白熱! 新春特別座談会
2020今年のビジネス展望を語る(下)
自営ネットワークの価値と役割に注目集まる
ローカル5GとWi-Fiは共存、それがユーザーメリット
Wi-Fi市場のビジネス展望
――3番目にいきまして、「Wi-Fi市場の方向性とビジネス展望」ということで、オリンピック、インバウンド、Wi-Fi 6、セキュリティ、地方活性化、IoT、それからさっきのGIGAスクールとか、論議が出たと思うんですけど、今後のWi-Fi市場を見たときの展望と課題はなんでしょうか。
大塚 さっきの話と重なるかもしれませんが、自営のWi-Fiネットワークでエリアオーナーさんが新しいバリューを提供されようと取り組みが増えているなかで、我々が何をお手伝いできるかが肝になってくるのかなと思います。
ローカル5Gも、いろいろなトライアルをやられるんでしょうけれども、僕らはすでにたくさんのお客さんを各社とも持っているわけで、その既存のお客さんのニーズに応えて、アドオンを一緒にお手伝いさせていただくということで、いろいろなチャレンジをしていけば、ハッピーになるんじゃないかなと思っていますし、それは具体的に取り組んでいこうとしています。
加藤 その通りですね。お客さんのニーズによっては、Wi-Fiのほうがいいところとか、ローカル5Gのほうがいいところがあるとは思っています。今、「5G、5G」と言われている中で実証実験やイベントだと、すべてを5Gでやってみて、という形が多いと思いますが、実際に5Gのみでは難しいとなったものも、一部この部分だけWi-Fiにしておけば、全体としては上手く行くのにというところが出てくると思うのです。
――全部、5Gで構築しなくても、部分的にWi-Fiを入れただけでトータルで全体が良くなることがあると。
加藤 そうです。「ここは5Gでやります、ローカル5Gでやります。ここはWi-Fiでやります」みたいなことをすると、本当はお客さんのニーズに全て応えられたことが、どちらかでやってしまったがために、「こりゃだめだ」となってしまうのは非常に残念だと思います。
立場的にはキャリアに属して5Gを推進しながらWi-Fiを担当していますので、私はWi-Fiと5Gで共存したいなと思いますし、もう少し進んだタイミングで「ここはWi-Fiのほうがいいよね」とか、「ここはローカル5Gとか通常の5Gがいいよね」という感じに少しエリア分けが進んでくると、Wi-Fiの市場も活性化するでしょうし、先ほど会長も言われていた地域BWAが広まらなかったということの二の舞にはならないで済むんじゃないかなと思っていますし、それができるようになると、いろいろWi-Fiも含めてビジネスが広がるんじゃないかなとイメージしているんですね。
――それは重要な指摘ですね。5Gの実証実験ということで、すべてを5Gでやろうとするとよくない場合があるということですね。
岡田 5Gの今の動きでいうと、加藤さんのおっしゃる通りなんです。でも、もう一方で、我々が強調しなければいけないのは、Wi-Fiの良さもものすごくあって、それを独自に推進していくことは怠ってはいけないということです。
災害対策に有効な環境であったり、企業の中でもデータ通信系であればWi-Fiでつなぐという話も増えてきています。オフィスLANも引っ越しなどがあると構成変更等で大変なので、無線の要求も出てきています。Wi-Fiの案件がまだまだ増えていることは事実なんです。
企業内のWi-Fi活用では、先ほどお話にもありましたサテライトオフィスとかワーケーションとか、働き方も変わってくると、その環境の中でWi-Fi環境が必要だねという話は多いのです。
当然SIM入りのパソコンも出てくると思うんですけれども、環境的にも面的に広がって、すぐに使えるとなるとWi-Fiの良さもある。そういう市場のところもあるし、5Gと新しい高速大容量等の市場を作りながら、Wi-Fi 6と組み合わせて提供していく話もあります。
――Wi-Fi 6のインパクトは市場ではどうでしょうか。
大塚 5Gを入れたいんだけれど、高いし、デバイスに制約があると、トライアルをいろいろやられた企業が、もう少しレギュレーションを落としてもいいから、コストを抑えてやりたいというところが出てくると思うんです。そのときに我々が「じゃあ、Wi-Fi、これがいいですよ」とお客さんに示すものは、今後はWi-Fi 6になってくると思います。5Gのネットワークサービスとの比較という意味では、Wi-Fi 6というものを、お示ししないといけないということです。
――公共系がWi-Fi 6サービスになってなくても、企業内はそれとはあまり関係ない?
