技術情報
テレビでのゴルフ観戦、気になるボールの行方の見える化は?
企画・運用委員会 松村直哉
全英女子オープンでの渋野日向子選手の優勝を機に、ゴルフ熱がさらに高まってきているかと思います。プロゴルフのトーナメントは現地コースを訪れた方はご存知と思いますが、テレビ中継のための中継車や映像を伝送するための同軸ケーブル、放送を行うための解説ルームなど、テレビでの観戦ではわからないさまざまな設備が導入されています。今後、テレビ中継のための同軸ケーブルは5G/ローカル5Gの登場により、徐々に姿を消していくのではと思います。
さて今回はテレビでのゴルフ観戦をより、楽しむために工夫された装置をご紹介したいと思います。
テレビ中継で一瞬移るときがあるかと思いますが、選手の後方に設置されたパネル状の装置を見られた方もいると思います。
映像情報メディア学会誌にて紹介されている「ゴルフ中継におけるショットデータCGシステムの開発」です。3Dドップラーレーダー(以下の写真のパネル状のアンテナ)を使いボールに10.5GHzの電波を照射し、反射して返ってくる電波をドップラー効果により波長のずれを計測し、距離を計測するというものです。もともとは迎撃ミサイルのシーカーに使われていたもののようです。
詳しくは以下の情報メディア学会誌のHPを参照してください。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/itej/72/1/72_J9/_article/-char/ja/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/itej/72/1/72_J9/_pdf/-char/ja
他にも「(一財)NHKエンジニアリングシステム」の「3次元飛翔軌道方程式に基づくゴルフ軌跡表示システムの開発」があります。こちらは、ドップラーレーダーが高額のためカメラ映像をもとにボールの軌跡を推測する計算によって軌道を表示するシステムです。要件を以下の5つのポイントに絞り、低価格化を実現しているようです。
・低遅延
・打ち出し地点・落下地点での精度確保
・複数台同時利用
・可搬性・運用性
・低コスト
詳しくは以下の資料を参照してください。
https://www.nhk.or.jp/strl/publica/rd/rd173/pdf/P38-49.pdf
製品としてはドップラーレーダーの技術を使ったFlightScopeとTrackmanを見つけました。両社とも平面状のアンテナでドップラーレーダーにより距離を測定する装置のようです。ただし、価格は数百万と高額のようです。詳細は以下のHPを参照してください。
https://flightscope.com/ja/
http://trackmangolf.jp/
さて、NHKの論文でコストを抑えたカメラと推測による軌道計算の手法がありましたが、もっとお手軽にスマホでボールの見える化を実現するアプリがあります。Shot Tracerというアプリでスマホのみでボールを表示してくれるものになります。アプリを使ったレポートがあるので参考として下さい。
https://gridge.info/articles/4478
以前のテレビ中継ではスタートホールなど、1,2か所でしかボールの軌跡が見られなかったと思います。しかし、最近では各ホール、またはコースの途中でも見ることができるようになり、なにか新しい機器が導入されたのかと思い、今回、いろいろと調べてみました。結果、高価なものからコストを抑えたものまでさまざまな取り組みがされていることがわかりました。
カメラ+軌道演算についてはスマホのカメラ技術の発達により、近い将来、もっとお手軽に利用できるようになると思います。また、ドップラーレーダーについても5G技術が浸透するなかでミリ波をもっと低コストで扱えるハードウェアも出現してくると思います。
数年後にはドップラーレーダーがスマホに搭載され、全英女子ゴルフ選手権では個人が上げた動画にボールの軌跡が表示される、ということになるのではと思います。
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