イベント報告
第10回技術セミナー
「Wi-Fi6(802.11ax)による新たな幕開け」をテーマに開催
技術・調査委員会 本橋 篤
3月13日、10回目となる技術セミナーが「Wi-Fi6(802.11ax)による新たな幕開け」をテーマに開催されました。旬の最新技術Wi-Fi6のセミナーということで、多くの方の注目を集め100名を超える申し込みがあり、会場の東陽テクニカ本社ビルは盛況となりました。
*Wi-Fi6と802.11axを同義として「Wi-Fi6」に統一して記載します。
司会は、技術・調査委員会 小松直人委員長が務め、冒頭に、北條博史会長から挨拶がありました。
小松委員長 北條会長
北條会長は、Wi-Fi6は、これまでの無線技術の粋を集めた方式で、セキュリティを強化したWPA3と合わせて、これまでの機器を置き換える形で普及が期待され、今後のWi-Fiの広がりのキーとなることを強調しました。
そして、今後教育現場での普及が見込まれるなど、Wi-Fiの拡大が円滑に進むために連絡会として活動をしていくと述べました。
総務省熊谷室長が電波利用の進展を講演
次いで、総務省 基幹通信室長の熊谷友成様が登壇し、「無線LANの利用環境の整備に向けて-次世代高効率無線LANの導入関係-」と題し講演を行いました。
熊谷室長
熊谷室長からは、電波利用の進展として移動体通信の歴史や、通信トラヒックの増加と社会的な効果が示されました。また、無線LAN利用の拡大として、観光客向けのWi-Fi整備や、教育現場での活用に加え、災害時の情報伝達手段としての活用例(00000JAPANによる無料開放)が紹介されました。
続いて、次世代高効率無線LAN(Wi-Fi6)策定の背景や、5.6GHz帯の周波数拡張、5.3GHz帯のDFSの技術的条件の見直し、さらに、国際動向として5.2GHz帯の屋外利用について紹介がありました。
最後に、海外から持ち込まれるWi-Fi端末の利用や、技適の特例制度、新技術としてマイクロ波を使ったワイヤレス電力伝送の紹介が行われました。
Wi-Fi6の普及に向けたソリューション
後半のトップバッターとして、クアルコムCDMAテクノロジーズ マーケティングシニアマネージャーの長楽智彦様が登壇し、「Wi-Fi6のマーケットへの浸透とソリューション」と題し講演を行いました。
長楽様からは、社名の由来(Quality + communications)や、Wi-Fiへのコントリビューションなど、「ユーザー・ベンダーの縁の下の力持ち」としてのクアルコム社の紹介がありました。また、Wi-Fi6の技術については、802.11acに比べ仕様が拡大されており、オプションを含めると複雑化している点が示されました。
次に、スマートフォン、家庭向けの固定無線アクセス、オフィス、自動車向けなど最新のワイヤレスチップソリューションの紹介や、ユースケースとして、カバレッジの改善に有効なメッシュネットワークやIoT向けのセンサー技術、スマートホームソリューションが紹介されました。
Wi-Fi6の概要とユースケース
最後に、ヒューレットパッカードエンタープライズ コンサルティングシステムエンジニアの黒川孝治様が登壇し、「Wi-Fi6の概要とユースケース」と題し講演を行いました。
黒川様からは、無線LANの業界は、「遅い、つながらない」という課題に直面しており、この課題を802.11a/b/g→802.11n→Wi-Fi6と速度やキャパシティ、制御が進化して解消していく過程が、道路や空港の滑走路の進化との比較で、わかりやすく説明されました。
続いて、Wi-Fi6のアクセスポイントの出荷予測(2019年以降Wi-Fi6が急速に普及する)や、技術的な改良ポイントとして、混雑時の効率・速度アップ、省電力性能アップ、飛距離の拡大について要素技術が紹介されました。
また、Wi-Fi6の認証については、2019年度後半以降に最終承認され、802.11ac同様にwave1とwave2に分かれる見込みであり、WPA3が認証の前提条件となる可能性がある点が説明されました。
混雑時の効率・速度アップとしてOFDMA、UL MU(Uplink Multi-User)、干渉対策機能、1024QAM、
省電力性能アップやIoT機器への対応として、TWT(Target Wake Time)、20MHz-only STA、
飛距離の拡大として、ガードインターバルとシンボル長の拡大が紹介されました。
最後に、Wi-Fi6により設計の難易度が下がり、パフォーマンス低下の緩和が期待できる高密度環境や、無線LANベースでのIoT通信の統合などの利用シーンが紹介されました。
5G時代にもキャリアフリー、ベンダーニュートラルで導入しやすいWi-Fiの重要性が示され、講演を締めくくりました。
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