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ビジネス情報
新事業所デジタルコードレス「sXGP」はWi-Fiの競合になるか

IT情報通信ジャーナリスト 藤井宏治

デジタルコードレス電話にLTE取り入れる

6月18日にVAIOが、ノートPC「VAIO S13」と「VAIO Pro PG」に搭載している通信モジュールを「sXGP」で利用するための認定を取得したと発表しました。これらのノートPCには、英Telit Wireless Solutions社の通信モジュールが搭載されています。

sXGPは携帯電話の主力方式LTEをベースとした事業所デジタルコードレス電話の無線システムです。
日本でデジタルコードレス電話に使われている1.9GHz帯が、中国の携帯電話最大手、チャイナ・モバイルが利用しているLTEの国際バンド(バンド39)に包含されていることに着目し、市販のバンド39対応LTE端末を子機として利用できるようにすることを狙って開発されました。

LTE基地局(sXGPアクセスポイント)の制御機能を用いて、端末の送信出力を日本の1.9GHz帯デジタルコードレス電話の規定値に抑制することで、市販のスマートフォンやデータ通信端末に一切手を加えずに、免許不要のコードレス電話の子機として利用できるようにしています。

日本で販売されているiPhoneなど、多くのバンド39対応スマートフォンは、技術的にはsXGPのアクセスポイントに接続できますが、電波法上、sXGPの子機として使うためには、デバイスメーカが改めて技術基準に適合しているかどうかの認証(技術基準適合証明)を受ける必要があります。

冒頭のVAIOのケースは市販のノートPCでは初の技適取得製品となるもので、今後、スマートフォンを中心に、市販のLTE端末の技適取得の動きが広がるものとみられます。

sXGPアクセスポイントなどのネットワーク側の機器についても、sXGP端末と公衆LTEをシームレスに使えるサービスを計画しているNVNOのBBバックボーンや、通信モジュールなどを手がけるエイビットと中国のLTE基地局ベンダー・バイセルズの合弁会社バイセルズジャパンが秋をめどに製品化を進めており、年内には企業のsXGPの導入が始まることになりそうです。

搭載LTEモジュールがsXGPの技術基準適合証明を取得した「VAIO Pro PG」

電話、遠距離、省電力に強みを持つsXGP

さて、sXGPは無線LANと同じIPベースの構内無線データ通信網であり、一部のユースケースでは無線LANと競合すると考えられます。

代表例は、言うまでもなく電話です。
事業所用コードレス用として規格化されたsXGPですが、電話の実現技術には規定がなく、BBバックボーンがPBXベンダー5社と推進している共通仕様のIP電話や、携帯電話サービスで使われている標準仕様のVoLTEなど複数の技術の利用が見込まれています。

いずれにしても、電話サービスの提供を前提に開発されたLTEをベースとするsXGPでは、無線LANを用いたIP電話より高い通信品質が期待できます。
sXGPで用いられる1.9GHz帯は、無線LANの2.4/5GHz帯よりも電波が回り込みやすく、LTE自体も遠距離通信に強いため、効率的にエリアをカバーできる利点もあります。

事業所用コードレスの領域ではsXGPが一定のシェアを獲得することは間違いないでしょう。
データ通信においても広域エリアをカバーしやすい特性を活かして施設内の監視カメラを効率的にネットワークに収容するといった利用も広がりそうです。

LTEで開発されているeDRX(extended Discontinuous Reception)やPSM(Power Saving Mode)といった高度な省電力機能を実装することで、自動検針など長期間の電池駆動が求められるユースケースにも対応できる可能性もあるでしょう。

では、sXGPが無線LANを置き換える存在になりえるかというと、答えは否といえるでしょう。最大の要因は、sXGPで利用できる周波数の幅が5MHzしかなく、データスループットが10数Mbps程にとどまることです。オフィスのPCをすべてsXGPで収容するのは困難です。

sXGPでは内線電話網として整備したネットワークを、例えば無線LANの電波の届き難い場所にあるデバイスをネットワークに収容するといった用途でも利用するという形が中心になると見られます。
現状では無線LANとsXGPは相互補完の関係にあるといえるでしょう。


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