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インタビュー
無線LANビジネス推進連絡会会長 北條博史氏

Wi-Fiの一層の発展へ「4つの取り組み」を進めたい
会員企業の皆様とともに一致団結して業界の課題解決へ

 

4月26日の無線LANビジネス推進連絡会(Wi-Biz)総会において、北條博史氏が会長に就任しました。

北條氏に、新会長としての決意と今後のWi-Bizの活動の方向性についてうかがいました。

 

 

「Wi-Fi」「Wi-Biz」とも創生の頃、運命の出会い

――新会長就任おめでとうございます。

北條 4月26日のWi-Biz総会において小林前会長より会長職を引き継ぐことになりました。いわばWi-Bizの「創業者」であり日本におけるWi-Fiサービスの「祖」ともいえる小林前会長の後任ということで、身の引き締まる思いです。

―― Wi-Bizには、以前からかかわっておられました。

北條 Wi-Bizには、2013年の設立当初から技術委員会のメンバーとして参加しています。また2年目からは新技術導入促進委員会の委員長として、約2年半の間Wi-Bizの活動を行っていました。

――Wi-Fiに出会ったのは、いつごろですか。

北條 まだ「Wi-Fi」という言葉がなかった2000年頃、私がNTT研究所に在籍しているときに自営系の高速無線アクセスシステムの開発をスタートした時が始まりです。
当時の無線LANは、2.4GHz帯のものが出始めた頃でした。「802.11」で付加文字が付かない規格でした。

当初はいろいろな方式の検討がありましたが、最終的には世界共通の新たな規格として有線(10Base5:10Mbps)よりも高速な無線通信規格「802.11a/b」(最大54Mbps)が出来ました。それがWi-Fiとの正式な出会いです。

その後、2010年までは研究所に在籍し(内2年間はNTT西日本に移籍)、公衆無線LANサービス運営会社であるNTTBPの無線LAN技術の普及を行いました。
2010年からはNTTBPに移籍し、Wi-Fiサービスの技術担当としてWi-Fiビジネスのサポートを行ってきました。

安定した展開から飛躍に向けて

――Wi-Fi市場の現状をどう見ておられますか。

北條 Wi-Fiは2002年頃からスタートし、当初は用途がオフィスでの利用や一部エリアでのノートパソコンの接続が主流でしたが、スマートフォンの出現以降は目覚ましい発展・普及を遂げてきました。

特に公衆無線LANは、モバイル通信の飛躍的増加により、トラフィックのオフロード先として一気に普及しました。それと並行して、プライベート空間への普及も進みました。家庭へのWi-Fi親機の設置はスマートフォンから家の光回線を使うための必須アイテムであり、またビジネスホテルを中心に宿泊施設のWi-Fi設備もお客様サービスとしてなくてはならないものとなりました。最近では中学・高校などの教育機関にもWi-Fiの設置が進んでいます。

Wi-Fiの普及が進み、さらにスマートフォンの一般市場への普及が落ち着いてきたことで、パブリックWi-Fiのインフラ構築はほぼ安定期に入りました。なお、2020の東京オリンピック・パラリンピック開催までは、オリンピック関連施設を中心にアクセスポイント増加の状況は継続すると思われます。

――好調のWi-Fi市場のなかで、課題はどういうものでしょうか。

北條 ビジネス市場として、一定の位置付け獲得したWi-Fiですが、スマートフォンの普及によってITに詳しい人だけでなく、誰でもが利用することになったため、いくつかの課題が明確になってきました。

・2.4GHz帯の品質の低下
・品質の悪いWi-Fiとの中途半端な接続の問題(LTEとの切り替え)
・セキュリティの確保(安全・安心なネットワーク)
・認証の煩雑さ
・犯罪の抑止

今後はこれらの課題を解決していく必要があると考えています。

次の発展に向けて「4つの取り組み」を

――そういったWi-Fi市場のなかで、Wi-Bizの役割について、どうお考えですか。

北條 Wi-Bizはこれまで、小林前会長のもと日本のWi-Fiビジネスの普及のために様々な活動を行ってきました。
Wi-Fiを適正に利用するための「安心安全な公衆無線LAN提供のためのガイドライン」の作成・頒布、技術セミナーの開催による新技術の紹介・普及、Wi-Fiアライアンスとの連携、さらには災害時のWi-Fiの共通SSID化による利用促進など多くの重要な活動を進めてきました。

特に共通SSIDである「00000JAPAN」については、災害時にキャリアの枠を越えて共通に利用可能となる被災者の有用なアクセス手段として活用されました。

さらにWi-Fiビジネスのさらなる普及に向けた取り組みの一環として、女性アイドルグループである「でんぱ組.inc」とのコラボも進められています。

Wi-Bizでは、前会長の舵取りのもとに、さらなるWi-Fiビジネスの拡大及びWi-Fi市場創出のための以下の4つの柱を目標に進めてきました。

① 更なるWi-Fiスポットの充実・拡大と課題の解決
② 量から質への転換
③ ワイヤレスと光の融合による全体最適の実現
④ IoTへの展開

今後についてもこの方針にのっとり、具体的には

〇 品質やセキュリティなどの現状Wi-Fiの課題解決
〇 新たに標準が制定された新無線方式(802.11ac/ac/ah)の導入促進
〇 第5世代(5G)時代のWi-Fiネットワークの構成の検討
〇 Wi-Fiを活用した新サービスの検討

などの取り組みを業界横断的に進めたいと思います。

 

――会長就任にあたって、会員企業はじめ関係者の皆様にアピールしたいことは何でしょうか。

北條 小林前会長の作ってこられた流れを継続するとともに、私自身これまで培ってきたWi-Fiの経験を活かし、Wi-Fiビジネスの普及・発展に力を尽くしたいと思います。

Wi-Fiはプライベート利用から公衆サービスまで幅広い利用形態があるため、Wi-Bizも幅広い業界のメンバーから構成されています。競争領域を意識しつつ、Wi-Fiビジネス市場そのものを広げる取り組みを中心に、一致協力して今後も積極的に活動を進めていきたいと思っております。

また、Wi-Bizの活動をより拡大するために、Wi-Fi関連会社としてのキャリア、ベンダ、SI会社、工事会社の皆様、さらにはWi-Fiを活用する自治体・企業の皆様にWi-Bizの活動に参加いただくように継続してメンバー拡大の取り組みも行っていきたいと思っています。

Wi-Bizメンバーの皆様、また、設立以来ご支援をいただいておりますデータ通信課、地域通信振興課をはじめとする総務省の皆様の引き続きご支援をよろしくお願いいたします。


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