海外情報
米国でDSRCが終了、5.9GHz帯の半分以上がWi-Fi化
岩本賢二
日本で5.8GHz帯は「DSRC」に割り当てられています。このDSRCはわかりやすく言えば高速道路で利用されている「ETC2.0」です。米国ではDSRCは5.9GHzに割り当てられていました。しかし、2019年12月12日、FCC(米国連邦通信委員会)は満場一致でこの帯域の大部分をアンライセンスバンドと「C-V2X」に割り当てる方向で進めることに決まりました。
米国ではこれまで過去20年間、5.9GHz帯の中の75MHzは前出のDSRCに指定されてきました。この間、米国では多くの自動車会社がDSRCを採用していました。しかし、C-V2Xの登場により状況は一変しました。C-V2Xは携帯電話網を利用するシステムです。スマホの台頭などからC-V2Xが一気に優位になってきました。
それまでDSRC推進派だった米国の自動車会社が一転してC-V2X推進派に代わり、2022年から米国で販売する新型車にC-V2Xを搭載すると発表しました。続いてトヨタ自動車は2021年から米国で販売する車両にDSRCの搭載する計画を中止すると発表しました。実は中国ではいち早くC-V2Xのインフラ整備を実施しており、近日サービスインが見込まれています。圧倒的不利な状況に陥ったDSRCの状況を見越してFCCは周波数の再割り当てを進めています。
今回のFCCの再割り当てルール案は以下の通りです。
【これまでの割当】
5850MHz~5925MHz:全75MHzをすべてDSRCに利用
【新しい割当案】
5850MHz~5895MHz:45MHzをアンライセンスバンドに割当
5895MHz~5905MHz:10MHzをC-V2XかDSRCか議論中
5905MHz~5925MHz:20MHzをC-V2Xに割当
まとめると以下の図のようになります。
注目すべきは前半の45MHzがアンライセンスバンドに割り当てられるということです。米国は5Gの覇権を握るために大きく舵を切っており、Wi-Fiの帯域増は5Gにとってのトラフィックオフロードの決め手となるため、このような判断がなされたそうです。実際5Gトラフィックの70%がWi-Fiにオフロードされると予想されています。昨年の発表で米国は6GHz帯をすべてをアンライセンスバンドに割り当てることが発表されており、インテルなどは6GHz対応のWi-Fi6チップをMWC2019で発表しました。米国はWi-Fiと5Gの天国になりそうです。
一方日本では6GHz帯のアンライセンス化の動きはなく、5.8GHz帯はDSRCの利用のみとなっておりC-V2Xは利用できる状況ではありません。C-V2Xを推奨している5GAAにはNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクをはじめとする多くの日本企業が参加しています。
米国では実質DSRCは撤退に近い形になるため、日本のDSRC関連メーカーは大きな輸出先を失うことになり、またしてもガラパゴス状態となりそうな状況です。日本ではDSRCは5.8GHz帯が割り当てられており、海外ではWi-Fiに開放されています。DSRC(ETC2.0)は国交省道路局によると以下の地図の丸い点の部分にしか設置されておらず、地図の縮尺から見て各点の丸のサイズ程電波は飛んでおらず、地図の縮尺から見て針の先程度のカバレージしかありません。つまり高速道路などの一部の非常の狭い地域でしか利用されていないシステムが5.8GHz帯を占有しているということになります。
上記の青丸のスポットは電波範囲がほとんど直径10m以下しかない
日本でも今後5.8GHzをWi-Fi利用に割り当てるという動きはありますが、いまだ目途はたっていません。「有限」の周波数が無駄に使われているという状況が今後も続きそうです。
参照先:
https://www.fiercewireless.com/regulatory/fcc-drives-5-9-ghz-proposal-for-c-v2x-wi-fi-use-forward
https://5gaa.org/membership/our-members/
https://www.wlan-business.org/archives/16104
https://www.go-etc.jp/etc2/
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