技術情報
AIスピーカー連携(Amazon Echo)を解剖
驚きの赤外線リモコンと「半端ない」機能
無線LANビジネス推進連絡会 会長 北條 博史
最近、テレビのコマーシャルで頻繁にAIスピーカーが出てくるようになりました。「アレクサ、JPOPを聞かせて」、「OKグーグル、10分後に知らせて」など、AIスピーカーに指示を出せばいろいろやってくれるようです。
私も当初は、「友達のいない根暗な独身男が寂しさを紛らわせるためにつかっているのでは」と偏った考えを持っていたのですが、いろいろ調べてみると、画期的な機能を実現できるポテンシャルがあることに気付き、さっそく購入して使ってみました。その便利さと可能性についてご紹介します。
購入するまでの調査
もともと新しいものや話題のものをただ新しいからという理由で購入することはしない達なので、話題になっていたAIスピーカーで何ができるのかを把握するために、まずはその広告をチェックしました。
① いろいろな情報を音声でリクエストすると、AIスピーカーが音声で答えてくれる
ニュース、天気予報、スポーツの結果、わからない単語の意味、そのほか何でも。
② インターネットの音楽サイトと連携してリクエストした音楽をスピーカーから流してくれる
「松田聖子の曲を聞かせて」と言うと音楽サイトにあれば、適当な曲を選んで流してくれます。
サイトにない場合は、連携しているサイトの会員になり登録すれば聞けるようになります。
③ アラームのセット、タイマーのセット
知らせてほしい時間にアラームをセットするとチャイム音で知らせてくれます。
「3分後に教えて」などとインスタントラーメンの時間を計測することもできます。
④ 対応した家電製品のコントロール
LAN(無線LAN)インターフェースを持ち、AIスピーカーに対応した家電製品の制御がAIスピーカーに音声で指示することで可能になる。
というようなことが書いてありました。
音楽はスマートフォンで聞けるし、情報も直接スマートフォンに入力した方が音声で答えてもらうよりもいろいろな情報を取得できるし、タイマーもアップルウォッチでやった方が早いかも……。
唯一魅力のある家電コントロールは、そもそも無線LANインターフェースを持った家電なんて、現在でもテレビとレコーダーくらいしか知りません(しかもAIスピーカーに対応しているかどうかも不明)。ましてや、無線LANインターフェースのある照明なんかいつ出てくるか、全く笑うしかありません。
やっぱり、「友達のいない根暗な独身男」用なのかと思って、口コミサイトなどを見ていると、何と「AIスピーカーに対応した無線LANインターフェースをもつ赤外線リモコン装置を使うと………」という情報を見てこれはいけると思いました。
赤外線リモコンとの出会い
実は昔から家の中の家電製品のネットワーク化(「ホームオートメーション」などと言っていた時期もあった)をどうするかということで、多くの人がいろいろな方式を提案してきましたが、なかなか普及しない状態でした。
その理由は、無線の方式だけでも、最近でこそWi-Fiで共通化する取り組みはなされているものの、以前はBluetoothやZigBeeがあり、さらにIoTの各種方式などいろいろあって、それらをすべて統一してコントロールするなど、大金持ちが家の中にあるすべての電化製品を一括で買い替える時ぐらいでしかありえない環境でした。
しかしながら家で家電をコントロールできる統一した共通インターフェースが一つあり、それは赤外線だったのです。ただ、各家電にはそれぞれ独自のリモコンがあり、仮に赤外線信号を覚えられるユニバーサルリモコンを買ったとしても、どのボタンが何の電源をONにするのかなど覚えるのは大変でした。
このような中、スマートフォンが無線LANで赤外線リモコンとつながることにより、スマートフォンのアプリ上で家電を選び、疑似リモコンとして家電を操作できるようになりました。そしてさらに、AIスピーカーの出現で、その操作を音声でできるようになったのです。
私の家の中のネットワーク構成を図表1に示します。ちょっとややこしいですが、アマゾンエコーと赤外線リモコンをWi-Fiで接続し、部屋の中の各機器は赤外線でコントロールされます。なお、テレビとブルーレイはメーカ機能の映像転送(パナソニックはジャンプリンク)のためにWi-Fiで接続されています。
各装置がどういった機能を持っていて何ができるのかを以下で説明します。
赤外線リモコンの進化
長い歴史を経て今ではほとんどの家電機器の操作が赤外線で可能になりました。照明、扇風機なども例外ではありません。今回購入したeRemote Mini(以下eRemoteと略します)はクラウドと連携して、主要メーカのテレビ、エアコンなどの赤外線信号をセットすることができます(起動画面は図表2(a))。
