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ビジネス情報
DX時代を彩るWi−Fi6

佐藤重雄

Wi-Fi6の勢いが止まりません。日本市場でも昨年中頃からWi−Fi6のご要望が増え、今ではWi-Fi5製品の出荷を上回っている状況です。

日本ヒューレット・パッカードでは現在4種類のAruba製802.11ax対応無線アクセスポイントを販売していますが、4シリーズとも全てWi-Fi Allianceが認定するWi-Fi 6の認定が完了しました。802.11ax対応全製品Wi-Fi 6認定受けているのは現在Arubaだけです(2020年3月13日現在)。

昨年経済産業省が指摘した「2025年の崖」、みなさんもご存知だと思います。その衝撃的な内容に、企業は一斉にDigital Transformation(DX)への取り組みを始めています。今回は、DXの時代にWi-Fi6がどのような役割を果たすのか、DXを実現するためにどのような技術要件が必要なのか、について話をしようと思います。

DXの鍵を握るユーザーエクスペリエンス

DXにおいて重要なテーマがユーザエクスペリエンスです。「速度が速い」「混雑した環境でも快適に使える」というWi-Fi6の特徴は人々に豊かなユーザエクスペリエンスを提供することを可能とします。それによって生産性が向上したり新たな学び方や働き方を生み出したり、それが結果的に企業にイノベーションをもたらす、これがDXのひとつの目標です。この目標を達成するためにWi-Fi6は重要な役割を果たします。

IoTはAIやロボティクスと並んでDXの重要な技術要件です。全てのモノがネットワークに繋がることで様々なサービスやビジネスが生まれています。Wi-Fi6ではOFDMAやMU-MIMOの強化、高密度環境での接続を安定させるためのBSSカラーリングなど、IoTを支援するための技術が数多くパッケージングされていることも特徴のひとつです。

ここまではみなさんもご存知の話だと思いますが、実際にWi-Fi6を展開しようとすると、Wi-Fi6は高性能なだけにこれまでのWi-Fiでは起こり得なかった様々な問題を引き起こします。例えば若者が多く集う高密度の環境で、ある人は4Kのビデオストリーミングを楽しみ、ある人はSNSでチャットし、ある人は遅延に敏感なVRゲームを楽しむ、といった環境では従来のAirtime Fairnessのようなアプリケーションを考慮しないような仕組みだけではパフォーマンスは限定的になりユーザエクスペリエンスも低下する可能性があります。Wi-Fi6の時代には使用するアプリケーション種別やユーザの役割、デバイスタイプといったさまざまな情報に基づきダイナミックにかつきめ細やかにRFを制御、帯域や遅延を保証する、といった技術が必要になります(※1)。

運用面ではAIの活用も急務です。DXでは高品質で個別最適化されたユーザエクスペリエンスを求められますが、Wi-Fi6を搭載した高性能なモバイルデバイスと数多くの多様なIoTデバイスの登場によりネットワーク運用は極めて難しくなりつつあります。DXにおいてはインフラの構築や運用に手間を掛けないことが鉄則なので、AIによるオートメーション化が進むことは必至です(※2)。

DXを語る上で欠かせないのがIoTセキュリティです。IoTとは全てのモノがネットワークに繋がるという状態です。最近ではIoE(Internet of Everything)という言葉も使われています。日々新しいデバイスが生まれ新たなビジネスモデルが創出される時代に「ネットワークに繋がない」という選択肢はありません。全てのデバイスは「信頼できないもの」としてとりあえずネットワーク(LAN)に繋げ、繋がったあとで個別にセキュリティをかける「ゼロ・トラスト」の考え方が重要になってきます。Wi-Fi6は多数のデバイスを同時にサポートできる代わりにより細やかで高度なセキュリティ対策が必要になるため、接続されたデバイスの可視化とコンテキストに基づいたネットワークアクセスコントロール(NAC)、インシデントが発生した際に即座に他のネットワーク装置と連携してアクションを起こすためのエコシステムが必要です。

DXに求められるサービス性

ここまではDXに必要な要件としてコネクティビティとセキュリティを中心にお話してきました。実はもうひとつ(これは無線に限った話ではありませんが)DXがネットワークインフラに求める大事な要件があります。それがサービス性です。

これまでのように時間と費用をかけて特別にデザインされたネットワークインフラではビジネスのスピードについていけないことに経営層の皆さんは気がついています。そこで今始まっているのがネットワークをサービスとして利用してもらうための試みです。これをNetwork as a Service(NaaS)と呼ぶことにします。NaaSを実現するためにはクラウドと同じ用にネットワーク資源を仮想化する必要があります。しかし無線のアクセスポイントやLANスイッチをクラウド上に持っていくわけにはいかないので、ハードウェアとソフトウェアを分離する必要があります。これによってクラウドから全てのネットワーク機器(無線、有線スイッチ、SD-WANなど)を一元的にコントロールすることが可能となり、標準化されたAPIを用いてネットワーク資源をサービスとして利用・提供することができる、これがNaaSの基本的な仕組みです。

さらにはAIによる機器の自律制御、LAN/WANのオーケストレーション、ゼロタッチプロビジョニング(ZTP)、APIを使った運用の効率化・自動化など、これらの機能を付加することによって安心・安全・快適かつ低コストなサービス提供が可能になります。ここで重要なポイントはこれらのハードウェア・ソフトウェアが同じアーキテクチャに基づいて作られているか否かでサービスを立ち上げる時間や使い勝手が全く違うということです。Arubaは統一されたアーキテクチャを用いて実現可能なNaaSのフレームワークを用意しておりますのでご興味のある方はぜひ一度ご相談ください。

DX時代のネットワークインフラにはコネクティビティ、セキュリティ、そしてサービス性が重要である、というお話をさせていただきました。クラウドと同様にネットワークインフラはこれからプラットフォームに変わっていきます。その中でWi-Fi6はユーザとサービスとを繋ぐ最先端のI/O(入出力装置)としてDX時代を牽引するのは間違いありません。

参考情報
(※1)iPhone 11 is out. Upgrade to Wi-Fi 6 now!

https://blogs.arubanetworks.com/solutions/iphone-11-is-out-upgrade-to-wi-fi-6-now/

(※2)AI-Powered Analytics and Assurance

https://blogs.arubanetworks.com/industries/aruba-netinsight-ai-powered-analytics-and-assurance/

(※3)企業のIoT導入を容易にする 新しい自動化セキュリティ

https://digitalpr.jp/r/32723


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