技術情報
みちびき(準天頂衛星システム)が11月1日サービス開始
技術・調査委員会 松村 直哉
週末の日曜日の夜は「下町ロケット」を視聴している方も多いと思います。その中で佃社長が熱弁するシーンで「ロケットはGPSや気象予報など、多くのサービスを提供し、みんなを幸せにしているんだ!」と話しています。
GPSはよく聞く言葉ですが正確には複数あるGNSS(全球測位衛星システム)のうちの1つで、米国が打ち上げたシステムの名称です。
佃社長が熱弁をふるったのは、日本が独自に打ち上げた衛星「みちびき(準天頂衛星システム:英語名称QZSS)」のことです。
この準天頂衛星システム/みちびきは、この11月1日にサービスが開始され、安倍首相も出席した記念式典が開催されました。
2010年9月に初号機が打ち上げられ、現在は3号機の静止軌道衛星と3機の準天頂軌道衛星の4機体制でサービスが開始されました。
*イベントの詳細は以下を参照ください。
http://qzss.go.jp/events/ceremony_181105.html
みちびきが提供するサービスのうち衛星測位サービス(単独測位)は、みちびきからGPSと同一周波数・同一時刻の測位信号を送信することにより、GPSと一体となって使用し、安定した測位をすることができるサービスです。
みちびきは天頂付近に長い時間留まるため、GPSのみ利用するケースと比較すると、とりわけビルの谷間や山間部などにおいては位置情報がより安定的に得られるようになりますが、測位精度自体はGPSと同等の誤差となります(一般に、GPSなどによる1周波の衛星測位では、誤差は10m程度になると言われています)。
精度をサブメータ級に向上するためには電離圏遅延や軌道、クロック等の誤差の軽減に活用できる情報(サブメータ級測位補強情報)を、またセンチメータ級に向上するためには、国土地理院の電子基準点のデータを利用して電子基準点を用いて補正情報を計算し、現在位置を正確に求めるための情報(センチメータ級測位補強情報)を、それぞれみちびきから送信します(みちびきのサブメータ級測位補強サービス、センチメータ級測位補強サービス)。
*電子基準点については以下を参照してください。
http://www.gsi.go.jp/kizyunten.html
みちびきはこれらの測位補強サービスのための誤差補正情報を地上に向けて送信します。
この送信信号はメータ級の測位の場合、L1S信号(1575.42MHz)、センチメータ級測位の場合、L6信号(1278.75MHz)と呼ばれる「みちびき」独自の信号となっています。
現状はL6/L1S信号を受信できる専用の受信機を利用することにより、センチメータ級の位置測位を実現しています。
近い将来、精度の高い位置測位は自動運転に欠かせないサービスになると思います。自動運転車の実証実験は一部のエリアで始まっています。
少し先の未来では日本の空を飛ぶドローンは精度の高い位置測位によって運行管理されるようになるかもしれません。
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