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技術情報
「iPhone12」を使ってみた! 5Gの性能は?

北條 博史

 

今年も新しいiPhoneが発売されました。例年だと発売日は9月下旬となるのですが、今年は新型コロナの影響などにより、「iPhone12」と「iPhone12 Pro」が10月23日、「iPhone12 Pro MAX」と「iPhone12 mini」が11月13日に発売となり、一か月以上遅れました。

iPhone12の最上位機種であるiPhone12 Pro MAXを購入しましたので、昨年の機種「iPhone11 Pro MAX」と比較してご紹介します。

また、皆様の最も気になる5Gの性能について現場で測定した速報をお届けしたいと思います。

見た目(外観)について

iPhone12 Pro MAXとiPhone11 Pro MAXの写真をご覧ください。右のiPhone12のほうがやや大きく、初代iPhoneのように角張った形になっています。色については、従来のゴールドとシルバーに加えて新色としてパシフィックブルーとグラファイトが出てきました。せっかくだから新色を買おうと思って、グラファイト(写真右側)を購入したのですが、比べてみるとiPhone11のスペースグレイの色(写真左側)とほとんど見分けがつきませんでした(ちょっとこれは詐欺?)。
カメラのところをよく見ると、形は同じなので気付きにくいかもしれませんが、一回り大きくなっています。また次の写真を見ると、カメラの出っ張りも大きくなっています。これは、カメラの光学ズームが2倍から2.5倍になったことによるものと思います。

 

ハードウェアの新機能について

iPhone12ProMAXの新機能については、詳しくはいろいろな情報ページに出ているのでそちらを参考にしてください。その中で私にインパクトのあると思われるものについて簡単にご説明します。

①5Gサポート
これが今年の最も重要な機能追加だと思います。この後、詳しく紹介します。

②カメラ性能
✔光学ズームが2倍⇒5倍(カメラの基本性能なので重要)
✔光学式手ぶれ補正の機能アップ(まだ手が震えるような年ではないのであまり関係ないかも)
✔ナイトモードポートレート(夜の肖像写真がよりきれいに)
✔Dolby Vision対応(TikTokなどやっている人にとっては重要?)
✔LiDARスキャナー(カメラ部分の右下にこのセンサがあります)

③バッテリー充電機能の追加
従来の「Qi」に加えて「MagSafe」が新たにできるようになりました。

やっぱりカメラの性能向上は毎年のトピックですね。未だその素晴らしさを経験するほどの時間が経過していないので、現時点ではそのメリットを直接感じてはいませんが、LiDARスキャナーというのは初耳だったので、どんなものなのか確認してみました。対応したアプリがいくつかあり、とりあえずはpolycomというアプリをダウンロードして使ってみました(スキャンするだけだと無料)。

都内のホテルのロビーに飾られていたクリスマスツリーを撮影したものです。時間がなかったので対象物の周りを2周だけ撮影して撮影しました(ツリーの上の方までスキャンすればきちっとした図形が出来上がります)。撮影が終わると後処理をしたのち、自由に360度、上下を含めて視点を変えて見ることができます。とりあえず別々の3つの視点からの画像を貼り付けました。最近はやりの360度カメラの画像はあくまでのその視点から見た画像のつなぎ合わせですが、これは3次元情報がそのまま記録できることになります。すぐにどういう使い方があるというわけではないかもしれませんが、新たないろいろな利用方法が期待される機能だと思います(いちおうすでにiPad Proでは実装されていた機能らしいです)。

5Gの性能や如何に!

前もってお断りしなくてはいけないのですが、5Gというのは、準ミリ波(28GHz帯)とSUB6(3.7GHz帯と4.5GHz帯)の2種類の周波数を利用することが可能です。Wi-Bizのメルマガ連載「ローカル5G技術講座(第1回~第4回)」でご説明した通り、5Gの3つの優位性の1つである「超高速」を実現するためには、28GHz帯を活用することが不可欠になります。
事前の情報では、12pro/12proMAXは28GHzに対応するという話もあったのですが、実際にふたを開けてみると、まことに残念なことに、iPhone12にはこの28GHzを受信する機能が実装されていませんでした(米国版にのみ入っているようです)。

各キャリアのサービスエリア

まず、モバイル大手3社の現在の5Gのサービスエリアについて、公表されている情報を調べてみました。

以下に秋葉原付近のエリア展開状況を示します。

それぞれスマーフォンの画面をキャプチャしました。各社ともに縮尺最大で地図を表示しています。まずNTTドコモは、5Gのサブ6については色を付けて(図中の赤の濃い色)表示し、28GHzはスポット(点:図中のまち針)で表示しています。auは周波数を色分け(濃いのが28GHz)で表示し、エリアはすべて丸印で表示しています。ソフトバンクは、28GHzのサービスをまだ開始していないので、サブ6のエリアを紫色で表示しています(三者三様ですが、3社の特徴がよく出ていますね)。

