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イベント報告
第3回 企画・運用委員会セミナー
文部省高谷様が「GIGAスクール構想」で講演

企画・運用委員会 松村 直哉

7月14日、企画・運用委員会による第3回目のセミナーを開催しました。今回は「GIGAスクール構想〜令和時代のスタンダードとしての一人一台端末」と題しまして、文部科学省 初等中等教育局情報教育・外国語教育課長 高谷 浩樹様よりご講演を賜りました。今回もオンラインセミナーでの開催となり、参加者は162名、また、リモートからの質問も多数頂き、GIGAスクール構想への期待の高さが感じられました。

GIGAスクール構想の背景

諸外国と比較した場合、教育現場でのICTの利活用の遅れが問題となっています。GIGAスクール構想はこれを改善するためインターネット回線の大容量化やクラウドの利用促進、Wi-Fi環境の充実、さらに児童生徒への一人一台端末を目指すため、令和元年度補正予算において、令和5年度までの学校における生徒一人一台端末実現と、高速大容量の通信ネットワークの整備のための予算が計上されました。

さらに、令和2年度の補正予算ではコロナ禍でのオンライン授業の実現のため1人1台端末整備の大幅前倒しや、家庭でも繋がる通信環境の整備に計上されています。

高谷様はこのGIGAスクール構想推進の中心人物であり、全く新しい取り組みとしてYoutubeを使いICTを使った新しい教育の形についてのメッセージ発信をされています。ルールにとらわれず、これまでにないコロナ禍に対応し、文科省のお立場で現場のサポートをされています。

セミナーでは、はじめに北條会長から開会の挨拶があり、次のように述べられました。

「今回のセミナーも引き続きオンラインの開催となり多数の方に参加して頂きました。

数年前から在宅勤務ということで取り組みを行なってきていましたが、コロナ禍により、この数ヶ月でほぼ強制的に在宅勤務へとシフトし、書類への押印処理など出社する必要がある業務についてもICT化が推進され、全てがオンラインで実施の方向になってきていると思います。

この様な状況下において教育現場でも1人1台端末の利用により家庭からのオンライ授業を進める中で様々な課題が出てきていると思います。Wi-Bizではこのような教育現場でのWi-Fi利活用において文科省の取り組みに対しバックアップしていきたいと考えております」

高谷課長がGIGAスクール構想について講演

 

文部科学省 初等中等教育局情報教育・外国語教育課長 高谷 浩樹 様が講演「GIGAスクール構想〜令和時代のスタンダードとしての一人一台端末」を行い、前半はなぜ、GIGAスクール構想を進めているか、についての説明がありました。

「大きな目的としてはSociety5.0への対応になります。昨今の子供たちのなりたい職業を聞くとYoutuber、e-Sportsプレーヤー、ゲームクリエーターと、我々が小学生の時に存在しなかった職業が挙がります。
このように、将来、多くの子供たちは現在、存在していない職業に就くはずであり、このため予測できない変化に対応できる人材の育成が重要となってきており、学習指導要領についても変化にいち早く対応する能力として、情報活用能力を高めることに焦点を置いています。
これまでの一斉授業のみの場合、2割は理解できない、逆に2割は授業を受けなくても教科書を読むだけで理解できる、といったように理解に大きなばらつきがありました。こういった学習の理解の度合いに対応すべくICTを利活用することで、以下のスライドにある個別学習、協業学習を推進していく」とのことでした。

さらに、「ICT化が現状どうなっているかを表したOEDC/PISAの2018年のICT活用調査で説明します。日本は、共同作業にPCを使っているかの調査に対し、一番右側の最下位となっています。ほぼ毎日と答えた比率が他国と比較して非常に少ない結果となっています」と述べました。

「また、学校外でのPC利用調査においても、宿題をするがOECD平均 22.2%に対して、3.0%となり非常に少ない値となっています。一方、ネット上でチャットを利用する、の質問に対してはOECD平均67.3%に対し、87.4%とOECD平均を上回る結果となっています。このように家庭外ではチャットやゲームなどでデジタル機器を利用しているが、学習での利用が非常に少ないといういびつな構造となっています」

「コロナ禍による臨時休業中の時期に紙やプリントを利用した学習はほぼ100%実施されています。一方でオンラインによる学習予定は臨時休業前の調査で5%という結果となっています。現状、緊急時でも学校がICTを使える環境が整っていないことがわかります」

