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総務省が「地域IoT実装推進事業」の提案を公募

渉外・広報委員会 森田基康

4月25日、総務省から「情報通信技術利活用事業費補助金(地域IoT実装推進事業)」に係る提案公募が行われました。
総務省 公募サイト URL
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu06_02000163.html

今回の公募に当たっては、「IoT実装推進タスクフォース」でこれまでに実証等の取組を通じて創出された、「分野別モデル」の普及展開を図るため、地域での先導的な取組の提案を募集し、「地域IoT実装推進ロードマップ」を更に推進することを目的としています。

無線LANビジネス推進連絡会においても「IoT実装推進タスクフォース」に小林顧問がアドバイザーとして参加して、積極的な活動を実施してきました。その継続的な取組の一環として、今回の公募に当たって無線LAN「Wi-Fi」の切り口でどのような事業モデルの提案が可能か整理してみました。

公募する事業

地域IoT実装推進タスクフォースにおいて策定されたロードマップのうち、以下に該当する「分野別モデル」の横展開事業であること。

【公募を実施する分野別モデル】
□ プログラミング教育
□ 医療情報連携ネットワーク(EHR)
□ 子育て支援プラットフォーム
□ G空間防災システム
□ スマート農業・林業・漁業
□ 地域ビジネス活性化モデル
□ 観光クラウド
□ オープンデータ利活用
□ ビッグデータ利活用
□ シェアリングエコノミー

参考1:ロードマップの詳細は以下のURLを参照。
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu06_02000164.html

提案可能な分野

考え方として利用者側と提供者側でスマートデバイス等の端末機器、IoTデバイス等との情報のやり取りがあれば、必ず何らかのインフラが必要となることから、そのインフラが4G等のモバイルインフラなのか、Wi-Fi等のアンライセンスのインフラなのかの違いになってきます。

そのことから分野別モデルのうち、何モデルがWi-Fiを活用したモデル事業の参考例になるかを紹介します。

① プログラミング教育

(分野別モデル)
クラウド上の教材(学習者用教材・指導者用テキスト等)や、地域の人材を指導者として活用するプログラミング教育の実施手法。

(実装による効用・効果)
居住地域等問わず、児童生徒が論理的思考力や課題解決力、創造力等を効果的に身につけることが可能に。

(事業概要と概要図)

教育分野においては「Wi-Fiのすべて 無線LAN白書2018」の第8章でも記載していますが、タブレットを利用した授業モデルの推進を進めています。
その一環で文部科学省では、新小学校学習指導要領におけるプログラミング教育の円滑な実施に向けて、今年3月に「小学校プログラミング教育の手引(第一版)」を発行しました。

プログラミング教育は机上で紙ベースによる思考、思考した内容に対しタブレットを利用して、Scratch等のプログラム学習ソフトで検証して行く事が多いようです。

そのことからこの分野における事業モデルでは、1.タブレット、2.Wi-Fi環境、3.プログラミング学習ソフト、4.先生方に対しての指導者育成プログラム、5.家庭環境でもセキュアに学習できるクラウド環境等含めた、プログラミング教育推進の事業モデルの提案が可能になります。

② 医療情報連携ネットワーク(EHR)

(分野別モデル)
クラウド技術の活用により、医療機関と介護事業者間の双方向連携や広域の地域医療圏における情報連携を実現するネットワークを導入。

(実装にわる効用・効果)
クラウド技術の活用により、医療機関と介護事業者間の双方向連携や広域の地域医療圏における情報連携を可能とし、患者/要介護者が効果的な医療、介護サービスを享受することができる環境を整備し、患者/要介護者のQoL(Quality of Life)の向上、家族/介護補助者の負担軽減、健康寿命の延伸等に貢献。

(事業内容と概要図)

このモデルの基本的な考え方はクラウドベースの「Connect クラウド EHR」の環境を構築、そのクラウド環境に基幹病院、診療所、保険薬局、検診機関、介護施設、訪問介護ステーション等、様々な医療機関が接続して、医療や診療行為含めた介護作業等の情報の共有化を図り、医療行為全般に渡る作業の効率化を進めることです。

