技術情報
進化し続ける「Bluetooth」がバージョン5.1へ
技術・調査委員会 松村直哉
突然ですが「うどん」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか?
私も初めて「うどん」の単語の連発を聞いた時に驚いたのですが、それは、Appleのワイヤレスヘッドホン「AirPods」のことです。装着時に耳からうどんの切れ端がでているように見えるため「うどん」と呼ばれているそうなのです。
AirPodsについては、Appleの公式サイトを参照ください。
https://www.apple.com/jp/airpods/
今回は、この「うどん」のヘッドホンに使われている「Bluetooth」の最新情報について取り上げてみます。
AirPodsにも多く使われていますが、iPhoneからAudio用コネクタが消えてから「Bluetoothヘッドホン」の利用率がぐんと上がったように思えます。 私自身、電車通勤には欠かせないアイテムとなっています。
街中でのBluetooth普及率はここ数年で相当上がっており、混み合った駅構内で2.4GHz帯を計測すると40チャネルほどあるBluetoothのチャネルがほぼ全部使われていることが観測できるそうです。
Bluetooth測位システム、「RTLS」と「IPS」
ヘッドホンやマウス、キーボードなどの一般的なデバイス接続の他に、Bluetoothでは位置測位機能が提供されています。
Bluetoothを活用した測位システムには「リアルタイム位置情報システム(RTLS)」と「屋内測位システム(IPS)」があります。
前者のRTLSは専用のBluetoothタグから送信された信号をロケーターと呼ばれる受信機で受信します。この時、ロケーターは複数設置され、ロケーションエンジンという集中管理サーバーに情報が集約されます。ロケーターで受信されるRSSI値(受信信号レベル)を三辺測量によってより精度の高い位置情報へと計算します。
このRTLSに分類される製品としては「Quuppa」があります。詳細はベンダーのHPと以下のYoutube動画を参照してください。
https://www.youtube.com/watch?v=nKXXfshFllw
後ほど述べる「Bluetooth 5.1」で採用されているAoA(Angle-of-Arrival)技術を既に実現しているようです。詳細は以下を参照してください。
https://quuppa.com/technology/overview/
後者のIPSはロケータービーコンと呼ばれるアクセスポイントを屋内施設に設置します。そのロケータービーコンから送信される信号をスマートフォンにより受信し、スマートフォンの位置を測位します。その際、スマートフォン側には専用のアプリをインストールする必要があり、このアプリとロケータービーコンを管理するサーバーにより位置測位の精度を向上させるものです。
RTLSと異なりIPSはショッピングモールなど来場者のスマートフォンの位置を特定するものになります。このIPS技術を採用しているものが以下の「MIST」になると思います。
MISTの場合はロケーターを管理するサーバーはクラウドサービスとして提供され、採取した位置情報をAIによりさらに精度を上げるというものです。
詳細は以下のMISTのサイトを参照してください。
https://www.mist.com/bluetooth-le-and-beacons/
Bluetooth 5.1で提供される新たな位置情報技術
これまで解説した位置測位技術は既に実現されたものになります。今回、「Bluetooth 5.1」ではAngle of Arrival(AoA)とAngle of Departure(AoD)という技術が採用されています。英文ではありますが、以下のHPからBluetooth 5.1の概要ドキュメントをダウンロードすることができます。
https://www.bluetooth.com/bluetooth-resources/bluetooth-core-specification-v5-1-feature-overview/
英語ですがAoAとAoDについては以下の動画で紹介されているので参照ください。
https://www.youtube.com/watch?v=c3XqbEKmNcM
また、実際にBluetooth5.1に対応したモジュールも2019年2月に展示会に出品されていたようです。詳細については以下を参照してください。
https://eetimes.jp/ee/articles/1903/01/news070.html
Bluetooth5.1の登場によりこれまで位置精度が数メートルだったものが10cm程度に向上するようです。 これにより、人の動線や、倉庫内での荷物が移動した際のトレーシングなど、利用用途がさらに広がるものと思います。
話が古くなって恐縮ですが、2000年当初、Bluetoothは過去のRS-232-Cなどのシリアルインタフェースを1ドルのチップセットで実現できる、という期待のテクノロジーでした。最初はマウスやキーボードなどに採用され、現在ではワイヤレスを主導するAppleによって新しいステージを迎えました。
今後、Bluetooth 5.1によって高精度の位置測位を実現するシステムが登場し、さらに新しいステージへと向かうかも知れません。
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