いずれにしてもどの会社も28GHz帯の展開はまだまだのようです(つまり、5Gのメリット「超高速」を体感できるのはまだ先ということに)。

ドコモ5Gの実測結果

私はドコモのiPhone12しか保有していないので、ドコモの5Gのみ検証結果をお知らせします。他のキャリアについては、ネットにある記事を参考にしてください。また、秋葉原のみで計測しましたので、全域の5Gサービスの性能を表しているわけではないことをご注意ください。
測定ツールは、「ドコモスピードテスト」と「Speedtest」を用いました。測定場所は、いちおうドコモのエリア地図を見て5Gのエリアの記載がある秋葉原駅東側の首都高沿いです。ただ、計測途中にしばしば、5G⇒4Gに移行してしまう事例がありましたので、測定の最初から最後まで5Gと表示されたものだけ5Gのデータとしました。

表を見てお分かりの通り、確かに5Gの方が少し早いかもしれませんが、現在、LTEもかなり早くなってきており、他の多くのユーザが一緒に使っていることを考えると、それほど変わらないのではないか、と思われるような結果でした。
これは、ドコモの吉澤前社長が、「なんちゃって5G」では5Gの本来の性能を発揮できない、といった結果のあらわれなのかもしれません(そこまで言ったのならiPhone12には28GHzを実装してほしかった)。

これで、この記事を閉めようと思ったのですが、念のため、別日に再度該当場所(まったく同じ場所ではなく50mほどずれた場所)に行って調査したところ、これぞ5Gという結果が出ました!
(なお、LTEの測定は、iPhone11は使わず、iPhone12の設定を、モバイルデータ通信を「4Gのみ」にして測定、に変更して測定しました)。

何と400Mbps超えです。実をいうとサブ6の周波数をすべてアグリゲーションして利用すれば、もっとスピードが出るはずなのですが、とりあえず私の経験に基づくと、実環境でLTEは200Mbps程度が最大だったものが、最新の端末で、2倍以上のスピードが出ることがわかりました。

是非皆さんも最新端末で体感してみてください。ちなみに本日の速度測定によるデータ通信量はたった20~30分で7GBに達しました(今はキャンペーン中でパケット代無制限なので問題はありませんが、もし例えば5Gギガライト契約だったら1日で終わってました)。

ドコモスピードテストについて

最後の表で、Speedtestは400Mbps以上の数値を表示しているにもかかわらず、ドコモスピードテストは200Mbps程度で頭打ちになっていました。これはたぶん、このアプリが5Gに対応していないからだと思われます。というのも、下図にある測定履歴を見ればわかる通り、

測定結果は「5G」であるにもかかわらず、表示は「3G」と記載されています。おそらくこのソフトウエアは「3G」または「LTE」しかなかった時代に作られていて、「LTE」でなかったら「3G」と表記する作りになっているのではないかと思われます。

サービスがスタートしたのは3月ですが、早々に5G対応に更新されることを望みます。

最後に

今回は鳴り物入りで導入されたiPhone12の5Gのサンプル性能を調べてみました。評価場所としてはもっとも5Gの高速性が取得できる屋外エリアとしたのですが、何とか5Gの優位性を測定でき、新端末を買った価値が出たのかなと思います(実際どういったときにメリットがあるのかはわかりませんが)。

実は並行して公衆Wi-Fiの速度も測定していたのですが、そもそも屋外エリアで満足に使えるところは少なく、コンビニの漏れ電波で通信できる場所もあるのですが、測定すると良くて10から20Mbpsくらいでした。屋外を対象としたWi-Fiエリアであれば結果は違うかもしれませんが、通常はLTE/5Gに高速性では勝負にはなりません。

今回、測定結果は出しませんでしたが、コンビニや喫茶店など建物の中に入ると、LTE/5Gも100Mbps以下に落ちてきます。その屋内エリアがWi-Fiスポットの場合は、同じくらいの速度になる場所も出てくると思います。ただ、Wi-Fiの場合は、古い方式(例えば802.11n)がいまだに使われていたり、バックホールが廉価なベストエフォート回線が使われているなど、最新の性能が必ずしも提供されていない場所が数多く存在するので、このあたりを何とかしないといけません(無料サービスなので設備更改原資の確保が必要ですが)。

新しい料金プラン(20GBで2980円/月)がドコモブランドで提供され、他キャリアサブブランドを含めて安価なプランに移行する人が増えると思われますが、速度測定時のパケット量を見ても明らかなように、5Gはパケットを消費します。月末になるとWi-Fiスポットを探しまわる「Wi-Fi難民」は、今後も増えていくのではないでしょうか。そういった意味で、公衆Wi-Fiの価値は継続していくものと思いますが、Wi-Fiのメリットを活かすためには、公衆Wi-Fiの品質評価と、設備更改を前提とした性能向上などを今後も継続的に進める必要があります。


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