目次ページへ

趣味と仕事
過去と未来を描く、古典SF・ファンタジーの世界

富士通 吉田 治朗

8月にセミナーで、人生100年時代に関連したお話しを聞く機会がありました。
いろいろ有益な話題がありましたが、第二の人生で「自分が何をしたいのか知る、そのための手段として本屋さんがお勧めです。本屋さんの中をめぐり、手に取ってみて、一番気になった本、コーナーは何か、その一画にこそ関心があるものです」とのお話でした。

私は昔から書店で必ず立ち寄るコーナーがあります。大昔、中学生の時、ファンタジーとSFに夢中になり、本屋さん、図書館の中を巡ったワクワク感を今でもその一角では思い出します。

そのコーナーで手に入れてから、もう何十年もずっと一緒に居る本があります。今回は、そのいくつかを紹介させていただきます。

数年前にやっと手に入れた本

まず、最近手に入れた本のことです。昔から探し続け、やっと手にいれたものです。
A・メリットの「ムーン・プール」と「金属モンスター」です(昭和44年、昭和45年初版)。

 

A・メリットはアメリカの作家で、1900年代初頭に活躍した作家です。失われた文明が現代社会(といってもその当時の社会ですが)と交わる、SFにも近いものです。

昔、古本は足で探すしかありませんでした。今はインターネットにより本当に楽に探せます。ただ、ネットの中では、その本の痛みの程度は写真と売主のコメントよる情報しかなく、なかなか購入に踏み込めずにいたのですが、新橋駅の恒例行事である「新橋古本市」で、見つけ購入しました。
探し初めてから手に入れるまで約40年かかりました。

人生を共にする本

 

今も、ずっと一緒に居る本とは、古典ファンタジー・SFの「アトランの女王」です。

この本は中学生時代に図書館で借り、食事の時間も惜しみ、毎日深夜まで読みました。社会人になり、直ぐに古本屋で購入しました。当時は図書館の文庫本コーナーで創元推理文庫とハヤカワ文庫を片っ端から読んでいました。

ストリー自体は完全異世界ものであり、現在ではラノベに分類されるような内容です。実はこの本は日本で3巻発行されていますが、最後の4巻が翻訳されていません。しかし、そんな難物ですが、細部にわたる異世界の姿に魅惑され、今でも手放せない1冊となりました。

ちなみに、この本の世界はホモサピエンスとしての人類が登場する前の時代です。

 

次は、「地底世界のターザン」です(E・R・バロウズ 昭和43年初版)。

 

ターザンは説明不要と思いたいのですが、最近のヒーローといえばマーベルものですが、古典ファンタジー・SFのヒーローといえば、コナンや、ターザンなのです。

この本はちょっと変わったものなので、少し触れておきます。E・R・バロウズはヒロイックファンタジーの大家であり、3つ有名なシリーズを書きました。1つがターザン、もう1つが火星シリーズ、そしてあと1つがペルシダーです。この本は人気シリーズのペルシダーにターザンの主人公が登場したものです。
映画でも主人公が共演する人気シリーズがありますが、それです。

 

そして、A・E ヴォン・ヴォクトの「宇宙船ビーグル号」です。

 

1900年代半ばに活躍した作家です。この前の3冊はファンタジーでしたが、この本はSFです(ただし‘高度に進んだ化学は魔法に見える’の法則通り、その分解の境界線はあいまいですが)。

特にこの本で記憶に残るのは‘総合科学’です。科学の専門化が進み、異なる分野では共有の価値観の共有すら困難となったことから、科学を統合すること自体を目的した科学分野が発生する社会です。

これだけを書くと設定重視の作品のようですが、実際は、人類とエイリアンの出会い、異なる生物間の理解に取り組むフロンティア物です。

 

最後に、デューン「砂の惑星」で、アメリカでの初版は1965年です。

 

写真は最近再訳で発売されたもので、旧版からは3冊目の蔵書になります。この作品は古典SFの人気投票ではほぼ確実に上位にでてくる作品です。映像化が何度も図られ映画、TVシリーズとDVDも出ています(配信ではなく、DVDの‘板’なのが時代を感じますが)。

この作品の評価では‘エコロジー’がよく取り上げられます。まだ、エコロジーという単語が一般的に使われる前に、環境と人、動植物の関係を作品の大きな柱として取り入れ、SFであはありますが、リアルを感じさせる、今も色褪せない作品です。

 

 

 

未知への関心、好奇心

さて、仕事とのつながりです。
ファンタジーやSFは異世界や、過去、未来が描かれます。SFの古典である‘月世界旅行’や、ロボット3原則を現した‘われはロボット’など、その空想の中で未来を予想したものが、現代は‘事実’の内容です。最後に書きました‘砂の惑星 デューン’ではAIすら過去のものとなった世界が描かれています。

ビジネスでも常に新しい技術、サービス、ビジネスに関心を持ち、日々追い求める欲求は、ファンアタジー、SFに通じると思います。未知のものに関心を持ち、好奇心を育み、知りたいと追い求める心を常に持ち続けたいと思います。

そのうち書店巡り、本屋さん探査もVRで実現されるのも遠くないのではないかと、原稿を書きながら考えました。


目次ページへ

■Wi-Biz通信(メールマガジン)の登録はこちら