大塚 そう思います。企業内ですから。
北條 公衆無線LANサービスは、その後ろにネットワークがあるので、Wi-Fi 5をWi-Fi 6にして無線が速くなっても、ネットワークが詰まっていて、あんまり変わらないねということがあるんです。だけど、ローカルの場合は折り返しなので、高速性がそのまま出てくるんです。さっきの杉野さんの話じゃないけど、Wi-Fi 6は実はこれまでより距離が飛ぶ機能も入っているので、Wi-Fi6にするともうちょっと飛ぶようになる可能性があります。評価はこれからなので、何とも言えませんけれども。だから、そういうところで適用領域は増えていくのではないかなとは思います。
岡田 企業も可能性がありますが、学校においても、教育機関に関するネットワーキングは教材が良くなってくるとブロードバンド環境が必要になってきます。それはADSLと光の話と同じで、インフラが整ってくれば光のほうがいいよねとなったことと同じで、まずは既存のWi-Fiでもいいんだけど、教材とかが変わって、よりブロードバンド環境が欲しいねとなれば、Wi-Fi 6ベースのインフラも必要になるのではないかと思います。
――「GIGAスクール」構想は、ネットワークに何を想定しているんですか。
大塚 無線LANも想定していますし、セルラー回線も想定されている。場所によるんでしょうけれど、ローカルの学校においてはセルラーの3キャリアの基地局も、そんなに回線キャパはないわけです。生徒が同時に全員タブレットでアクセスしましたというと、セルラーのトラフィックが大変なことになるわけです。そうするとブロードバンド回線を引いて、教室にWi-Fiを入れて、Wi-Fiで全てを賄うということもあるでしょうけれど、Wi-Fiとセルラーで学校トラフィックを両方で捌きましょうという併用のスタイルも場所場所によっては、それなりに出てきちゃうんじゃないかなと思います。誰がどういう意思を持ってじゃなくて、ニーズに応えるにはそうするしかないということは出てくるんじゃないかなと思います。
――いずれデジタル教科書になるわけでしょう。強力なネットワークなしには、成り立ちませんね。
岡田 そういう意味では、現状のネットワークはまだまだ弱いですね。
大塚 特に郊外にある大規模学校とかは、小学校・中学校はそんなにクラスがないかもしれないですけど、大学とか大規模高等学校とかになると、それはGIGAスクールの対象とは違うわけですけれども、そういうところはすでに1つの無線ネットワークに限定して全員アクセスさせようと思ったら無理なので、併存になっていますからね。
Wi-Fiに何を載せて付加価値を実現するのか
杉野 大学の先生は、結構そういったものを好きな人が多くて、クラウドのやつを調べてきて、問い合わせいただくことが多いですね。「どこのクラウドがいいんだ」みたいな。
今、流通業とかWi-Fiを大量に入れるところは、Wi-Fiを導入すると毎月お金が掛かるわけで、それによって客単価がどれだけ上がったのか必ず計算されますよね。
今、月末になるとギガが足りなくて「コンビニに行かなきゃ」とか「コーヒーショップに行かなきゃ」と言って一生懸命に使っている若者がいるんです。
Wi-Fiを使ってもらっているわけですが、5Gになると容量が無制限になっちゃったりすると、そういった子供たちが減ってくる、そういうお客さんが減っちゃうことになりますね。
そうすると、お店に月末に来る人たちが減っちゃうと、投資効果が薄れるんじゃないかという気もしたりします。だから、でんぱ組の会場で抽選の仕組みをうちで作ったんです。今、おかげさまで商品になっています。結局、用途開発をしないといけないわけです。
インバウンドはある部分、そういう用途が出てきたので、ニーズが出てきたんですけど、Wi-Fiを使った何か特別なものという、何か用途開発をしないと厳しくなっていく。
――お客さんにとっては毎月、固定費として出ているわけですから、これのリターンにあたるものは何かということが問題になってきますね。
杉野 それをやることによってクジができるとか、何でもいいんですよ。オーダーがすごくしやすくなる、何でもいいですけど、そういったWi-Fiの用途開発をしていかないと厳しくなるかなという気はしていますね。
加藤 杉野さんがおっしゃったように、上に載るものというんですかね、コンテンツのところで、我々も今、スタジアムさんとかに入れさせていただいたときに、費用が掛かるとなると、その分、どうやって回収しようかという課題は必ず出てきます。
お客さんの満足度を上げるでもいいですし、マネタイズするということでもいいですし、そういったことがどんどん求められている中なので、そういったことを併せて提案していかないと、本当にWi-Fiだけ入れますという話では、なかなか市場も、活動も広がっていかないとは思っていますので、上に載るサービスとかコンテンツとかを見つけていかなきゃいけないかなと思います。
