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2018年を振り返って 最近の5G関連ニュースに思う
無線LANビジネス推進連絡会顧問 小林 忠男
2020年の東京オリンピック・パラリンピックまで600日を切りました。毎日JR中央線から眺めることのできる新しい国立競技場も、遠くから見るともう完成しているかなと感じます。あっという間に東京オリンピック開催の日がやってくるのでしょう。
そのような状況の中、2020年から本格商用サービスがスタートする予定の第5世代移動通信システム(以下、5G)も盛り上がっています。
そこで、最近目についた5G関連のニュースをいくつかご紹介します。
(1)VerizonとSamsungが5Gスマートフォンを販売
Qualcommの次世代フラッグシップSnapdragonを採用した5G対応スマートフォンをVerizonとSamsungが2019年前半に発売する計画を発表しました。
今年の10月からVerizonは、ヒューストン、ロサンゼルス、サクラメント等で加入者無線用途の、モビリティ機能のない「5GHome」により世界初の5Gの商用サービスを開始しています。
今回発表のスマートフォンは、Verizonが2019年早期に開始する5Gモビリティサービスに対応した端末になるとのことです。
今までにないどんなサービスや機能が実現するのかとても楽しみです。
(2)「DOCOMO Open House 2018」で5G活用の大規模展示
NTTドコモは、12月6・7日の2日間、東京ビッグサイトで「ビジネスを、世界を、5Gで革新する」と題して今までにない大規模展示会を開催しました。
残念ながら私は行くことは出来ませんでしたが、パンフレットによると「5Gに加え、AIやIoTなどの最新技術から、それらを活用したビジネスソリューションまで幅広く紹介するとともに、協創を進めているパートナーの講演、展示など多彩なプログラムを用意」したとのことです。行った人によると来場者も多く盛況だったとのことです。
値下げ圧力が増す中で、今までの回線料だけのビジネスモデルから脱却し、「非通信」分野での売り上げを伸ばすためには、これまでとは違うパートナーとのコラボが必要で、その手段に「5G」が必須だということだと思います。
昨年に比べると、展示数は240を超えて2倍に、スペースは4倍に。商用サービスに向けてどんな魅力的なサービスが出てくるか楽しみです。
(3)HUAWEI副社長の逮捕と日本におけるHUAWEI製品の調達禁止
先週、私には衝撃的なニュースが飛び込んできました。カナダ司法省が5日、中国通信機器大手HUAWEIの孟晩舟(メン・ワンツォウ)・最高財務責任者(CFO)をバンクーバーで逮捕し米国に身柄が引き渡される可能性がある、というニュースです。
それに続いて、日本政府が、HUAWEIとZTEの製品を各府省庁などが使用する情報通信機器から事実上、排除する方針を固め、それに対して、在日本中国大使館は、日本側が措置を実施すれば、「中日(日中)の経済協力のためにならない。強烈な反対を表明する」との報道担当者の声明を発表した。
更に、12月11日の日経新聞によると、「NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの携帯電話大手3社は10日、次世代通信「5G」の基地局などに中国製品を使わない方針を固め、2019年10月に第4の携帯キャリアとして参入する楽天も、中国製の通信機器を使う予定はない」とのことです。
今回のHUAWEI騒動の問題は前から指摘されていましたが、ソフトバンクは基地局と端末にHUAWEI製品を使用しています。ドコモはHUAWEI製の基地局は導入していませんが、スマートフォンは前から販売しています。毎日のテレビコマーシャルでも盛んにHUAWEI製のスマートフォンを宣伝しています。
今回の調達禁止対象品目の中には、通信インフラに加えて、パソコン、スマートフォンの端末も含まれています。
この問題はこれから本格化する5Gビジネスに大きな影響を与えることになると思います。HUAWEIは5Gのインフラ及び端末の開発、商品化において世界のトップ企業だからです。
