技術情報
防爆仕様に対応したIoT機器
技術・調査委員会 松村直哉
防爆構造が求められる危険物施設
Wi-Fiは今や企業の事務所や倉庫、工場などで当たり前のように使われています。事務所ではノートPCを会議室に持ちこんでの資料確認や、会議中にSkypeなどでチャットし、同僚に瞬時に意見を聞く、といった光景も普通になってきました。
倉庫でもWi-Fiに対応したハンディ端末を利用したり、位置情報を取得(精度は高くないですが)したりと利用範囲が広がっています。また、金属の壁や製造設備が周りにある場所や、高温高湿度の工場においてもWi-Fiが使われ始めています。さらに工場はIoTによるセンサーでの生産状況の見える化も進んでいます。
このような状況において、さらに劣悪な環境でのIoT化が動き始めています。「防爆仕様」です。爆発性の高い可燃ガスなどが使われている危険物施設の電気設備は防爆構造であることが定められています。
https://www.neca.or.jp/wp-content/uploads/boubaku_pamphlet.pdfより引用
一方、国際標準はというと「IECEx (IEC規格)」をベースとして、欧州だと「ATEX」、米国だと「FM」とか「UL/CSA」など国ごとに多数存在しています。(ロシア、中国、韓国、豪州、などそれぞれ)
日本の場合は、「TIIS(産業安全技術協会)」ですが、カタログ上の表記は、「Ex …..」という表示になります。
http://www.nohken.com/japan/technology/reference/explosion_prevention_standard.pdf
国際標準の「IECEx (IEC規格)」のコンセプトは各国それぞれにある規格をIECExとしてまとめ、一回、認証すればいいようにしよう、というものです。
日本も規制緩和の掛け声のもと規制緩和が進み、現在は以下の運用になっているようです。
- IECExベースで、政府が認めた認証機関の認証結果は日本の認証でも受け入れる
⇒ 一度試験したところについては再度の試験は不要 - 一部、日本独自の差分があるので、そこは試験が必要
(試験データがあるなら前項の範囲内で認められる) - 再試験は、上述のようにある程度不要になるものの、日本での検証そのものは必要、検証機関はTIIS(産業安全技術協会)
詳細は以下の冊子を参照ください。
http://www.tiis.or.jp/pdf/TIISNEWS_2017269.pdf
防爆対応のWi-Fi機器
このような爆発性のあるガスなどが周りで使われている環境下で使うことが許されている防爆対応の無線LANについて、以下にご紹介します。
利用される場所についてははIEC規格でZone0, 1, 2で定義されています。
- Zone0:爆発性ガス雰囲気が、連続してまたは長期にわたり存在する場所
- Zone1:爆発性ガス雰囲気が、通常運転時に発生しがちな場所
- Zone2:爆発性ガス雰囲気が、通常運転時に発生し難く、発生しても短期間のみ存在する場所
◆ シスコ (Aironet 1552H)
https://www.cisco.com/c/m/ja_jp/products/wireless/outdoor-wireless/aironet1552h.html
Zone2までの対応のため設置できる場所は限定されます。
また、給電については以下の3つの方法が準備されています。
- Power over Ethernet (PoE) 入力
・パワーインジェクターを使用した 56VDC給電
(一般のPoEをサポートしたスイッチ等では使用できません) - AC電源入力
・100 – 240 VAC - 外部DC電源装置による入力(防爆非対応)
・12 VDC
◆ 旭化成
https://www.asahi-kasei.co.jp/aeics/exgp/product/exap/
https://www.asahi-kasei.co.jp/aeics/exgp/product/exnt/
Zone1/2対応のものがあります。
APだけなくPoE対応スイッチもあるので柔軟に設置できます。
◆ JFEエンジニアリング
http://www.jfe-eng.co.jp/products/energy/control_system/cont01.html
Zon1/2対応しています。
端末はiPhone, iPadベースで防爆対応したものをそろえています。
◆オリエントブレイン
http://www.orientbrains.co.jp/product/wt-3100/
http://www.orientbrains.co.jp/product/ws-2400/
http://www.orientbrains.co.jp/product/wt-x/
http://www.orientbrains.co.jp/product/db-24/
無線AP、スイッチ、電源など一通りあります。
もともとは防爆の監視カメラをやっていて、その周辺機器的な位置づけのようです。
防爆の標準化団体としては一般社団法人「日本電気制御機器工業会」があります。
https://www.neca.or.jp/boubaku/
防爆は無線LANアクセスポイントのケースの気密性を高めて、電子機器が何らかの原因により発火や放電が起きても揮発性ガスに引火しないというものです。特殊用途ではありますが工場やプラントなどのIoT化を進めるための重要な役割を果たす製品だと思います。
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