「また、学校外でのPC利用調査においても、宿題をするがOECD平均 22.2%に対して、3.0%となり非常に少ない値となっています。一方、ネット上でチャットを利用する、の質問に対してはOECD平均67.3%に対し、87.4%とOECD平均を上回る結果となっています。このように家庭外ではチャットやゲームなどでデジタル機器を利用しているが、学習での利用が非常に少ないといういびつな構造となっています」

「コロナ禍による臨時休業中の時期に紙やプリントを利用した学習はほぼ100%実施されています。一方でオンラインによる学習予定は臨時休業前の調査で5%という結果となっています。現状、緊急時でも学校がICTを使える環境が整っていないことがわかります」

「これまでも国から地方への交付金による間接的な財政措置が取られてきていますが、この交付金の用途が限定されないこともあり、自治体によるICTの整備は全く進んでいません。普通教室の無線LAN整備率については目標100%に対して現状は41%、インターネット接続率(100Mbps以上)が70.3%と100M回線でも70%の状況となっています。
また、教育用PCの整備率は目標3人に1台程度(33.3%)に対して20%前後の状況となっており、且つ、自治体間に大きくばらつきが出てきています」

「その結果、生徒たちにとっては、学校外でチャットやゲームで不通に使うICT機器が学校だけで使えない時間になってきています。このいびつな危機的状況を抜本的に改善するため、2019年度からGIGAスクールとして補正予算をつけ1人1台端末、高速インターネット通信、更に令和2年度の補正予算で1人1台端末の整備の前倒しや家庭でも繋がる通信環境の整備に国が直接補助を行うこととしました」

 

学校のICT環境整備、通信環境

 

後半は、ICT環境整備、通信環境についてお話しが進みました。

「これまでお話ししたように1人1台の学習用PCを配布し、クラウドを活用することで1人1人に最適なコンテンツを提供することを目指しています。これにはPCとクラウドさらにネットワークがセットにならないと実現できません」

「これまでの学校におけるPC整備においては、十分吟味されず言われるがまま色々なソフトウェアを個別にインストールしていたためハイスペックなPCが必要となり、結果として価格が10万円以上となっていました。今回、クラウドを最大限活用しブラウザベースのソフトウェアを採用することでOSに依存しない、端末もハイスペックなものを必要としない、且つ、クラウドによる集中管理することで、災害時にもデータが残るような整備を目指しています。端末は国からの補助を1台当たり45000円としたところ、各社が金額にあるモデルを提供しており、会社別に以下のHPに掲載しています。」

https://www.learning-innovation.go.jp/giga/

「コロナの第2波が来てもこれ以上学習が遅れないように、一日も早く子供たちの手に届くように、調達や納品の弾力化やクラウドを最大限利用したPCのキッティングの簡素化などを業界にお願いしており、OSメーカー毎に専用の窓口の設置などを依頼しています」

「セキュリティーについても、ただ強化すればよいとの単純な発想の結果、厳しくなりすぎて、生徒のPCから動画が見られず、何のための整備かということが起きています。セキュアなクラウドサービスが普及していることを受け、クラウド前提でより柔軟な環境整備を実現するためガイドラインを改訂しています」

そして、最後に通信環境について説明が行われました。
「ネットワークについてはモデル調達仕様書を作成しています。現状は教育委員会のネットワークを介してインターネットに接続されているところがボトルネックとなり動画が見られないといった、課題がでてきています。
クラウドを利用した授業をするうえで学校から直接ISPにつなぎ、クラウドにアクセスするパターンも設ける、また、ランニングコストを落とすため、自治体が自分で管理できるネットワークにする、また、子供たちが使うレベルであるため法人向けの冗長化構成などは使わず安価な構成をとることを織り込んでいます。
支援といった観点では相談窓口を設け自治体が業者に積算した見積もり結果に対して、費用見直しの助言も行い、コストダウン効果も出ています」

「また、学校の外については、令和2年度の総務省補正予算による光ファイバ整備の推進事業はGIGAスクールとタッグを組んで対応を行っているので、 合わせて、自治体に活用していただきたいと思います」

「さらに、コロナ禍での状況を受け、家庭学習のための通信機器整備支援を行っています。家庭で利用するためのモバイルWi-Fiルータを貸与するための自治体への補助や、低所得世帯の通信費の支援を行っています」

