イベント報告 「CES2019」参加レポート
自動運転/AIがさらに進化、ユニークな製品・サービスが多数登場
杉野 文則
毎年、1月上旬に米国のラスベガスで開催されている世界最大の家電見本市「CES(Consumer Electronics Show) 2019」の視察に行ってきました。Web上にも多くのレポートが掲載されていますので状況をご存知の方も多いと思いますが、現地の状況や所感を含めレポートしたいと思います。
2019年1月8日~11日の日程で開催されたCESですが、数年前まではConsumer Electronics Showの名の通り消費者向けの家電の展示会でした。しかし、近年はモーターショーさながらの車を展示プロトタイプとして使い自動運転の要素技術の展示や、AI技術を利用した近未来的な展示など、家電メーカーが主役というよりは自動車メーカーやGoogle、AmazonなどICT企業が会場内でメインの展示エリアを占有していました。しばらくはこの傾向は続くものと思います。展示内容の主なテーマは、「自動運転」「AI」でしたのでそのレポートとともにその他の展示についても視察してきましたので、いくつかご紹介したいと思います。
(1)自動運転
最初に自動運転ですが、1、2年前のモーターショーさながらの雰囲気は少し薄れ(我々が慣れただけかも知れませんが)、自動運転のためのAI等を利用した車外の映像分析後の運転手への通知や、安全運転のための運転者の呼吸や表情などから状態を分析しアラームするなどの展示が多くありました。
HONDAのブースでは、自動運転のユースケースとして危険かつ足場が悪い作業現場等での自動運転車のコンセプトカーを展示していました。
また、ほとんどの車メーカーのブースで写真のようなダッシュボードに前方(または後方)の映像を映し出し物体を検知する画像システムや車の各種データを表示し安心・安全な自動運転技術を展示していました。特に、中国企業はよく自動運転の説明で使われるような技術のプロトタイプを派手に展示していました。
BYTON社(中国)のメーター類を全てパネルに映し、あらゆるナビゲーション情報を提供
自動運転の要素技術としてもちろん5Gの低遅延性を利用した画像分析や上記のより便利になる情報の提供等はありましたが、AmazonのEcho(AIスピーカー)を利用し、車両データアウトプットの一つのインタフェースである「OBDⅡ」のデータと融合し最適な運転を提供することを指向する展示もあり、自車の運転最適化やセンターにデータを送信し故障個所の検知や予防修理を行うことが出来るなど(上述の派手な展示よりも地に足のついた)展示もありました。
(2)AIスピーカー
そのAIスピーカーについては、徐々に我々の生活を便利にするサービスプラットフォームとして発展しつつあると感じます。会場では主にGoogle AssistantとAmazon Echoが展示され、競っている感がありました。Webニュースサイト「CNET」には、今回はGoogle Assistantの展示に軍配というような記事もありましたが、私個人が見た感想としては、ビジネス展開という観点からAmazon EchoがGoogle Assistantを大きく引き離していると実感しました。Amazon Echoが他の出展企業のユースケースを想定した実サービスとして展示されている様をみて、サービスとして離陸間近との印象を受けました。(自宅ではGoogle Homeを使っているので複雑ですが)
Googleのブースはモノレールを降りたすぐのところの一等地に1社で建物まるごと展示スペースにしていました。
Googleの展示ブース内を走るゴンドラ?(ディズニーランドの「It’s a small world」のよう、おばあちゃんの誕生日に、主人公がGoogleを使いながら、ドライブ、買物、パーティの準備などを進めていくというストーリー)中でGoogle Assistantを紹介
Google Assisantで操作できるスマートキーや照明、テレビなども展示
AI通訳のデモ。26か国語に対応(英語からフランス語?のデモだったので翻訳の変換精度は不明)リアルタイム翻訳ではなく、話した言葉を1文ずつ翻訳していました。
○Amazon
自宅を模擬したカプセル型の部屋を準備し、1日の生活でAmazon Echoが使われるシーンを紹介
画面付きAmazon Echo Spot
Amazon Echoで操作可能なスマートキー
Fordのブースに車のトランクにスマートキーを使いAmazon Echoで予約した宅配物を車のトランクに配達したもらうサービスの提案。車社会の米国らしいサービス。
また、中国企業も独自のAIスピーカーを出展していました。
(3)5G携帯電話
5Gについてもいくつか展示されていました。ただ、昨年のMWCからの進歩がみられると期待していたのですが少々残念な感じでした。大々的に展示をしていたのはQualcommとT-Mobileぐらいでしたので、バルセロナで開催されるMWCか来年のCESに期待です。
○Qualcomm
LTEと5Gの速度比較(LTE 49.9Mbps、5G 1.519Gbpsを表示)手前に端末が展示されていたが昨年のMWCで展示済みの端末もあり)
5Gアンテナ(長方形の方です)
○T-Mobaile
5Gの基地局装置プロトタイプ
米国で5G用の周波数として検討されている600MHz帯と38GHz帯のアンテナ
600MHz帯と38GHz帯のスペクトラムを表示し、38GHz帯はアンテナ間に人が入るとスペクトラムが消えて通信が切れるデモを実施
(4)ドローン
ドローンの展示も相変わらず数多くありました。今年の傾向は、人が乗ることを指向し大型化している装置が多くありました。
Bell社の人が乗るドローン。操縦桿はなくリモコン操作とのことです。しかしながら、まだまだプロトタイプと言う印象です。
警察用の人が乗るドローン。かなり大きな音がしたので浮き上がるかと思いましたが結局飛びませんでした。
(5)802.11ax
CESなのでWi-Fiの802.11axの展示は期待していませんでしたが、Qualcommのブースにちょっとありましたのでご紹介します。
左からAskey社(台湾)、NEC、Ruckus社の802.11ax対応のAP
来年は多く展示されることを期待します。
(6)ロボット関連
AIスピーカーとともに生活の利便性向上に役立ちサービスインフラになるであろうロボットについても数多くの展示がありました。
荷物を運んでくれる運搬ロボット
ペッパー君のようなロボットが多数ならんでいました。
(7)所感
今回、主要なテーマであるAIは各企業ともかなり進化しており、特にAIスピーカーは様々なサービスのプラットフォームと成り得ると感じました。その中で展示ブースとしては他を圧倒していたGoogleのGoogle Assistantに期待していたのですが、他の企業ブースで利用されサービスとして広がりがあるかというと以外と存在感がなかったこと、また、逆にブースは派手ではなかったもののAmazon EchoがAmazon自身の得意分野である小売り、物流分野で各企業とコラボレーションし、しっかりサービスプラットフォームを握りつつある印象を強く持ちました。
また、家電メーカーでは韓国のSamsung、LGとSONYがとても元気に展示し、特にLGは有機パネルをふんだんに使った展示やスクリーンのように丸めて収納できるテレビを展示し注目を集めておりアピール度は高く頑張っている印象です。(反対にHUAWEIは展示スペースはひろいものの端末などの既存製品を並べている感じで米中貿易摩擦の影響を受けたと思われる展示内容になっていました)
日本のスタートアップ企業は、Japan ブースとJETROのブースにまとまって展示されなかなか面白い製品もありました。
来年のCESは5Gや802.11axも本格化してくるので、通信関連が前面にでてくることを期待しています。
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