全国規模で大きなビジネスチャンスになる5GからHUAWEIは後退することになり、新たな企業がチャンスをつかむかもしれません。日本の企業にチャンスが来るかどうかは分かりませんが。
(4)ソフトバンクの大規模障害
HUAWEIの副社長が逮捕された翌日の6日に、ソフトバンクの大規模な通信障害が全国規模で発生し、約4時間半に渡って通信が出来ませんでした。
スマートフォンが必須な昨今、多くの人に多大な迷惑を与え、全てがワイヤレスでつながる時代におけるネットワークの重要性に改めて気が付きました。LTEが使えないのでWi-Fiの電波を探して辛うじて通信を行ったというニュースも流れていましたが、自然災害以外にWi-Fiが重宝がられるのは如何なものかと思います。
障害の原因は、エリクソンのソフトの問題であることが直ぐに報道されましたが、この報道に私は、違和感と時代の変化を覚えました。
大規模障害の一義的な責任はサービスを提供するキャリアにあります。キャリアがネットワークインフラの仕様を定め、それに合致した製品を複数のメーカーから調達しネットワークを構築します。これらの製品が原因でお金を払っているお客様に損害を与えた場合は、サービスを提供している企業が全ての責任を負うことになります。
今回は、障害を起こしたキャリアではなく、交換機を製造したメーカーが原因釈明をしており、今まで感じたことのない違和感とこういう対応もあるのだという時代の変化を感じました。
(5)5Gの自営用周波数割当
無線LANビジネス推進連絡会の総会が先日、沖縄の那覇市で開催され、総務省の田原電波部長から「5G時代に向けた電波政策」の講演をお聞きしました。
大変勉強になりましたが、その中で、5Gの自在な利用環境を提供することを可能とするため、4.5GHz帯で200MHz幅、28GHz帯で900MHz幅の自営用周波数の割当の検討を速やかに行うとのお話がありました。
どのような条件でどのようなシステムになるか分かりませんが、PHSのように病院やオフィス、ホテルで誰もが自由に5Gを使える、また、Wi-Fiのようにアンライセンスで自由にネットワークを構築できるシステムになれば、多くの人たちが最先端の5G技術を使ったサービス、アプリケーションを考案し提供することが可能になり、現在は発想されていないような全く新しい市場の創出につながると思います。
以上が最近の5G関連で私が気になった話題です。
今のLTEサービスは2010年に始まりました。
世の中は、ワイヤレスが当たり前の時代になり、YouTubeをはじめとする高速のワイヤレスネットワークを不可欠とする動画の時代になり、また劇的に端末ビジネスを変革したiPhoneの登場により、LTEはなくてはならない社会インフラとして順調に進化を遂げてきたと思います。周波数も700~900MHz帯、1.5/1.7/2GHz帯及び3.5GHz帯と使いやすい周波数を使っています。
2020年から始まる5Gの周波数は、3.7GHz帯、4.5GHz帯と28GHz帯です。
5Gは、「超高速」「超低遅延」「多数同時接続」が売り物になっていますが、ワイヤレスビジネスの最も重要なポイントは、5Gが使用する周波数で上記の3つの特長を実現するエリアがきちんと実現できるかです。
すなわち、電波が届けばなんでも実現可能なのですが、新しい周波数を使ってお客様が望むような電波の届くエリアを作ることが出来るかどうかが全てです。
今のLTEのように面的に日本中どこでも使えるエリアが構築出来れば問題ないのですが、周波数的にかなりの困難が予想されると思います。
スポット的にエリア展開することは可能ですが、その場合はWi-Fiとあまり変わりのないワイヤレスインフラになってしまうかもしれません。
5Gは今までのW-CDMAやLTEの延長線上にないビジネスモデルになるのだと思います。Wi-Fiの世界においても同じことが言え、802.11ahはこれまでの80211b、a、g、n、acの延長線上のビジネスモデルは通用しないでしょう。
技術ありきではなく、お客様は、市場は何を求めているかの視点からどんな技術が必要かという議論をもっと深めることが重要だと思います。
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