教育分野同様に医療分野においても、「Wi-Fiのすべて 無線LAN白書2018」にも掲載されている通りWi-Fi環境の整備がされているので、今後は機関病院だけではなく、先の診療所、保険薬局、検診機関、介護施設、訪問介護ステーション等でも、タブレット端末やスマートデバイスによる情報入力が進むため、Wi-Fi環境のニーズが高まってくると推測できます。

ただし、今回の事業モデルの提案にあたっては、「Connect クラウド EHR」の環境構築とそれに繋がる医療機関等のシステムであり仕組みによる事業モデルとなるので、Wi-Fi環境については次ステップの繋がる医療機関等でビジネスが発生します。

コアな事業モデルになりますが、訪問介護ステーション等をベースにしたモデル事業であれば、必ず訪問先個宅に何らかの情報端末の利活用(Connect クラウド HERに接続する専用APLを実装した端末)がモデルの中に入るので、この情報端末の接続環境としてWi-Fiが必須となってきますので、事業モデル提案の際の参考にして下さい。

③ G空間防災システム

(分野別モデル)
地震・津波等による広域災害や緊急性を要する大規模災害に対して、津波の被害予測や地下街等の屋内における避難誘導、災害情報の一元化などG空間情報(地理空間情報)とICTを連携させて構築する先端的な防災システムを導入。

(実装にわる効用・効果)
地域連携を図り、自治体職員等が津波の被害予測や災害状況、人の所在など災害時の判断に資する情報を取得することで、地域住民の迅速・適切な災害情報の取得が可能となります。地域の災害に対する予測力・予防力・対応力が強化されることにより、被害の縮小と復興・復旧までの経済的・時間的ロスの最小限化を図ることで、地域住民の安心・安全の確保に資する。

(事業内容と概要図)

当該分野の事業モデルは大別すると1.G空間プラットホーム、2.G空間防災システムになり、この両方の仕組みをベースに事業モデルの策定が必要となります。

また市場モデルとしてもモデル設定がされていて、モデル1「波浪計等のセンサーデバイスを活用した避難誘導情報の提供」、モデル2「地下街等の屋内空間における災害情報の提供」、モデル3「山間部や過疎地域等における有事の際の災害情報の迅速な把握と提供」となります。

市場モデルとしてWi-Fiが必要となるのは、モデル2の屋内空間における災害情報の提供となる。モデル1やモデル3においてもバックホールとして4G等のモバイルインフラがメインとなるが、モデル1のセンサーデバイスを束ねるところでWi-Fiによるバックホールネットワークを形成して、Wi-Fiの先にセンサーデバイスを接続する提案が可能となります。

④ スマート農業・林業・漁業

(分野別モデル)
センサー、ビッグデータ等の活用により、農林水産業の生産性向上・高付加価値化を図ることのできるシステムを地域の農林漁業者等が導入します。

(実装にわる効用・効果)
既存従事者は軽労化・省力化ができるようになり、新規就業者は高収益化・技術継承の簡易化により参入増加・早期育成が可能となり、農林水産業全体の魅力向上に寄与。

(事業内容と概要図)

農業・林業・漁業分野においては、概要図に記載している通りセンサーデバイスを活用した事業モデルの提案が中心になっています。そのことから③で記載をした内容と同様で、そのセンサーデバイスの情報をどのようなバックホールを活用してどのようなインフラで収集するのか、4G等のモバイルインフラもあり、Wi-Fi等によるバックホールもあり、利用する場所によってもインフラが限定されるのが、この分野の特長であるといえます。

農業であれば比較的にWi-Fiを活用した事業モデルの提案が可能となるが、林業や漁業の場合はWi-Fiによるインフラ提案は運用面等を考慮してもハードルが高くなると思います。

ここで取り上げたWi-Fiの活用モデル以外にも、IoT分野においては様々なインフラ環境が必要となり、ライセンスバンドとアンライセンスバンドの両方を上手く活用した提案をすることが求められています。そのことからもインフラとして適材適所の提案をすることにより、よりバランスの取れた事業モデルになるはずです。

IoTがより身近になる環境を作ることが、市場活動の深耕を後押しにすることになります。そのためにもアンライセンスバンドのWi-Fiか担う役割には大きいものがあります。


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