「これまでの経験から、現場でICTのわかっている人がいないとICT化がなかなか進まないという問題があるため、3つの人的サポートを進めています。一つ目は「ICT活用教育アドバイザー」の設置、自治体からのICTに関する問い合わせに対し、文科省の事業として5月11日より相談窓口を設置し、業務を開始しています。二つ目は「GIGAスクールサポーター」、これは各教育委員会等が国の補助金を利用しサポーターを募集・配置し、学校における環境整備の初期対応を行うというものです。三つ目は「ICT支援員」です。こちらは各教育委員会が地方財政措置を活用し、支援員を募集し、日常的なICT支援を行うというものです。各教育委員会が募集するサポーターや支援員については、今回のセミナー参加企業の中でお手伝いいただける方また、ICTに関連する企業のOBの方の応募をお待ちしております。お手伝いいただける方は以下のHPの方からご申請ください」

ICT活用教育アドバイザー:https://www.oetc.jp/ict/top/

学校ICT化サポート事業者一覧:https://oetc.jp/ict/partner/

「最後にまとめになります、本日ご説明したGIGAスクール構想の目的と方向性として、シンプルな端末、クラウド活用、しっかりとした通信ネットワークということの理解を共有頂きたい。その上で学校ICT活用への技術貢献、学校向けのビジネスを展開していただきたいと思います。通信事業者様においては自治体が受け入れやすい通信プランの検討を是非行っていただきたい。これまで端末の保守ビジネスが中心となっていましたが、システム全体をサポート頂けるビジネス展開を進めて頂きたいと思います。個別にサポート頂けるよりも国、自治体も一括してサポートしていただけるほうが助かる面が多いと思います」

また、「Youtube「GIGAスクール」Chにて動画による説明を公開していますのでこちらも方も参考として下さい」とのことでした。

Q&Aコーナーで詳しく解説

最後に、講演中にネットから頂いた質問に対して、「Q&Aコーナー」として以下の回答を頂きました。

質問:なぜ、ICT教育にプログラミングを入れようと考えたのですか?

回答:情報活用能力というのは、次の3つの柱からから構成されます。(1)使う、使いこなす力、(2)モラル(道徳的なところ)(3)どういった仕組みで動いているか?という論理的に理解する力。三つ目の、論理的に理解するために、あらゆるICTツールはプログラミングがないと動かないということを学ぶ必要があると考えています。

質問:ICT化の推進は現場でのやることが増えると思います。増えた分何かを減らせないか?例えば総合的な学習を減らすことができないか?

回答:先生が忙しいのは十分わかっています。ICTを入れると忙しくなるのではなく、ICTを入れ効率化を図る、と捉えてほしいと思います。現在も先生がコピーのソーティングを手作業で実施したり、プリントの配布、回収、集計を手作業で行っているところが沢山あります。この一連の作業を電子メールなどICT活用によりかなり効率化されます。その結果空いた時間で現場の先生たちには是非、子供たちと向き合ってもらう、一緒にいる時間を増やしてもらいたいと思っています。

質問:個人の端末を利用するBYODを実施する計画はありますか?

回答:BYODについては実施する可能性は高いと思います。現在、ランドセルは祖父母の方が入学祝いとして購入することがあるかと思います。学びの場でICTが当たり前となれば、ランドセルの代わりにPCをプレゼントするという時代になってくると思います。

質問:Wi-Fiの40台同時接続はこの台数で問題ないか?

回答:現場では様々な問題が出てくると思います。うまくつながるよう皆さまのご協力をお願いいたします。

質問:ネットワークの構成として教育委員会のネットワークを経由するか、直接クラウドにつなぐかどちらを優先していく予定ですか?

回答:現在、NHKのアーカイブ動画など外部の教育コンテンツが見られないという課題があり、ダイレクトでの接続を進めていきたいと思います。また、校務系についても将来はクラウド活用に移るべきと考えています。

質問:5年後に今回導入したICT機器の入れ替えが必要になってくると思います。5年後の補助金の予定はありますか?

回答:ICTが当たり前の社会になることを目指しています。BYODを含め、今後、本来は誰の負担となるべきかを考えていきたいと思います。

セミナー終了後、会場で高谷様を交えての記念撮影を行いました。(撮影時のみマスクを外しました)


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