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海外情報
Wi-Fi Allianceが「Wi-Fi6E」の認定プログラムを開始

岩本賢二

 

皆さんが実感している通り、Wi-Fiは世界的に急速に普及したため、周波数帯域の逼迫が問題になっています。そこで、米国FCCでは2020年4月23日にいち早く「6GHzの帯域全体(5935MHz~7125MHzの合計1.2GHz)をWi-Fiに開放する」ことが全会一致で決まりました。

これは以前のメルマガでもお知らせした通りです。帯域の開放にあたり障害となる既存のシステムとの共有を実現するために、AFC(Automated Frequency Coodination)システムのように革新的なシステムの導入も始まります。

こうしたなか、ついに2021年1月7日、Wi-Fi Alliance(本部:米国テキサス州オースティン)は「Wi-Fi6E」の認定プログラムを開始しました。これは6GHzの利用が世界で本格的に開始されるようになったことを意味します。

Wi-Fi6Eはこれまで最新だった「Wi-Fi6(IEEE802.11ax)」に、6GHz帯を利用可能にする拡張(Extended)のEを加えたものです。

基本の動きはWi-Fi6と同等であるため、OFDMA、MU-MIMO、TWTなどが実装されています。Wi-Fi6Eでは6GHz帯が利用可能になったことで、なんと160MHzという非常に大きな通信チャネルを7チャネルも利用できるようになります。また、Wi-Fi6Eの認定プログラムにはWPA3TMによる暗号化プロトコルも含まれており、これまでWi-Fiで懸念されていたセキュリティの問題が完全に払拭されることになり、企業向けにさらに導入が進むことが期待されます。

Wi-Fi業界では今回の認定プログラムの開始は非常にインパクトがあり、6GHz対応製品の開発競争が加速しています。メーカー間の相互接続性が保証されたWi-Fi6E製品が各社からリリースされることになりますので、今年の1月11日から開催されるCESにおいて、関連の発表が各社からなされることが予想されます(メルマガ発行時点で明らかになっていると思われます)。

 

世界の流れとしては、米国、韓国、チリで6GHz帯の1.2GHzをWi-Fi向けにすでに開放しました。ブラジル、中南米なども今年後半には開放の予定です。英国はすでに2020年7月に6GHzの前半の500MHzを開放し、EU全体では2021年第2四半期に6GHzの480MHzが開放される予定となっています。世界中で、本年中に6GHz帯の開放が開始されるため、Wi-Fi6Eは急速に普及していくことが予想されます。

台湾のASUS社はWi-Fi6E対応ルーター「ROG Rapture GT-AXE11000」(実売価格5万円程度!)をリリースしており、11Gbpsの通信速度を謳っています。今回のCESでは他メーカーも発表もあると思われます。

Wi-Fi6Eの登場により1.2GHzという膨大な帯域を追加でき、これまで懸念とされていたセキュリティ問題、同時接続問題など多くの問題を一挙に解決するため、Wi-Fiは今後20年間の無線通信分野において、非常に大きな役割を果たすことになるはずです。

一方、Wi-Fi6EのベースとなったIEEE802.11axの次の規格として「IEEE802.11be(Wi-Fi7)」の策定が進んでいます。このWi-Fi7は320MHzチャネルの利用が可能となり、6GHz帯を必須とする規格となります。6GHzを開放しないことはWi-Fi7の利用が不可能であることを意味し、どの国でも6GHzを開放をせざるを得ないことが明白です。

日本でも世界からは少し遅れてですが、6GHz帯開放の議論が行われてきています。しかし、6GHz帯の既存利用者からはその開放について懸念が表明されており、現実的には2022年からの開放となりそうです。既存利用者との交渉が長引けはさらに遅くなってしまい、日本は世界から大きく置いていかれることになってしまいます。

Wi-Fiは人類が最初に手に入れた全世界共通の通信システムと言っても過言ではないでしょう。どこでも使える世界通貨のような役割を果たしており、各国の事情に関わらず世界的スケールで拡張と更新が継続され、使われ続けていくでしょう。

こうした歴史の大きな流れの中で、新技術(AFCなど)による干渉回避が国際的に証明されているにも関わらず、古い技術にしがみつき、すでに稼げなくなった既得権益分野に縛られ常に後手になるような状況は、日本の通信技術の発展や経済に大きなハンディキャップとなっているのではないでしようか。

 

参考:
Wi-Fi Alliance
https://www.wi-fi.org/news-events/newsroom/wi-fi-alliance-delivers-wi-fi-6e-certification-program
CES
https://www.ces.tech/


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