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緊急事態宣言にあたって
コロナ対策とテレワーク、その後を考える

一般社団法人 無線LANビジネス推進連絡会 会長 北條 博史

4月7日、主要7都市に緊急事態宣言が発令されました。未曽有のことで、諸外国のようなロックアウト(都市封鎖)ではありませんが、法律に基づいた強い要望が出されました。外出自粛要請や営業自粛要請が守られるのか、運動などの健康的な生活と、社会生活を維持していくための経済活動の継続という相反する条件の中で、その効果が待たれているところです。

無線LANビジネス推進連絡会の事務局スタッフも、緊急事態宣言がでる前から時差出勤を実施しており、また一週間前にはテレワークのリハーサルを行い、問題点や課題を洗い出していたところでしたが、7日の宣言を受けて、全面的な在宅勤務(テレワーク)に移行しました(⇒こちら)。

なお、前回のメルマガ(3/17号)で小林前会長(⇒こちら)が、今回のメルマガの別記事でテレワークツールの専門家が関連記事(⇒こちら)を書いておられるので、ぜひそれも併せてご覧ください。

在宅勤務について

新型コロナの影響で、ラッシュ時の通勤電車は感染の温床になるということで、まずは時差通勤の実施が要請されました。出勤時間を早朝にしたり昼前にしたりすることで、通勤時の感染確率を減らすことができることから、もともと働き方改革の流れでシフト勤務制度などを導入しているところなどを中心に、多くの企業で時差出勤を実施しました。

しかし感染が本格化してからは、通勤そのものをしなくて済む在宅勤務が要望されるようになりました。これを受けて、すぐさま原則在宅勤務にするといった会社もありました。電通本社ビルが話題になりましたが、業種(営業や個人ベースの業務中心の業務、研究開発など)によっては、比較的簡単に在宅勤務が可能だったのかもしれませんが、業種や業態によっては当然在宅ができない職場(工場の従事者など)もあります。

これまでは在宅勤務の制度を設けて、実際にやろうと声をかけても、それぞれの職場で在宅勤務ができない理由を挙げて実現していなかった職場も、トップのツルの一声で、半ば強制的に在宅勤務に移行したところも多いかもしれません。ましてや感染者が出たビルでは消毒作業等のために、強制的に在宅勤務になったところもあります。

テレビの街頭インタビューで通勤していたサラリーマンに、「在宅勤務をしないんですか」と質問したところ、「メールを見ないと仕事にならないので在宅勤務はできません」と回答していたのを見て、ちょっとショックを受けました。セキュリティの問題から、会社のメールは会社でしかアクセスできないように設定されていて、かつサービス残業撲滅のためみだりに会社にアクセスできないように設定している企業も多いのではないかと思います。

さて、自宅で勤務するにはどうしたらいいでしょう。会社の業務の電子化が進んでいるところでは、自宅から会社の端末やサーバのデータにアクセスする必要がでてきます。

そのためには前提条件として、①自宅にきちっとしたインターネット通信環境がある(メールを見るだけならスマホでもいいのかもしれませんが)、②会社にリモートからの通信アクセスを認証して会社の機器と通信させる機能、の2つが必要になります。

普段から幹部や営業担当に対してリモートアクセスを運用しているところでも、全社員が在宅勤務となるとそう簡単にはいきません。自宅のPCや自宅の通信環境は個人の問題であり、環境のないところに新たに設置(PCの購入、光回線の新設など)するとしたらそのコストはだれが払うのか、などそう簡単にはいきません。

すでにそれなりに通信環境を持っているところでも、Wi-Fiルータ(LTEバックホール)のようなパケット従量制料金の人はどうするのか、また、自宅の機器が故障して通信できなくなった時、給料は支払われるのかなど、課題はいっぱいあります。

また、派遣社員を雇っているところでは、派遣元会社との協議も必要になります。今回の状況を通してこの辺りが整理されてくるのではないでしょうか。いずれにしても会社側のコストが増大します。しかしながら、うまくすれば通勤費は減らせるし、何よりも会社オフィスの面積を減らせますから、トータルコストとしてどうなるかは、落ち着いた段階でよく検証する必要があります。

