ビジネス情報
「802.11ah」の日本における規則化へ向けて
802.11ah推進協議会 会長
一般社団法人 無線LANビジネス推進連絡会 顧問
小林忠男
802.11ah推進協議会(以下、AHPC)は2018年11月にスタートし、802.11ah規格を920MHz帯で使えるように規則化することを最大の目的として活動しています。
今回は、802.11ahの規則化に向けたAHPCの取り組みの状況と今後の展開についてまとめてみました。
2019年の取り組みと成果
発足後、直ちに920MHz帯を802.11ahで使うために必要な様々な活動を始め、AHPCメンバーの皆様、総務省をはじめとする関係各位のお蔭をもちまして
2019年5月に、802.11ahの実験局免許を取得しました。
早速、5月29日から開催された「ワイヤレスジャパン2019」において日本初の動画伝送のデモを実施し、成功して注目を集めました。そして、引き続き横須賀、木更津、小田原など各地において屋外の伝送試験を行い、期待通りの特性を確認することが出来ました。
920MHz帯では既にLPWAとしてLoRaやSIGFOXが商用で使用していますが、
伝送実験では、それらの規格では難しい「動画データを1~2km伝送することが可能」であることが確認できました。この結果を、昨年12月、第2回AHPC総会で報告し、公表いたしました。
こうした802.11ahの実験局免許での伝送実験の結果を、総務省移動通信課に説明し、国内での規則化へ向けた正式な取り組みが始まったと認識しています。
*昨年のAHPCの詳細な活動については こちらをご覧ください。
2020年の目標と取り組み
今年の目標は、2020年度内に920MHz帯を802.11ahで使えるための規則化を実現することです。
昨年末から総務省移動通信課の指導のもと、ARIBの関係者の方と同じ周波数帯を使うLoRa、SIGFOX、Wi-SUNとの共存条件について具体的な議論を開始しており、なるべく早く共存条件を明確にし、一日も早い規則化を実現したいと考えています。
更に、802.11ahにとってはとても良い動きになりますが、800MHz帯の電波を利用したデジタル業務用移動通信(MCA)の周波数移行に伴う現周波数帯の利活用について、802.11ahも使えるように、総務省に積極的に対応していきます。
MCA跡地が利用可能になれば今よりクリアな周波数条件で1から4MHz帯域で周波数を使うことが期待出来るので、802.11ahの特性を十分に活かすソリューションを展開できると考えています。
AHPCは日本国内で920MHz帯を802.11ahで使えるようにするためにスタートいたしましたが、そのための規則化の取り組みもメンバーの皆さんの積極的かつ献身的な取り組みによって順調に進んでいると認識しています。
802.11ahをIoT時代の本当に役に立つワイヤレスアクセスにするために、新しい年を迎えてAHPCとして更なる新たな検討を開始しなければと考えています。
802.11ahがWi-Fiファミリーの一つとして実際に日本で誰でもが使えるようになった時に、次のようなテーマが浮上してくるでしょう。
① どのようなビジネスモデルで展開するか、どのようなユースケース、ソリューションが最初に考えられるか。これまでも色々なケースを検討していますが更なる深堀が必要です。
② 誰でも使いたいというサービス、ソリューションをどれだけのコスト、料金で実現できるか。これがある程度明確にならないと導入サイドとして採用を検討することが出来ません。
③ 街の量販店で簡単に入手できるアクセスポイントや端末、デバイスをいつまでにどのように商品化するか。そのための国内外の関連企業への働きかけが必要です。
このように、802.11ahの商用化のために検討することは多々あり、これらの課題に精力的に取り組んでいきます。
802.11ahには既に実用化されているLPWAに比べてユニークな優位性が多々あり、本格的なIoT時代において現在世界中で使われているWi-Fiと共に有力なワイヤレスアクセスになることは間違いありません。
また本格的な5Gの時代になっても802.11ahはプライベート空間において重要なワイヤレスアクセスになると私は確信しています。
802.11ahの実用化への取り組みにおいて日本は後発でしたが、実際の商用レベルでは多様な展開を実現しユーザーに活用していただける最初の活性化市場になるようにしたいと考えます。
最後に、今年はWi-Fi 6を本格的に展開する年になるでしょう。オフィスや家庭において今までにないWi-Fi環境を実現することになると期待しています。しかし、公衆スポットでのWi-Fi 6化の動きは鈍いように感じます。オリンピックとパラリンピックを数か月後に控え、日本のWi-Fi環境の先進性をPRする絶好のチャンスだと思います。またWi-Fi 6に続いてWi-Fi 6Eによる周波数拡大が実現しWi-Fiの更なる市場拡大が期待されるのですが、日本ではほかの用途で使われており実現が難しいとされています。Wi-Fiにとって非常に重要な問題だと思いますので業界挙げての積極的な動きがあればと思います。
5Gとローカル5Gも本格的に動き出す中でWi-Fiをこれからどのような存在としてユーザーに提供するかを原点に立ち返って考える時期かもしれません。
やるべきことはたくさんありますがAHPCとWi-Biz会員の方々と一緒に精力的に取り組んでいきたいと思いますので、今年も引き続きどうぞ宜しくお願いいたします。
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