ビジネス情報
5GiPhoneで5GとWi-Fiを使ってみて
一般社団法人 無線LANビジネス推進連絡会 顧問
小林忠男
5G対応のiPhone12を入手しましたので、外出の都度、どこで使えて、どのくらいスピードが出るか、いろいろな場所で確認してみました。今回は、私のiPhone12の使用感についてです。
5GiPhoneでWi-Fiを使う
iPhone12がサポートするWi-Fi規格は、図表1のようになっています。
図表-1
東京駅・丸の内界隈、新宿都庁前、立川ドコモショップ、立ち寄ったカフェ等で測定したWi-Fiのスループットはまとめると次の通りです。
① 最高速度は、立川ドコモショップでした。下り(ダウンロード)は180Mbps、上り(アップロード)は25Mbps。
上りについては25Mbps以上のスポットもありますので、参考まで。
② 平均的スループットは、多くのスポットで、下りが10から50Mbps程度、上りせいぜい10Mbps程度。
この10年間で公衆無線LANのスポットは飛躍的に増えたと感じます。カフェやホテルは言うまでもなく、デパートや居酒屋でも使えるようになりました。また、公衆無線LANスタート当時には考えもしなかった、新幹線、飛行機、バス、地下鉄、船等の移動中においてもフリーWi-Fiがつかえるようになりました。
ただし、公衆無線LANのスポット数は増えましたが、平均的スループットが、ここ数年高速になった感じがしません。
スマートフォンのWi-Fiは高速化した規格に対応しているにも拘らずインフラ側の高速化がなされていないためだと思います。Wi-Fi規格は図表-1にもあるように、802.11b→a/g→n→ac→axと高速化が図られてきましたが、それにあわせたインフラ側の更改が行われていないのではないでしょうか。
端末とインフラの規格の世代ギャップが長く続いているように感じられます。家庭やオフィスの場合は機器の世代間ギャップは自己責任ですが、公衆無線LANのビジネスモデルは多くの場合、B2B2Cになっているので基本的にはビジネスとしてコストを負担しているスポットオーナーとそのお客様の利便を考えていないことになります。「とにかくWi-Fiスポットを増やそう」という時代から「如何に充実したWi-Fiスポットを提供するか」という時代になっています。コロナ禍でのWi-Fiの位置付けが高まっていることも考えて、真剣に考えなくてはいけない問題だと思います。
5GiPhoneで5Gを使う
次に、5GエリアでのiPhone12の使用感についてです。
総武線荻窪駅から秋葉原駅までのLTE、5G、Wi-Fiのスピードテストの結果は、
①LTE 全区間快適に通信可能 下り10~100Mbps 上り 5~50Mbps
②5G 中野駅、新宿駅、水道橋駅近辺になると一瞬5G表示になるもスピードテストは一度も完了せず4G表示に切り替わってしまう
③Wi-Fi 中野駅等、少なくとも5駅でスピードテスト完了 上り・下りとも 数Mbps~50Mbps
走行中に駅近辺等で5G表示になるので測定を開始すると、直ぐに4Gに切り替わって、移動中は5G表示のままで測定を完了することは出来ませんでした。走行中でも4G(LTE)はほぼ完ぺきに動作しているので、走行中に一瞬5G表示なってもほとんど意味がないと感じます。
日を変えて、新宿の都庁前で調査しました。
東京都庁前の通りの図表-2に示す斜め線の間が5Gエリアになっています。
図表-2
5G基地局設置場所は図表-3、4、5のように設置されています。
図表-3 | 図表-4 | 図表-5 |
図表-6は新宿駅方向で、京王プラザの先の黒く見えるトンネルまでは5Gエリアになっています。図表-7の右手の茶色のホテルまで5Gエリアでした。
5Gエリア内でのスループットは図表-8、9の通りで、最大500Mbps程度で1Gbpsは出ませんでした。
図表-6 | 図表-7 |
図表-8 | 図表-9 |
基地局の高さが地表からあまり高くないこともあって、ミリ波より電波が飛ぶといわれているサブ6でも5G表示となる電波の到達距離はせいぜい200m程度でした。従って、現時点では使えない28GHz帯ではエリアはさらに狭くなると思われます。
以上のエリア、また他の多くの場所でも、5G表示なのに測定中に4G表示になってしまう現象は、専門家によると「5Gの電波は届いているが高速走行や歩行中では5Gの電波が不安定になるため、電波が安定している4Gで通信をした方が安定かつ高速の通信が可能なため4Gに自動的に切り替える」とのことでした。
やはり問われるサービスとコンテンツ
これから5Gのエリアは急速に増えて行く計画だと思いますが、現時点では日本の首都東京でも使える場所は余りにも少なく、Wi-Fiスポットを探すほうが遥かに容易だと思います。
さらに気になるのは、たとえ1Gbpsの超高速通信が出来たとしても、そのスループットに見合うサービス、コンテンツが現時点では、私が知る限りではまだ出ていないことです。
5Gにおいても、Wi-Fiと同様に、5G対応のスマートフォンはどんどん販売されるようになり、テレビやマスコミで盛んに宣伝されていますが、端末はあるけどインフラが少ない、端末の最高のパフォーマンスとサービスにギャップが存在する問題があります。
携帯電話の料金値下げが大きな話題になっていますが、料金とサービスはいうまでもなく一体的な密接不可分のものです。
誰もが納得のいく料金体系になっても、サービスエリア自体がどこでも使えるようになっていなかったら、そのサービスの意味は何なのかということを真剣に考えないといけないのではないでしょうか。
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