テレワークについて

在宅での業務について、メール中心でサーバにアクセスできれば業務が成り立つ職種もあるでしょうが、基本的には他人とのコミュニケーションが必要です。それは、上司と部下だったり、プロジェクトの他部署のメンバだったり、また共同で進めている別会社の人だったり、営業のお客様だったり、テレワークとして様々なコミュニケーションを実現する必要があります。そのために必要なのがテレビ会議システムです。

会議の形態には、「テレワーク(社内の連絡)」、「対外商談(BtoB)」、「ウェビナー(Webinar):Webセミナーの短縮語」の3つがあり、一般に、Webex(⇒こちら)、Skype for Business(⇒こちら)、Zoom(⇒こちら)など利用されています。この話題についてもっと突っ込んでお話ししたいところですが、今月のメルマガの別記事で専門家が詳細にご紹介している(⇒こちら)ところですので簡単にとどめます。

TV会議システムは古くからいろいろなシステムがありましたが、私の経験では、これまでは音声や画像に遅延がある、音声が途切れる、画像が粗く笑っているかどうかもわからない、など多くの不満があり、実際にビジネスシーンで使われるのはまだまだと思っていたのですが、今回半ば強制されて使ってみると、画像や音声がきれい、遅延もなくスムースな会話ができる、など格段に進歩していることがわかりました。

Wi-Bizではこれまで集合形式でやっていた会員向けセミナーを、今回初めて3月にWebexを用いたWebinarでやってみました。先行的に在宅勤務をしていた方が多かったからかもしれませんが、準備が遅れてアナウンスから実施日までの期間が通常の半分(2週間)しかなかったのにも関わらず、予想を上回る50名以上の参加がありました。

特に注目すべきは、参加率(申し込んだ人に対する実際に参加した人の比率)が、通常8割のところが9割以上あったこと、またセミナー後オンラインでアンケートを実施したところ回答率が通常より高かったことなどWebinarの方が優れている面も見えてきました。

なお、アンケート結果でも、テレワークでの会議について肯定的な意見が多かったことを付け加えておきます。

在宅勤務での日常生活について

在宅勤務のテレビ会議はシステムの性能向上で、大分やりやすくなったとはいうものの、家にずっといるというのはいろいろと大変なことです。在宅勤務で、家庭不和になる人が増えているというニュースも聞きましたが、確かに3食とも自宅で食べるという通常ではないことをするわけですから、当然摩擦もあるわけですね。ここで活躍するのが食べ物の宅配(出前・デリバリー)です。

弁当、寿司、ピザなどが出前の定番で、在宅勤務が増えるにしたがって需要が増大しているようです。さらに、普通のレストランや定食屋からデリバリーしてもらうウーバーイーツがこの時期にマッチしていて今後普及していくのではないでしょうか。

というのは、そもそもコロナの影響で飲食店はお客様の減少が著しく、食材の廃棄など問題が発生しているところだと思いますが、もし宅配ができれば収入の減少を少しでもカバーできます。しかし宅配するためには配達員の手配など、いろいろ準備が必要でそう簡単には対応できないのが実情だと思いますが、その隙間を埋めるのがウーバーイーツになります。最初はタクシーのウーバーからスタートしていると思いますが、登録している運び屋さんが食べ物を飲食店からお客様まで運んでくれるサービスです。地方では運び屋さんが多くないので配達が成立しないこともあるかもしれませんが、都会では非常に便利な宅配手段となっています。

食べに来てくれなくて暇な状況の飲食店が、宅配で少しでも売り上げを上げることができればこんないいことはありません。一方で注文するほうも、普段は混んでいて食べられないような有名店の名物料理が、配達料を少し払うだけで食べられるというのも大きなメリットとなっています。
一方、コメや水のペットボトルなどの重いものや、生鮮食料品以外の食品などは、ネットでの通販がとても便利です。今回の在宅勤務で、通販の便利さを認識した人も多いのではないかと思います。

最近では、コンサートやイベントを開けない歌手やタレントが、YouTubeなどインターネットの媒体でコンサートを開催する例も出てきています。今は、ボランティアベースで無料で見れるコンサートとなっていますが、もし緊急事態宣言が長引くようだと新たなイベント開催の形として定着するかもしれません。何と夜の接客業が自粛となっている中で、オンラインキャバクラが始まったそうです。

