技術情報
特定小電力無線の「セルフレジ」が本格化か

技術・調査委員会 松村直哉

よく買い物をする近所のスーパーマーケットで最近、セルフレジが導入されました。といっても購入した商品はこれまで通りレジ係の店員さんがバーコードリーダーで読み込み、最後の会計のみを専用のセルフレジにてクレジットカードか現金で支払うというものです。

何度か慣れれば問題ないのですが、最初は店員の方の横からのサポートで、画面のボタンを押して会計といった具合で、操作になれないと近くの常連さんからの視線が痛い……、なんともお恥ずかしい限りのものでした。

このセルフレジですが、RFIDを利用した完全なセルフレジがユニクロの姉妹店GUで始まっています。
https://www.excite.co.jp/News/bit/E1477464449656.html

920MHz帯域の中出力(~250mW)を利用しているものと思われます。このパッシブ系のRFIDは2012年に特定小電力無線局の扱いに統合されており、登録申請が不要ということで利用促進されています。

さらに、2020年にはコストが5円以下になるともいわれ、利便性に加え低コストにより利用範囲が広がるものと思われます。
以下、GUで採用されているセルフレジのプレスリリースです。
https://www.toshibatec.co.jp/release/20170420_01.html

RFIDで利用されている特定小電力無線局(空中線電力:250mW、周波数帯:916.7~923.5MHz)はLoRaWANやSIGFOXといった特定小電力無線局(空中線電力:20mW)と920.5MHzから923.5MHzの3MHzで重なっているバンドになります。

Wi-Fiで利用されている2.4G帯や5G帯と比較して周波数が低いため障害物に対して回り込みやすい特性があり、電力の値にもよりますがよく飛ぶと言われています。

総務省「920MHz帯小電力無線システムの高度化に係る技術的条件」に920MH帯について紹介されています。今回ご紹介したRFIDはこの中のパッシブ系(250mW)、特定小電力無線局に該当します。

http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban14_02000292.html
総務省:「920MHz帯小電力無線システムの高度化に係る技術的条件」より抜粋

920MHzのこうした特性からセルフレジで利用されているRFIDリーダーはきちんとBOXに格納する仕組みになっています。確実に自分の購入した衣類のみの会計をするためにはこういった工夫が必要になり、遮蔽がないと隣で購入した衣類までカウントする、といったことが起きてしまいます。

また、電波を利用していますので水分や金属との相性は悪く、例えば水分を多く含む生鮮食品やDIYの工具などの金属にRFIDタグを取り付け読み込ませる場合など、さらなる工夫が必要になってくると思います。

現状では200回の洗濯に耐えるリネンタグや1、2mmの厚さの書類を管理するタグ、金属に取り付けを可能とした金属対応タグなど、さまざまなターゲットを管理するためのタグが用意されています。
http://www.fujitsu.com/jp/group/frontech/solutions/business-technology/intelligent-society/rfid/uhf/tag/

タグの価格が5円以下、さらに1円以下になることで現状のバーコードに変わりRFIDタグがすべての製品を管理するIDとして取り付けられる日も近いかもしれません。


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