く気づいた会社でした。
AT&Tはタイムワーナーの買収を宣言し、コンシューマ向けのビデオストリームサービスを開始し、この事業を拡大してきました(買収については米司法省が提訴中です)。
その後AT&Tはビデオソリューションを企業向けにも展開を行いました。その展開先の一つとしてフリートマネジメントと言われる物流分野が挙げられます。
以前のフリートマネジメントでは世界中を動き回るトラックなどの位置を追跡するだけでしたが、最近では積み荷の情報をリアルタイムに配信し、高価な積み荷を監視したり、タクシーにカメラを設置したりするサービスを提供しています。
これらのサービスを行うにあたり根幹となる技術が「Hotspot2.0(Passpoint)」です。
AT&TのほとんどのWi-FiネットワークがHotspot2.0に対応しているため、携帯電話網とWi-Fi網をシームレスに連携させることが可能なのです。
このように世界で最もWi-Fiと携帯電話網の融合に経験のあるAT&Tの副社長ウィルソン氏はWBAの会長もしています。
「FierceWireless」によると、ウィルソン氏は「Wi-Fiと携帯電話網はさらに統合されていっており、今後、さらに急速に統合されていきます」と話しています。
Wi-Fiは5Gにおける重要な要素の一部になっていきそうな気配です。
数年前まではWi-Fiが5Gの一部になると言ってもピンと来ませんでしたが、今ならIEEE802.11axが5G標準の一部になろうとしていることを考えると、その先見性はあきらかでしょう。
ウィルソン氏によると、Wi-Fi、携帯、LTE-Mなどいろいろなアクセス技術が出てきていますが、それら自身はそれほど重要ではなく、むしろ「それぞれ異なるメディアをシームレスに連携させ、どのように統合させて、どのような使い勝手を利用者に提供するかが重要になってくる」ということです。
今後数年間で、各通信メディアの統合が加速し、WBA、3GPP、IEEE、Wi-Fi Alliance、GSMA、Small Cell Forumなどの団体がさらに密接に連携することになっていきそうです。
各通信メディアが統合され、一つのシステムのように見えると、統合されたエコシステム全体のトラフィックをまとめて管理することが出来るようになります。
このメディア統合(連携)のために重要な要素が「Hotspot2.0」といわれる前出の技術です。
AT&Tをはじめとする海外の携帯電話会社はHotspot2.0を広く採用しており、5Gに向かって統合が進んでいるようです。
海外では広く普及しているHotspot2.0ですが、日本ではあまり聞き慣れません。
しかし、皆さんが今使っているスマートフォンやパソコンは、ほぼHotspot2.0を既にサポートしています。なぜ日本ではHotspot2.0が利用されていないのか不思議でなりません。
参考
https://www.fiercewireless.com/wireless/wba-wi-fi-part-5g-and-more-hotspot-2-0-way
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