技術情報
ドローン、最新情報アップデート 特別篇
企画・運用委員会 松村直哉
これまで、この「技術情報」のコーナーで、ドローンの進化について、次のようにご紹介してきました。
・2016年11月:ドローンで利用できる無線帯域が拡張に
https://www.wlan-business.org/archives/7305
・2016年12月:ドローンレースってご存知ですか?
https://www.wlan-business.org/archives/7563
・2017年1月:業務用ドローンを講習会で体験
https://www.wlan-business.org/archives/8112
・2017年2月:自律航行に向けたドローン技術の状況
https://www.wlan-business.org/archives/8292
・2019年7月:5Gの本命はドローン!?
https://www.wlan-business.org/archives/23638
ドローンについては、日々、技術の進化と利用促進に向けた取り組みが行われているので、技術的な面と制度化の面について少しアップデートしたいと思います。
まずは、最新の製品についてご紹介したいと思います。2017年2月の記事で自律航行を可能としたドローンについてご紹介しました。イスラエルのスタートアップがNVEDIAのGPUを使って実現したもので、商用化には少し時間がかかるものと思っていました。
ところが最近、Mavic Air(DJI社の宣伝になってしまいますが)という普及版の機体がこの機能を搭載していることを電気量販店に展示されていた動画から知りました。
Mavic Airの詳細については以下のURLを参照してください。
https://www.dji.com/jp/mavic-air?site=brandsite&from=nav
Mavic Airでは以下の3つの技術によって飛行線上に位置する物体を自動的に回避することを可能としているようです。
ビジュアル イナーシャル オドメトリー (VIO)
VIOは、デュアルカメラで体勢測定を行いながら、機体の速度と体勢をリアルタイムで計算し、機体の位置を特定する技術。
3Dマップ構築
機体の位置を高精度で特定することに加え、高度赤外線センサーとIMUに加え、機体の前面/底面/背面にある7台のカメラでデータを処理し、リアルタイムで空間を感知して3Dマップを作成。
高度操縦支援システム(APAS)
上記、2つの技術に加え自動で障害物を回避する適切な飛行経路を計算し、前方後方への飛行を継続する機能。
自動回避機能以外にも自動追尾(設定したターゲットを自動で追尾する)機能もあり、これらについてはDJIの以下の動画を参照してください。
https://www.youtube.com/watch?v=uF-WXHwzURs
制度化の面では、総務省 情報通信技術分科会 新世代モバイル通信システム委員会 上空利用検討作業班にて継続して議論が進められています。
スケジュールとしては作業班の第三回(下記URL参照)に資料が掲載されています。
この資料を見ると、情報通信技術分科会への委員会報告が2020年3月、その後、省令案が作成され、2020年8月頃にパブコメが募集され、制度化としては2020年12月になるようです。
2019年7月の記事に書いたように飛行区域、高度などの規定については国交省で決められており、上記の総務省の上空利用検討作業班は主に携帯キャリア側での利活用について議論されています。
一つは上空利用で用いる携帯電話の周波数について、です。
周波数が高いアンテナの場合、ビルの屋上なのどの高所から歩行者を対象として、電波の指向性が調整されているため、ドローンのように100m程度の上空を飛行する機体との通信には比較的周波数が低い電波を利用するほうが効率的なのだと思います。
もう一つ興味深いものとしてはKDDIから提出されている「KDDI運行管理システム構築に向けた取り組み」です。
http://www.soumu.go.jp/main_content/000653954.pdf
運行管理と同時にパブリックセーフティからの観点として機体の遠隔からの識別についても、述べられています。運行管理システムと手持ちのスマホに搭載されたアプリを連動させることで、スマホから送られる位置情報をもとに運行管理システムがドローンの識別を行い、認可された機体かどうかを返信するシステムです。100m程度の上空を航行するドローンを簡単に識別するためにはこういった運行管理システムが将来、必要になってくるものと思います。
ドローンは技術的な進化とともに制度化が進み、あと2,3年はかかるかもしれませんが5Gインフラを利活用する最良のデバイスになると期待しています。2020年の五輪ではどの程度、利活用できるかわかりませんが、近い将来、元旦の箱根駅伝はドローンによる多地点同時中継が実現されるかもしれません。
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