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ビジネス情報
公衆無線LANからみたWi-Fi6への期待

ワイヤ・アンド・ワイヤレス 運営委員 佐藤 圭

慣れなかった在宅勤務も3カ月目となりました。

直接的な健康被害とともに、長期化することで生活や経済全般に甚大な被害をもたらしている新型コロナウイルスの影響が、一日も早く収束に向かうことを願いつつ、この原稿を書いています。

また、こうした中、救命の最後の砦となって日々激務のなか頑張っておられる医療従事者や関係者の皆様、ライフラインを支えていただいている多岐に渡る業種の皆様に、心より感謝と敬意を表したいと思います。

私の勤務する株式会社ワイヤ・アンド・ワイヤレス(Wi2)は、ライフラインを支える公共交通機関、生活用品等を取り扱う販売店、生活に潤いをもたらすとともにリモートワークのスポットともなる飲食店など、多くの法人、団体様の施設において、公衆無線LANサービスを提供させていただいております。

今回、Wi-Fi6(IEEE802.11ax)をテーマにとのことで書かせていただいておりますが、この公衆無線LAN(主に所謂「フリーWi-Fi」サービス)での提供について簡単に述べさせていただきます。

なお、この記事をお読みの方は、既にWi-Fi6(またはIEEE802.11ax)という言葉はきっと耳にされており、ご自宅のWi-Fiルータなどで既に利用されておられる方も居られるかもしれません。また、私のような技術の素人が書くよりも解り易く、正確な解説が多くありますので、この技術の内容を詳しくお知りになりたい方は、以下のような記事をご覧ください。

Wi-Fi技術講座(バックナンバー)

第19回 Wi-Fi6 = IEEE 802.11ax その1

第20回 Wi-Fi6 = IEEE 802.11ax その2

第21回 Wi-Fi6 = IEEE 802.11ax その3

さて、公衆無線LANでは、利用者の増加と利用者一人あたりの通信量の増加、さらにそれがピーク時間帯において顕著となる傾向が続き、品質の維持・向上のための取組みとの“いたちごっこ”が続いています。公衆無線LANサービスの提供者としては、無線LANアクセスポイントから上位のインターネット回線の強化や無線LANアクセスポイントの増設などを行ってきましたが、それも場所による制約や限界もあるため、無線LANアクセスポイントがサポートする“接続を制御する機能”と設置場所や出力の調整といった細かいチューニングも組み合わせることで、利用者が体感する一定の品質レベルの確保に努めてまいりました。

こうした状況において、Wi-Fi6は、主に電波環境が良好な状態において高速化が期待できる1024QAMといった機能に加え、特に公衆無線LANの観点では、OFDMAやMU-MIMOといった、同時接続数が多い環境において品質の向上が見込まれる機能がサポートされることになったことが大きな魅力となります。

そこで、ワイヤ・アンド・ワイヤレスでは、今後の利用者の体感品質の向上に向けたノウハウの獲得に向け、株式会社ウェルカム様のご協力のもと、昨年9月にDEAN&DELUCAの実際のカフェでフィールドテストを行いましたので、取り上げていただいた記事のリンクを掲載させていただきます。

*取り上げていただいた記事

https://businessnetwork.jp/Detail/tabid/65/artid/6969/Default.aspx

(トライアルを実施した店舗)

DEAN & DELUCA カフェ 東京音楽大学 中目黒・代官山キャンパス

記事にありますように、当日のスピードテスト(スマートフォン)で、Wi-Fi5(IEEE802.11ac)と比べて約1.5倍程度のダウンロード速度の差が出る結果と出たように、一定の改善効果が見られております。ただ、この当時はWi-Fi6がサポートされた端末も少なく、機能も一部限定されたなかでの結果でした。また、設置場所やチューニングによって、より良好な結果が得られることなどがわかりましたので、条件ややり方次第で、より性能を活かすことも可能であると考えています。

一方、公衆無線LANを提供する実際の環境は多岐にわたり、電波環境や利用人数のキャパシティなどの基本的な要素のほか、利用されるデバイスや使い方にいたるまで、場所ごとにその特徴は大きく異なります。また、Wi-Fi6はチップレベルの世代であるため、導入にはハードウェアの交換が必要となります。

このため、Wi-Fi6の導入する場合、特に既存の設備を置換する工事を行うといった場合には、上位回線を含めてその性能を活かせる環境にあるのかを確認すると同時に、その性能を活かすために必要な設計が重要と思います。また、Wi-Fi6に対応した世代の機器のラインアップとしては、多くがWPA3やEnhanced Openなどセキュリティ面の強化にも対応されている思われるため、これらへの対応も併せて検討、提案を行っていきたいと考えます。

今は、コロナウイルスの影響により、人が密に集まるような環境は避けなければなりませんが、この状況が早く収束し、Wi-Fi6のメリットが存分に活かせるような活気が戻ることを切に願っております。


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