これによりスマートフォンのアプリの中にテレビのリモコン(図表2(b))やエアコンのリモコン(図表2(c))を再現することができて、特殊な操作を除けばメーカオリジナルのリモコンは必要なくなります。
また、照明や扇風機については、リモコンからのオンオフ信号を覚えさせることによって同じくアプリからのコントロールが可能になります。eRemoteには現時点では、テレビ、エアコン、照明などのひな型があり簡単に設定することが可能で、今後さらにひな形が追加されていくものと思います。
さらに、eRemoteでは、「シーン」というものが登録できるので、複数の赤外線信号の連続動作が可能になります。例えば夏の暑い日に家に帰った時に、照明、エアコン、扇風機、テレビなど一気に全部オンにする「シーン」を作成(図表2(d))しておくと、全部オンにするアイコンをタップするだけで、すべての機器が動作を開始します。
各シーンはクラウドに登録されているので、このコントロールは遠隔からも可能になり、家に帰る直前に電源をオンしておくことも可能です。
アマゾンエコーの機能と赤外線リモコンとの連携
アマゾンエコーそのものの機能は、たくさんありますが、冒頭に説明した4つの機能の中の④家電製品のコントロールについて説明します。
アマゾンエコーは「Amazon Alexa」というスマートフォン用のアプリをインストールして設定を行います。私は持っていないので例示できませんが、アマゾンエコーに対応した家電はこのアプリで直接コントロールできるものと思います。
一方、対応していないものについては、アマゾンエコーが持っている機能拡張インターフェース(「スキル」)を使って家電のコントロールを行います。それが、eRemoteとの連携です。
「Amazon Alexa」アプリ上で「スキル」という項目を選ぶと、いろいろなスキル(拡張機能)がリストで出てきます。これらは連携したい装置を提供する側で作成するソフトウェアであり、eRemoteの場合は「LinkJapan eHome」が作成したスキルになります(図表3(a))。このスキルをダウンロードして家のeRemoteを登録することにより、アマゾンエコーからeRemoteをコントロールできるようになります。
これによって、eRemoteでアイコンをタップしていた動作が、アマゾンエコー経由でしかも音声でできるようになります。この設定は、スキルの設定画面でeRemoteに設定してある家電や「シーン」を登録しておくだけです(図表3(b))。
これにより、登録した時のキーワードをアマゾンエコーに話しかけると、eRemoteから赤外線信号が出るという仕組みです。家電(例えばエアコン)を指定した場合は、「アレクサ、エアコンをつけて」と言えば、エアコン電源オンの赤外線信号が出ることにより、エアコンのスイッチが入ります。
また、先ほど設定した「シーン」を「ぜんぶつけよう」という名前でアマゾンエコーに登録すると、「アレクサ、ぜんぶつけよう」としゃべると、設定した家電の電源が全部オンになります。リモコンの場所を探したりする必要もないし、スマートフォンを操作する必要もなく、完全ハンズフリーになるわけです。他にも、テレビや照明をつけたまま寝てしまう人などは、「おやすみ」というキーワードを登録しておけば、「アレクサ、おやすみ」と言えば全部消してくれるなどとても便利です。
音声でいろいろなことができると、人間はなまくらになり、運動不足になってしまう可能性もありますが、体の不自由な方などにとってはこの上なく便利な機能だと思います。
アマゾンエコーの今後
「スキル」によるeRemoteとの連携をご説明しましたが、他にもいろいろな機能拡張があるようです。音楽サイトと連携することにより、アマゾンエコーのスピーカーから音楽を流したり、電子書籍のサイトと連携をして本の読み上げを行ったりすることができます。
また、電子メールの受信読み上げなどもできるスキルもあるようです。実はAmazon Fire Stickも購入してVODやスマートフォン連携も楽しんでいますが、別の機会があればご説明したいと思います(これもとっても楽しいです)。
アマゾンエコーはまだ出たばかりで、今後この拡張機能によってより便利な使い方が、どんどん出てくると思われます。
家電メーカが自分たちの製品に囲い込むために、自社製品同士だと便利に連携できる機能を内部リソースで開発している(いた)これまでの状況に対して、今後は、メーカフリーでユーザ自身が開発可能なプラットフォームを提供しているアマゾンエコーなどのAIスピーカーが、世の中のベースとなって、さらに多くのAIスピーカー対応の家電が発売され、より人にやさしい「スキル」もAIの力を得て導入され、無限の可能性を秘めたホームネットワークが出来上がっていくのではないでしょうか。
ぜひ、若者の頭脳を結集して私たち老人をサポートしてもらいたいものです。
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