新型コロナ収束後の生活について

まだ、収束してない段階で終息後の世界を語るのは、不謹慎かもしれませんが、人類はいずれ克服して元通りの生活に戻るでしょう。強引に在宅勤務を命じられ、テレワークで会社の会議を在宅で行い、ウーバーイーツで食事し、VoDで暇つぶしに映画を見た人にとっては、この生活も悪くないと思うはずです。前回メルマガの小林前会長の記事(⇒こちら)のように、いかに仕事をしていないか(無駄な仕事ばかりをしているのか)に気が付いた人もいるかもしれません。テレビ会議も簡単にできるようになった現状を考えると、感染による自粛が終わった後もこのままの勤務体制でもいいという人が出てくるかもしれません。

でもちょっと考えてみてください。思い出すのは、ディジタルカメラが出てきた時代です。今でこそ死語になっているかもしれませんが、カメラにフィルムを入れて写真を撮り、それを現像してネガを作成。さらにネガから焼き付けて写真をつくる、という作業です。デジカメはこの面倒な作業やそれにかかることストを桁違いに簡単に安くしてくれます。人にあげるのもメールで送ればいいし、コストもかからない。メリットはいっぱいありましたが、一般に普及するまでには相当な期間がかかりました。

私見ですが、価格の問題もありますが、それはやはり大きく拡大するとアナログ写真のほうがきれいだったからだと思います。その後、デジカメの解像度が飛躍的に増加し、今やアナログを使っている人をほとんど(まったく)見かけない時代となりました。

さて先ほどの話に戻ると、「在宅勤務でも仕事はうまく行くのでは?」、という意見もありますが、Webinar(セミナー型)であれば、参加者は講演者さえ見てればいいので、講演終了後の名刺交換タイムをどうするかなどを解決できれば、それでもいいのかもしれません。

部内会議はどうでしょうか。そこそこ行けると思っている人は、上司の立場にいる人でしょう。部下からしてみれば、話をしていないときの上司の表情などを観察して、今日は機嫌が悪いとか、今日の提案に対して肯定的なのかどうか、とかの推定が今の品質や仕組みでは簡単にはできません。多人数会議だと、話者の映像がメインに出るので、そのタイミングの上司の映像は必ずしも見られない、とか顔の表情まではわからない、という感じです。説明が気に入らずに、机をたたく上司の迫力なんかまったく伝わらないのではないでしょうか。

ましてや商談なんか、テレワークでできるはずはない。価格や内容がほとんど同じのライバルで、一方が対面のミーティング、もう一方がテレビ会議だとしたら、競争にはまず勝てないでしょうね。やはり今の状況だと現実にはまだ勝てませんね。

しかし、デジカメの例のように、VR/ARの技術が向上し、その解像度が現実(つまり視覚の解像度)に対して遜色のない解像度を実現できたら世界は変わると思います。IMAXシアターの高解像映像であたかも空を飛んでいるような感覚を受けた方も多いと思いますが、会議の参加者がみな会議室にいるかのような臨場感を得られ、好きな方向(こっそり上司の顔色)を見ることができれば、面倒な集合会議にとって代わるかもしれません。コンサートなんかもバーチャルでできれば、地方からわざわざ東京まで出てくる必要はなくなります。このような時代はまだまた先の話だと思っている人がいるかもしれませんが、実はそういう時代がもうすぐそこまで迫ってきているのです。少しの金があれば、3Dゴーグルをかけて別世界に行けます。

さて、ここまで、長々と話してきたのは、この後を述べるためです。つまり、VR/ARの技術は着実に進歩してきていて、その解像度も向上しつつありますが、もう一つ重要なことがあって、そのことが満足されないと理想は実現できません。

つまり、遠隔にいる人がバーチャルな空間を共有するためには、その情報を遠隔で転送する高速の通信回線が必要になるということです。しかも最後はワイヤレスである必要があるので、このような臨場感あふれるバーチャル会議を実現するためには、つまり、「5G」と「高速Wi-Fi(Wi-Fi6)」が必須になるということです。5GとWi-Fiについては過去のメルマガ座談会をぜひご覧ください(第1回座談会はこちら、第2回座談会はこちら)。

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