Wi-Fi技術講座 第1回
2.4G帯と5G帯の使い分け
シスコシステムズ 前原 朋実
Wi-Fiシステムを設計するためには、Wi-Fi独自の技術について体系的な知識を持つ必要があります。
また、様々なトラブルを解決するためにも、基礎的な技術知識と現場で発生する特有の事柄について分析する力を持つ必要があります。
今回から、Wi-Fi技術の基礎と現場で必要となる諸知識について解説する講座を始めることにしました。
第1回は、周波数についての基本的な理解を得たいと思います。
2.4G帯と5G帯の周波数の特徴
Wi-Fiで利用できる周波数帯には、2.4G帯と5G帯があります。それぞれ、次のような特徴があり、また規格によって使用する周波数帯が異なります。
利用周波数帯をさらにデータ通信用に区切った周波数帯の幅をチャネルと呼びます。
2.4G帯では1~13チャネル(802.11b利用の場合は14チャネルまで)が利用可能ですが、通信が低下するなどの悪影響を避けるため、周波数帯が重ならないチャネルを選択する必要があるので、そのうち実質3チャネルを利用するよう標準化団体から推奨されています。一般的には、1、 6、 11チャネルを利用します。
他方、5G帯は36チャネル~136チャネルの19チャネルを利用できます。
基本的に、チャネル数が多い5G帯のほうがチャネル同士の干渉への考慮の負担が少ないため、アクセスポイントを数多く並べていく企業向けにおいて設計がしやすくなっています。
ところで、2.4G帯で利用していた場所に5G帯が使えるアクセスポイントを同じように設置したのに電波が届かないエリアができる場合があります。
これは、5G帯の方が直進性が強く、障害物が多い場合に電波が回りこみにくいためです。
なお、5G帯は国ごとに使えるチャネルや仕様が異なりますので、注意が必要です。
5G帯は、チャネルごとに3つのグループにわかれており、W52,、53、 56 という名称になっています。
W52、53、56はそれぞれ特徴があります。
- W52:屋内利用限定の4チャネル(36~48)で、DFS (後述) とTPC(後述)が不要です
- W53:屋内利用限定の4チャネル((52~64)で、DFSとTPCが必須です
- W56:屋内・屋外ともに利用可能な11チャネルで、DFSとTPCが必須です
DFS (Dynamic Frequency (control) Selection) とは、W53、 56の周波数帯では、船舶や気象レーダーなども同じ周波数帯を利用しており、それらの干渉波を検出した場合、ダイナミックに周波数 (チャネル) を変更する仕組みです。アクセスポイントの出力が200mW未満の場合は-62dBm以上のレーダー波を観測した場合にDFSが動作します。
つまり、次のようになります。
- アクセスポイントの起動時やチャネルの変更時にそのチャネルにてレーダー波の干渉がないか1分間調査を行う
- アクセスポイントの通信中もレーダー波の干渉がないか監視し続け、干渉を発見した場合には合計260msec以内に通信を停止し、10sec以内に該当チャネルを明け渡すため別チャネルに変更する必要がある。なお、移動先のチャネルはランダムに決定される
- レーダー波を検出したチャネルは30分間使用できない
TPC (Transmit Power Control) とは、干渉を回避するために無線の出力を低減させる仕組みです。
DFSによるランダムなチャネル変更を避けたい場合は、アクセスポイントでW52限定に利用制限したり、事前にサーベイを行いレーダー検知しないチャネルを見つけておくことが重要です。
なお、チャネルを固定で設定しても、DFS検知をすればチャネル変更が行われますので注意が必要です。
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