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5G/Wi-Fi用として注目される「フラクタルメタマテリアルアンテナ」
岩本賢二
皆さんは八木宇田アンテナ(以下、八木アンテナ)をご存じでしょうか? 一般的にテレビ用のアンテナとして広く普及しているアンテナで、名前の通り日本で発明されました。八木アンテナは高い指向性と利得(電波を受信する性能)を安価に得る事の出来るアンテナです。
昨今5GやWi-Fiの世界では広帯域で様々な指向性・利得のアンテナが必要となっていますが、八木アンテナよりも小型で様々なバンドを一度に扱えるアンテナとして「フラクタルメタマテリアルアンテナ」が注目を浴びています。
今回は技術的な話になりますがフラクタルメタマテリアルアンテナについて書いてみたいと思います。
八木宇田アンテナ
フラクタルとは「自己相似形」と呼ばれますが、自然界などによく見かける形状です。拡大して見ていくと最初の形によく似た形がその中にまた現れる形状です。
フラクタルアンテナ
フラクタルアンテナは複雑な指向特性を持ち、複数の異なるバンドに同時利用出来る特性を持ちます。つまりWi-Fiで利用される複数のバンドや5G用のアンテナをたった一つで組み込むことも可能なアンテナです。
一方、メタマテリアルとはナノサイズの金属構造を用いることで自然界の物質ではあり得ない特性を素材に持たせることが出来る技術です。例えば通常のアンテナは周波数に応じた長さにより共鳴してアンテナとして動作しますが、メタマテリアルアンテナは本来必要な長さよりも更に短い長さで、同等のアンテナ性能を持たせることが出来ます。つまりアンテナの小型化に必要な技術です。
この両方の技術を組み合わせた技術がフラクタルメタマテリアルアンテナです。米国のFractal Antenna Systems Inc.は最近、フラクタルとメタマテリアル技術を使用した「メタブレード」アンテナ技術に関する特許を取得し、注目を浴びています。
八木宇田アンテナと比較したメタブレードアンテナ
上の写真を見れば一目瞭然ですが、八木アンテナに較べて板状の小さなアンテナが八木アンテナ以上の性能を持っています。左下枠内の写真はメタブレードアンテナの内部を写した写真です。
Fractal Antenna Systems Inc.は創業者でCEOのNothan Cohen氏により1995年に創業されました。Cohen氏は1980年代には既にフラクタルベースのアンテナ技術を発明しており、同社は1999年からノキアネットワークス社の為にフラクタルアンテナの開発を開始しました。このフラクタルアンテナは既に携帯電話ネットワークの世界では広く使用されています。
メタブレードアンテナ内部の拡大写真
Fractal Antenna Systems Inc.は八木アンテナの代替品として前出のメタブレードアンテナの販売を開始しました。フラクタルメタマテリアルアンテナは指向性が高く、八木アンテナよりも遙かに小型です。しかも構成要素が少なくシンプルです。
現在同社は5G高密度無線ソリューションのために、小型・高利得・広帯域のアンテナを提供しています。今後は更に独自のMassive MIMOシステムとミリアレイ技術を導入しようとしています。
5GやWi-Fiの最新技術を実現するには物理的で基礎的な技術であるアンテナ技術が必須です。フラクタルアンテナとメタマテリアルアンテナの融合によって無線技術は更に進化していくと考えられます。
参照:
https://www.fiercewireless.com/tech/fractal-antenna-design-offers-alternative-to-yagi-uda
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%BF%E3%83%9E%E3%83%86%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%AB
https://www.fractenna.com/index.html
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