事例紹介:宮崎県小林市
既設の地域イントラネットを利用し「防災Wi-Fi」
渉外・広報委員会 江副浩
宮崎県小林市では光ファイバ整備に地域格差があり、ADSLしか利用できない地域もあります。そこで、総務省の地域イントラネット基盤施設整備事業によって構築された地域イントラネットを利用して公設公営モデルのWi-Fi整備を行っています。通常は登録後1時間利用の限定サービスとして市民に公開しており、災害時にはこの限定を開放した災害用Wi-Fiサービスに切り替わります。特筆すべき点はこのインフラを利用して国立研究開発法人防災科学技術研究所が開発した「自治体向け災害情報利活用システム」の利用など色々な取り組みを行っていることです。
宮崎県小林市(こばやしし)の基礎情報について
人口:46,513人
世帯数:22,136世帯
高齢化率:34.4%
財政力指数:0.38(平成29年度)
Wi-Fi利用拠点数:27
アクセスポイント数:37
整備開始:平成29年
域内指定緊急避難場所数:37
域内指定避難所数:51
Wi-Fi環境整備実施の経緯について
小林市は、平成18年3月に旧小林市が旧須木村と合併、更に平成22年3月に旧野尻町とも合併し、現在の姿となっています。合併当時から小林地区(旧小林市)、須木地区(旧須木村)、野尻地区(旧野尻町)の間で、光ファイバ整備に格差があり、その解消が課題でした。平成31年2月末時点※でも、民間主導による整備が困難な地域が残り、小林地区では光ファイバが一部未整備、須木地区はADSL回線となっています(野尻地区は光ファイバ整備が完了)。一方、総務省の地域イントラネット基盤施設整備事業を活用し、平成14年度に旧野尻町、平成17年度に旧小林市と旧須木村が、地域イントラネット整備は終えています。
行政計画においては、小林市は、小林市総合計画(平成23~28年度の後期基本計画)において地域イントラネットの利活用推進やデジタルデバイド(情報格差・通信格差)の解消を掲げており、さらに、小林市版総合戦略「てなんど小林総合戦略」(平成27年10月策定)に示した地域基盤の強化施策では、市内情報通信網整備事業及び情報配信システム構築事業が打ち出されました。
平成28年4月に起きた熊本地震では、小林市内で携帯電話が繋がりにくくなりましたが、LINE等による連絡は可能であったことを実体験し、Wi-Fi環境整備へのニーズが顕著となりました。以上のような状況において、総務省「公衆無線LAN環境整備支援事業」を活用して、平成28、29年度事業として、地域イントラネットを活かしたWi-Fi環境整備を市内26箇所で進めることとなりました。
Wi-Fi環境整備の内容
環境整備の内容は以下の様な仕組みになっています。
- 認証基盤は、民間事業者クラウドサービス を利用し、SMS認証/SNSアカウント/メール認証の3認証を採用し運用する(災害時は、災害時モードにて認証を開放する)
- UTM装置を導入し、不適切なサイトへのアクセスを禁止するなどの策を講じる
- アクセスポイントコントローラを導入し、アクセスポイントの管理/統計情報を取得する
- シスログサーバを導入し、利用ログを取得し、警察等より利用履歴の開示要求があった際に対応できる環境を整備
- バックホール回線は、地域イントラネットを含む自治体敷設の光網等を活用して整備
サービス内容
利用者は、スマートフォンやパソコン、タブレットなどのWi-Fi設定画面でSSID「Kobayashi_City_Wi-Fi」を選択後、各施設に表示されているパスワードを入力。表示される認証画面で利用規約に同意したのち、Facebook、Twitter、Yahoo!、Google、WeiboのSNSアカウント、メールアドレス、SMSメッセージのいずれかで認証してインターネットに接続可能となります。なお、接続時間は1時間と設定されており、1時間を超えた場合は、再度接続手続き(利用規約に同意)することで利用が可能となります。
整備費用について
小林氏での各整備年度におけるWi-Fiの整備費用は以下の通りです。
年度:平成28年度
整備費用:52,164,000円
設置個所:17箇所(防災拠点)
備考:公衆無線LAN環境整備支援事業を活用(補助金26,082,000円)
年度:平成29年度
整備費用:15,303,600円
設置個所:9箇所(防災拠点)
備考:公衆無線LAN環境整備支援事業を活用(補助金7,164,000円)
運用費用について
Wi-Fi環境の運用費用については、以下を市が負担しています。(平成30年度)
システム保守に係る事業(定額保守、障害発生時対応、機器ライセンス料等)約380万円
その他(プロバイダ等通信料、民間回線借上料)約57万円
Wi-Fi環境整備効果
小林市では、各箇所に整備されたWi-Fiのアクセス数が月別に集計されています。アクセス数は、スマートフォンやパソコン、タブレットなどの端末が「Kobayashi City Wi-Fiサービス」を通じてインターネットに接続した数ですが、1時間を超えた利用の場合には、再度接続手続き(利用規約に同意)を行うため、新規のアクセスとして再カウントされる設定となっています。
平成30年度実績(平成30年4月~31年3月)では、全箇所合計で月平均1,500程度のアクセス数を記録しています。内訳をみると、特に各種生涯学習事業が実施されている中央公民館や、高校生の利用が多い地域・観光交流センター「KITTO(きっと)小林」及び市民交流スペースを持つTENAMUビルでのアクセス数が多くなっています。
Wi-Fiを利用した取組について
設置したWi-Fiを利用して以下の取組を行いました。
- 「自治体向け災害情報利用システム」にて災害時の情報共有行った。(職員が避難所のWi-Fiを利用して情報を発信
- 駅伝やマラソン大会の映像配信
- 高齢者健康増進や畜産農家全国大会の映像配信
参照先:
総務省「地方公共団体におけるWi-Fi整備・利活用事例集」http://www.soumu.go.jp/main_content/000618328.pdf
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