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事例紹介:佐賀県多久市
ケーブルテレビと連携し災害発生時にWi-Fiで情報提供

渉外・広報委員会 江副浩

佐賀県多久市では地元ケーブルテレビ事業者と「災害時連携協定」を締結し、災害発生時に避難所に設置したWi-Fiアクセスポイントで00000JAPANを発動し、迅速な情報提供(避難所状況等)を行うことに成功しました。またケーブルテレビの回線を利用するなど非常に低コストに整備を行いました。

佐賀県多久(たく)市の基礎情報

人口:19,647人

世帯数:7,856世帯

高齢化率:33.7%

財政力指数:0.37(平成29年度)

Wi-Fi利用拠点数:11

アクセスポイント数:13

整備開始:平成29年

域内指定緊急避難場所数:10

域内指定避難所数:23

Wi-Fi環境整備実施の経緯

 多久市では過去、風水害や土砂災害をはじめとする災害が多く発生し、避難者の情報収集手段が遮断されるケースが発生していました。市として、災害発生時に避難者が情報から遮断されることの問題性を強く認識していたため、「多久市HP」上での防災情報(避難場所、警報・注意報情報、雨量・水位等)発信や防災情報のメール通知サービス実施により、災害発生時避難者への情報提供手段の検討に注力してきました。その一環で、平成29年度より多久市情報課では災害発生時の避難所における避難者の情報収集手段確保の目的もと、避難所へのWi-Fi環境整備が進められることになりました。

 多久市では、平成29年度以前も観光物産館等の市有施設に各施設の管理課主導でWi-Fi環境の整備が行われてきましたが、平成29年度以降は災害時の避難者の情報収集手段確保を目的に、情報課主導で市内の避難所を中心にWi-Fi環境整備が進められてきました。

 Wi-Fi整備においては、 避難所としての開設が最も早い公民館など6箇所から整備を開始し、次いで避難所としての重要度が高く、避難者も多く集まる市内の4箇所の体育館などへの整備が行われました。体育館については、整備後の平時利活用も見込めるということで、優先してWi-Fi環境が整備されています。また、10箇所に整備されたWi-Fi環境は災害時の利用を想定し、「00000JAPAN」(※)に切替が可能な仕様で整備が進められました。

Wi-Fi環境整備の内容

多久市の指定避難所23箇所のうち、11箇所でWi-Fi環境が整備されています。Wi-Fi環境整備済の避難所一覧及び収容人数、整備担当課を以下に示します。

サービス内容

「taku-city-bousai-wifi」が利用可能な施設には、多久市のイメージキャラクターである「多久翁さん」が描かれているステッカーが貼られており、Wi-Fiが利用可能であることが告知されています。また、佐賀県内のフリーWi-Fiスポットを集約・公開する「佐賀わいわいWi-Fiマップ」にも登録されています。

「taku-city-bousai-wifi」の利用時の認証は、パスワード認証方式を採用しています。SSID、パスワードについては、各施設にて利用者に通知しています。

また、災害発生時は、「00000JAPAN」への切替が行われ、認証を必要とせず、誰でも自由にアクセスできる形となっています。

整備費用について

多久市情報課が整備した10箇所についての各整備年度におけるWi-Fi環境整備費用は以下の通りです。

年度:平成29年度

整備費用:81,280円

設置個所:6箇所(防災拠点)

備考:補助などの利用はなし

年度:平成30年度

整備費用:314,172円

設置個所:4箇所(防災拠点)

 多久市ではケーブルテレビ回線が広く普及しており、Wi-Fi環境整備に当たり、この季節のケーブルテレビ回線を利用することにより回線の整備費用を節約しました。

運用費用について

情報課が整備したWi-Fi環境の運用費用については、以下のようになっています。なお、運用費用については先述の通り、各種保守費用は地元ケーブルテレビ会社が負担し、回線・機器利用料を導入初年度は情報課が負担し、次年度以降は教育振興課が負担しております(多久市からケーブルテレビへの支払い)。

  • 1施設にアクセスポイントが1台である場合の回線・機器利用料:10,000円/月(1施設あたり)
  • 1施設にアクセスポイントが2台である場合の回線・機器利用料:15,000円/月(1施設あたり)

 情報課が整備した10施設のうち、2施設(多久市体育センター・西多久社会体育館)のみアクセスポイントが2台ですが、その他施設については1施設につきアクセスポイントは1台になっています。そのため、全体の運用費としてはおよそ110,000円/月ほどになっています。

Wi-Fi環境整備効果

多久市では、月ごと・アクセスポイントごとにWi-Fi利用件数を集計しています。利用件数の多寡は施設によって大きく異なっていますが、全体で平均をすると、1施設の1日あたりの利用件数は2~5件程度となっています。

 また、平成30年7月豪雨の発生時には、避難所が開設され、実際に避難所でのWi-Fi環境無料開放が行われました。災害発生時の避難所でのWi-Fi利用件数は、当該施設の平時の利用件数と比較して約10倍程度に増加しています。避難所ではWi-Fi環境接続されたタブレットを使用して、避難状況や被災状況について、写真付きで避難所間で情報共有を行う等の取組も実施されました(「5.Wi-Fi環境整備における課題と工夫した取組」において詳述)。災害発生時の避難者への情報適用手段としてWi-Fi環境が有効活用されたケースといえます。

参照先:

総務省「地方公共団体におけるWi-Fi整備・利活用事例集」http://www.soumu.go.jp/main_content/000618328.pdf


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