特別講演 総務省総合通信基盤局 田原康生電波部長
5G時代に向けた電波政策(後半)
電波政策トピックス 無線LAN
Wi-Fiについてですが、「5.2GHz帯無線LANの屋外利用」は今年6月までに省令改正を行っています。
衛星との共用の関係で世界的にはまだダメとなっていますが、先行事業者とある程度の合意ができているので、制度化を先行して踏み切りました。
ただ屋外では免許不要は難しいので登録局とし、1W相当まで出せますが、数はある程度限定されます。一定の管理の下で、この帯域も使っていいですよという形です。その上の5.3GHz帯の議論もあるのですが、衛星との共用が厳しくて国際的な議論が進んでいないという状況です。
来年「WRC」があり、議題になっていたはずが、最近議題の中身の検討が動いていないようです。現在は、5.6GHz帯の上の方、5.7GHzあたりで少しでもチャネルの拡大ができないかと議論をしているところです。
さらにアメリカで使える5.8GHzまで使えないかという議論があって、国交省とずっと議論していますが、なかなか堅くて議論が膠着状態です。
ただ、技術も進みますし、相手方のシステムも変わってきますので、そういった中で使えるところは使えるよう引き続き議論を続けていくということで、我々としては、周波数確保の目標として5.3GHz帯や5.8GHz帯でもWi-Fi用の電波を確保するという目標は堅持し、引き続き調整は続けていこうと思っています。
さらに、Wi-Fiの高度化の部分で、高速化に向けて11.axの議論は引き続き検討を進めて参ります。
電波利用料制度、電波制度改革
先ほどの5Gの実証実験もそうですけれども、そういったいろいろな活動に使わせて頂いている予算として電波利用料というものがあります。
電波利用料というのはWi-Fi事業者からは頂いていませんが、携帯事業者や放送事業者から頂いています。
携帯事業者からだと数百億円、放送事業者から数十億円頂いておりますが、頂いたものを電波の有効利用ですとか、電波を使っている皆さんのためになるような、電波の監視や管理も含めていろいろ使っていきましょうという制度です。
今年度の予算は約600億円で、その中で公衆無線LANの環境整備支援とか、携帯電話の置局整備の関係では新幹線トンネルでの不感対策などを行っています。2020年までに全新幹線のトンネルについて、携帯電話が使えるようにするという目標で、これは目処が立っています。
また山間地等で携帯電話が使えないエリアを無くしていこうと取り組んでおり、残りが1万3000人くらいになり、人口カバー率が99.99%くらいになりました。さらに残りの0.01%を無くして行こうと取り組んでいます。
このほかに、沖縄とか鹿児島県の離島などでは、島までの海底ケーブルがないと4Gなどのサービスが提供できませんので、海底ケーブルの整備支援などもやっています。
こうしたもののほか、新しいシステムの開発、例えば、先ほどの5Gの開発や実証、Wi-Fiの高度化に向けた技術試験を行うとか、そういったところにも電波利用料は使われています。免許不要のWi-Fiには使いませんということではありません。
今年度は600億円ですけれども、来年度は「760億円+事項要求」となっています。
事項要求というのは、額はまだハッキリ決まらないものの、それなりに実行するのでまず要求するという枠なのですが、イメージとすれば800億円以上要求しているという形になります。
「電波利用料を増加させる方策を検討し、将来必要となる投資等に有効活用する」ということが「骨太の方針」として閣議決定されているので、しっかりと必要な施策に取り組んで電波利用料をそれなりに頂きなさいという方針です。
どういう取り組みをしていくのか、代表的な新しいものを3つくらい述べますと、ひとつ目は光ファイバー網の整備です。
これまでも携帯電話基地局の整備とパッケージで、伝送路としての光ファイバーの確保支援を携帯電話事業者に対して行ってきました。今回の要求では、必ずしも携帯電話とは言っていません。
NTT東西が光ファイバー網を整備すると、その先には4Gや5G基地局がある、Wi-Fiをきっちり使うには光ファイバーがないとできないということで、今まで対象としてきた自治体への支援だけではなく、NTT東西や他の事業者を対象に直接補助できないかとしています。59億円要求しています。なぜ民間に直接支援するのかという反対意見もあります。
