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米国「6GHz開放」への差止要求が却下される!
岩本賢二
2018年10月に米FCCが「6GHzをアンライセンスバンドに割り当てる」と発表をしたことを当メルマガでも紹介しました。その後2019年2月のMWC2019にてインテルが6GHz対応のWi-Fiチップのデモを発表したことも記憶に新しいところです。
米国は5Gの覇者に向けての布石を打つべく、アンライセンス陣営を味方に付け、1200MHzという広大な周波数をアンライセンス化する方向で着実に進んできました。
しかし、このようにバンド全体の利用方法を大きく見直すというのは簡単なことではありません。本来6GHz帯は米国では公共安全用通信システムや電力網の管理や監視に使われてきました。バンドの利用見直しはこうした既存の利用者にとっては大問題となります。
実はFCCが6GHzのアンライセンス化に舵を切ったことに対して、公共安全通信協会(The Association of Public Safety Communication)をはじめとする団体が「既存の周波数利用企業に対する十分な保護が無い」と主張し、FCCの決定(6GHzをアンライセンス化する決定)に対して、緊急差止を提訴していました。
6GHzのアンライセンス化に対するこの提訴を多くの関係者が動向を見守っていました。そして、遂に10月1日、米国控訴裁判所はこの申し立てを却下しました。
FCCの会長Mr.Ajit Paiはこの日Twitterで以下の様に決定書の写真を添付してコメントを発表しました。
https://twitter.com/AjitPaiFCC/status/1311670449869213701
「速報:DC巡回裁判でFCCが決定した6GHz帯のアンライセンスサービスに対する差止が却下された。自宅でWi-Fi6Eが利用できるようになり、消費者にとって素晴らしいニュースだ!」
このニュースでWi-Fi Allianceなどのアンライセンスバンド陣営は大喜びとなりました。そもそもFCCの決定はより多くの国民の役に立つ「公共の福祉」を考えたうえで決定されたことなので、差止にはならないことは予想できていました。しかし今回の棄却で6GHzのアンライセンス化について揺るぎないものとなりました。
以下はWi-Fi Allianceのコメントです。
「世界的なCOVID-19危機の真っただ中で、多くのアメリカ人が大量の帯域幅を消費するようになってきています。職場、学校、医療、その他の宿泊施設では低コストなWi-Fiに依存しています。FCCの6GHzアンライセンス化の決断はWi-Fiの需要増に答えるために重要です。同時に公共安全やユーティリティーの運用を保護する必要があります。」
日本でも6GHz帯の運用見直しについてパブリックコメントの募集が始まりましたが、既存利用者との調整難航が予想されます。今回の裁判結果は日本での今後の動向を占う形となりそうです。
参考:
https://www.wlan-business.org/archives/16648
https://www.wlan-business.org/archives/20620
https://www.fiercewireless.com/regulatory/wi-fi-fetes-victory-court-s-6-ghz-ruling
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