あとネットワークが例えば速くなったからコンテンツがリッチ化するというケースもあるでしょうし、逆にコンテンツが先に出来上がってというか、構想があって、それに耐え得るネットワークを準備しなきゃいけない。どっちもどっちだと思うんですね。だから、いずれでもいいとは思っているんですけれども、ネットワークを高度化するんだったら、コンテンツも高度化していくでしょうし、させていかなきゃいけないと思っていまして、それが必ずしも我々だけではなくて、もっと全然、通信をやられてない方たちと手を握りながら、Wi-Fiでできることを見せていくことが非常に必要になるかなと思っていますし、我々もそういうところを目指して進んでいかなきゃいけないかなと思っています。
Wi-Bizの新たな役割が
――そういう中でWi-Bizの今年の役割という点を論議して閉めたいと思います。
岡田 Wi-Bizは、自由度があるというWi-Fiの良さをベースに、何でも発信できる、トライアルができるという環境があると思うので、そういう観点で、業界の皆さんといろいろな情報を共有していきたいと思います。
5GとWi-Fi 6のゲートウェイ的な役割というんですか、技術的な点だけじゃなくて、マーケットに対してもハンドリングの窓口的な役割ができると思います。そして、それは、Wi-Bizとしても価値があることだと思います。
国、民需、それから自治体ともつながっていること、災害対策ということで、Wi-Fiもいろいろなところに入ってきていますが、それがよりインバウンド対応とかeスポーツとかも増えてきますし、そんな新しい役割が果たせると非常に有効で、それだけのメンバーがいるんじゃないかなという気がしますよね。すぐに全てとはいかないと思いますけど、そういう役割に期待できるように感じています。
松村 11a推進協議会の副会長もやっているわけですが、富士通で11ahのモジュールを入れたタブレットの試作機を作ったんですね。すると、屋内でWi-Fiで使えて、屋外に行くと11ahにハンドオーバーをするんです。特に何をしなくても、これは、すごいメリットになると思います。
大塚 11ahも、Wi-Fiファミリーなので、シームレスに。
松村 そうです。使えるので、「これは面白いね」と、作って入れて動かしてみると初めて「こんなにいいんだ」という話になって、「これは学校で使えるな」とか、「農業とかに使えるな」とか。総務省の方に見せたら、喜んでいただいて、さらに11ahの実証実験もこれからいろいろなところでやるし、楽しみにしています。
加藤 Wi-Bizも、Wi-Fiも、00000JAPANでの災害対策などもあり、市民権というか、認知度も非常に上がって、自治体さんから見ても非常に重要になってきていると思います。一方で、施設のオーナーさんたちはあまり通信のことが分からないという状況がまだまだあって、例えば我々がご案内したときに、「当社が言っていることが全てなのか」とか、「他社さんにも聞いてみたい」とかという中で、同じキャリアさんやSIerさんに聞くなど、いろいろあると思うんですけど、ぜひそういったときに導入される方たちの拠り所というか、Wi-Bizで何か確認が取れれば、安心とか何でも分かるというような組織にもっともっとなっていってほしいなと思っています。
携帯電話は、通信方式やセキュリティを施設オーナーさんが意識する必要はありませんが、一方でWi-Fiは提供側であるオーナーさんも一定の対策が求められます。とはいえ、それでも「分からない」とおっしゃるオーナーさんはたくさんいるので、そこを安心していただけるような情報共有機関としてでもいいですし、今はセキュリティ高度化の話もありますので、ぜひ旗振りとしても、発展していただきたいなと思っています。
――公益団体のような、機関のような役割ですね。
加藤 そうですね。
大塚 今日のお話のなかで、ローカル5G/5Gとの関係はすみ分けでもなく、併存なんでしょう、時間軸の中で混在してくんでしょうということは申し上げました。
そのときに大事なことは、5Gとかセルラーネットワークに対してWi-Fiが、誤解も含めて払拭しなきゃいけないものはセキュリティだと思うんですね。ここの部分はプライベートで業務系で回そうとすると、なおさら「セキュリティは大丈夫なのか、Wi-Fi」というような不安は、コンシューマが今、啓蒙しているものに加えて、新たなソリューションの領域でも課題になってくると思いますから、その啓蒙とその取り組み、ネットワークにいろいろなサービスを組み込むとかは、皆さん、情報を共有しつつ対応していきたいなと。
――ローカル5Gとの相違表で、Wi-Fiはセキュリティのところで「×」になってしまう。
大塚 そうそう。コストは「〇」だけど、セキュリティは「×」になってしまう。それで、「△」だけど「……」というようなところまで持ち上げられるような、あるいは「オプションでこれを組み込んでいただいたら、ほぼセキュアになりますよ」という、そういう品目を増やすことなり、整理して皆さんと一緒に理解を得るような活動をしていくことは1つ大事なことじゃないかなと思います。