しかし、私も少し前までに九州にいましたが、自治体にはもう財政的な余力はないというのが現状ですので、我々としては是非実現したいということで要求しています。
二つ目のIoTのセキュリティ対策は極めて重要です。IoT機器の多くは当然無線を使いますから、電波利用料で20億円要求しています。
従来からもWi-Fiセキュリティの周知啓発をやっていますけれども、そういった部分も強化していきます。
新しい部分として、NICTでパスワード設定不備とか情報収集業務が加わりましたが、そこに対する補助なども電波利用料を使ってやっていくということで、セキュリティ関係の取り組みを強化します。
三番目は異システム間の周波数共用です。
1つのシステムで1つの帯域を使うというのはもう無理なので、アメリカではすでに行われていますが、データベースにアクセスして空いていれば使う、日本ではラジオマイクで従来から手作業でやっているのですけれども、あれをもうちょっと高度にやっていくべきだと従来から議論しているところですが、ここをしっかりやっていくため、そのシステムを入れていくための利用状況調査や技術試験などをしっかりやっていきましょうということです。
こういったシステムができると、場所や条件が限定されますけれど、データベースに先ずアクセスして電波を出す出さないを決めてということをきちんと実現できれば、免許不要で利用できるケースも広がっていくかもしれません。
予算が600億円から760億円+αへと増える分、電波利用料を多く徴収しなければならないわけで、携帯電話事業者や放送事業者に負担いただく電波利用料が増えることになります。電波利用料は、使途や料額も含めて電波法に細かく規定されていますので、電波法の改正が必要になります。
電波利用料については、携帯電話の負担分が放送に比べて大きすぎるとの意見があって、それを改善する方向での見直しも行っています。ただし、携帯電話の利用料額の単価を下げても、5Gでは今まで以上に電波を使うようになりますので、携帯電話事業者が負担する電波利用料が下がるということはないと思います。
また、携帯電話が使っている電波は経済的価値が高いので、それなりのお金を取るべきだという意見を規制改革会議から頂いており、経済的価値を反映した周波数の割当手続きに関する規定の整備を行うこととしています。
これは、オークションとまではいかないですが、今度ここの電波を割り当てますと言ったときに、その価値を幾らと評価するか申請者に出してもらって、実際に電波の割り当てを受けた際には、評価した金額をその事業者に納めてもらう制度を導入しようというものです。
例えば、Aさんが100億円払いましょう、Bさんは80億円払いましょうと言ったら、Aさんに加点して評価しましょうという制度です。納めて頂いたお金はどうするかというと、Society5.0の促進に使うべきだといった議論になっていて、頂いたお金を関連の施策に使えるよう、制度設計を進めています。
最後に、新しい規格、例えば、ahなりaxなりが米国で先に出来、それに対応した外国製品を日本に持ち込み試験したいが、まだ日本では「技適」をとっていないといったときに、まず実験試験局を取ってくださいというのですけれども、これが結構面倒という声があります。
最近はいろいろなIoT機器が出てきて、小さなベンチャー企業では、そんな手続きが面倒で対応できないという意見もあります。
こうした意見を踏まえて、例えば、Wi-Fi Allianceの規格に準拠しているが日本の技適はとっていないというものを、短期間であれば、より簡単な手続きで、研究や調査、デモなどに使えるといった制度を導入するため、電波法の見直しを行う方向で検討しています。
こうした電波制度改革を進めることで、電波をより多くの皆さんに、より有効に使って頂き、また新しい分野でも電波をどんどん活用していただけるような環境を作っていければと考えています。
私からの説明は以上となります。ご清聴ありがとうございました。
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