もう1つは加藤さんがおっしゃったことにもかぶるのかもしれないんですけど、Wi-Bizはどちらかというとネットワークを組み上げて供給している事業者です。その集まりでいろいろなコミュニケーションをさせていただいて、参考にさせていただいたり、業界が活性化していったりしているんですけど、実はエンドユーザーのエリアオーナーさん、パブリックWi-Fiだと自治体とかは、活動の幅が広がっているんですけれど、民間企業、エリアオーナーさんとの会話は、各社別々ではやっているんでしょうけれど、「交通会社さんがこれからWi-Fiに期待することは何ですか」と、我々一人一人に質問が飛んでも、みんな答えることがばらばらでしょう、ばらばらであってもいいんでしょうけれど。
あるいは別の業界において、おもてなしWi-Fiをされている観光系の方々はどういうことを期待しているんですかということは、意外と僕ら、不勉強ではないけど、共有化して「ここをもうちょっと重点的にみんなで、さっきのセキュリティのように歩調を合わせて、Wi-Fiの良さをアピールしようよ」とか「バリューを上げようよ」というところの会話は、自分の反省も含めてなんですけれど、今まで十分にできていなかったところがあると思います。
今日の話でも、これからはマネタイズだとかバリューだとかをエリアオーナーさんにどう提供するんだという、そこがWi-Fiの成長ドライバーの大きな1つだというお話ですから、そういうところについても情報交換とか意見交換ができてもいいのではないかなと思っています。
――「ユーザー委員会」というか、「業種別委員会」のイメージですね。
大塚 そうですね。あるいは各業界の代表的なエリアオーナーさんに何社か来ていただいて、いろいろご意見を伺うとか。ご批判を受けるとか。
加藤 それは、必要かもしれないですね。
杉野 大塚さんのご意見に賛成です。Wi-Fiは、いろいろな用途、いろいろなところで使われているじゃないですか。そういったところの事例をたくさん発していただくことによって、さらにより活性化してくるのではないかなということを感じました。そういったところで企画・運用委員会は00000JAPANを大塚さんの部署に移してから、かなり今、時間の余裕が生まれそうです。何をテーマにしていいのかと今、悩んでいるところなので、いいテーマをいただいたと思います。
確かに、そこをやっていかないといけない。Wi-Fiならではのすごくいいところがたくさんあるので。鉄道会社は先進的なところ、大手流通も積極的に取り組まれています。学校でもそういったものを使った授業をやったりしています。そういう取り組みでヒヤリングなどをやって聞けばヒントになって、またさらに面白いものができてくると思います。
岡田 そういう意味では国とか総務省さん含めて、国の政策をいかに団体とか会員さんとか、また先ほどお話があった業界的に何か新しいことが見えてくると、その間に入って代表で意見を言っていくのか、そういう場を提供するのか、そういう役割ができて、また国の政策とか提供者側の悩みとかの窓口になっていきたいですね。
北條 今日は本当にいろいろな意見をいただいて非常に参考になりましたし、オリンピック以降、どうやっていくのかというところのメドが少しできたのかなと思います。
今の産業別の打ち合わせとか、ヒアリング/座談会のお話が出ましたが、大変いいことだと思います。一般社団法人になって今年はすごくたくさんの受注をいただいて、新規の取り組みをやる予算が少しできるのかなと思っています。
特にサイバーセキュリティからの案件については、今、まさにセキュリティが心配されているものを、実際にアンケートを出すとか、詳細インタビューをするということが、サイバーセキュリティから事業を委託されています。
また技術面では、Wi-Fi 6の性能はどんなものだろうとか、それからローカル5Gとの比較もやってみたいと、考えています。同じ場所でWi-Fiと一緒に電波を飛ばしてみてどうなのかとか、そんなこともやって、「どっちがいい」ではなくて、「こういうところはこういうものがいい」とか、「ああいうときはこういうものがいい」ということを、ちゃんと示していければいいかなと思います。
大きな流れでみると、また5Gも5年10年のスパンでこれから広がっていくとすると、結局ユーザーさんにとってみると、どういう媒体を使っているかはどうでも良くて、端末の中にいろいろな無線インターフェースが入っていて、最後はイーサネットのインターネットにつながって接続性がきちんと担保されていれば、用途に応じたものを選択していけるわけです。
今やAIやスマートなネットワークがいっぱいありますから、その人が常に最適なネットワークを我々にシームレスに提供してくれればいい。そのためにはアンライセンスとライセンスのところは、ちょっとだけ壁があるんですよね。そういうところをキャリアさん中心にSIMカードを少し解放していただくとそういったことができるようになる、あるいはキャリアさん自身がそういうビジネスに乗り出していって、アンライセンス業界を取り込むような形でやっていただけると、まさにユーザーの最適な通信環境が提供できるのではないかなと。そういうところにWi-Bizとしても力を、重点を置いてやっていきたいと思います。
――皆様、今日は、貴重なご意見、どうもありがとうございました。
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