中国の5GとWi-Fi、その最新動向
慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス総合政策学部 華金玲
中国のモバイル/ワイヤレスの最新動向について、中国情報通信研究者の華金玲氏にレポートを寄せていただきました。
周波数割り当て
5GやWLANなどについて、2021年6月1日に中国情報通信行政の最高部門である工業情報化部(MIIT)から『工業インターネットとIoT無線周波数使用指南(2021年版)』が公布された。
指南では、「公衆移動通信」と「専用移動通信」の表現を用いながら、
「工業インターネットとIoTの遍在化・個性化・オーダメイド化しつつあるニーズに応えるため、多種多様な応用シーンと周波数資源の合理利用を図るために、5G公衆移動通信網をメインとして利用し、その他をサブとして工業インターネットとIoT業務の展開を奨励する」としている。
(1) 公衆移動通信には2G、3G、4G、5G、NB-IoTとeMTCが含まれ、MNOが公衆移動通信帯域を使用する場合は、国家無線電管理部門にて審査し、許可する。MVNOが公衆移動通信帯域を使用する場合は、帯域を申請する必要はない、とある。
(2) 専用移動通信とWLAN用帯域については、いずれも公布のあった現行帯域のみの発表であった。専用移動通信帯域を使用する場合は、帯域使用計画に沿って国家或いは省地域無線管理部門に申請し、許可を受ける必要がある、とある。
専用移動通信には具体的に以下の4つ挙げられた。
・230MHz(電力・ガス・防空・水道等関連部門用)
・1400MHz(電子政府・公共安全・社会治安・危機管理等部門用)、基本的に省無線管理部門に申請する。
・1800MHz(交通・石油等部門用)、基本的に省無線管理部門に申請する。
・5900MHz(LTE -V2Xをベースとしたインテリジェントコネクテッドカー用)、原則的に国家無線部門に申請するが、内容によって省無線管理部門も可とする。
(3) WLANには、2400MHz、5100MHzと5800MHzが含まれている。
・2400MHz(2400−2483.5MHz)、5150-5350MHz(屋内のみ)うち5250-5350MHz帯域はDFS機能付きのみ可、5725-5850MHz
この指南は2020年から要請が次第に高まってきた、5Gプライベートネットワークやローカル5G類似サービスへの専用帯域の交付要請に答えた形の政策的指示であると、筆者は考える。
6月1日に公布されてから、中国の業界からはMIITがドイツ・日本と韓国のようなローカル5G専用周波数の検討はしないことを意味しているのではとの見方が多いようだ。
2.5Gミリ波の計画
◆5Gミリ波計画
中国ではミリ波について少しずつ情報を公開してきた。
IMT-2020(5G)推進チームは、5Gミリ波通信のテスト計画を以下3つのフェーズに分け、それぞれ重点的に検証を行うとしている
参照 https://5g.sfc.keio.ac.jp/?p=976
(1) 2019年8月〜12月にかけて5Gミリ波主要な技術とシステム特性
(2) 2020年にはミリ波基地局と端末の機能、性能と相互操作、高周波数と低周波数間の協調ネットワーク
(3) 2020〜2021年は典型的な利用場面での応用
◆5Gミリ波周波数について
2016年12月、中国最初の5G周波数白書を発表している。同白書では、以下を5G用として推薦されている。
(1)6GHz以下:3.3〜3.6GHz、4.4〜4.5GHz、4.8〜4.99GHz
(2)6GHzより高い周波数帯域:24.25GHz〜86GHzの周波数帯域
特に24.25-27.5GHz(初期5Gの「パイオニア」帯域として使用)、
31.8-33.4GHz、37-43.5GHz
2017年6月8日、工業情報化部によるミリ波周波数利用意見募集があり、2017年7月14日には、24.75-27.5GHz と 37-42.5GHz 周波数帯域を5G用として決定した。
◆5Gミリ波の2022年冬オリンピックへの準備
2021年5月21日〜22日、米クアルコムの「Qualcomm China Tech Day 2021」が北京で開催され、初日にZTE、中国聯通、クアルコムとTVU Networksが26GHz(n258)帯域での8K高精細映像の超高速伝送を実現したと発表し、デモを展示した。
今回のデモは、IMT-2020(5G)グループと中国聯通の技術指導の下で実施され、26GHzミリ波周波数帯と900MHz LTE周波数帯の二重接続技術が採用され、ミリ波アップリンクピークが930Mbpsに達したという。
ZTEが5Gミリ波基地局を提供し、TVUネットワークの5GマルチネットワークアグリゲーションルーターをQualcomm Snapdragon™X555GモデムとQualcommQTM527ミリ波アンテナモジュールを備えたCPE型のテスト端末を介してデモを実現した。
ミリ波接続では、リアルタイムで収集された8Kのビデオコンテンツが5Gミリ波アップリンクを介して送信され、安定したリターンを実現し、最終的に受信側で正常に受信および再生されたという。
中国にとって、今回の北京冬オリンピックは科学技術のフルー活用を企画した一大イベントであり、世界に中国テックをアピールする舞台となるととらえている。既に5Gによるスタジアム内のスマートアングル体験ステーションなどを通じて宣伝している。
Wi-Fi6の実用例
2021年6月5日、MIITより「Wi-Fi6がスマート生活をもたらす」(作者:工業情報化部 苗福師)と題する記事と関連データがあった。以下、抜粋である。
中国移動・中国電信・中国聯通が2020年5月よりギガビットWi-Fiネットワークを起動し、Wi-Fi6新業態が急速に進んでいる。2020年Wi-Fi6が中国での市場規模が2.1億ドル、2021年にはさらに拡大し、4.7億ドルになる見込み。Wi-Fi 6にはOFDMA、1024-QAM、MU-MIMO、TWTなどの革新的技術が使用されている。
通信事業者の2021年計画では、中国移動のホームゲートウェイの集中調達では、Wi-Fi 6機能をサポートするゲートウェイデバイスは1000万ユニット。中国電信はWi-Fi6機能をサポートするゲートウェイを1400万ユニット。 Wi-Fi 6業界サプライチェーンでは、市場とユーザーが徐々に成長してきており、通信事業者がその中で重要な役割を果たしている。
5Gの壁貫通能力は弱いため、屋内においてはWi-Fi6が5Gカバレッジを補完するものでなければならない。したがって、5GとWi-Fi 6は長期間共存し、補完し合う存在であり、5Gは主に屋外をカバーし、Wi-Fi6は主に屋内をカバーする。
『中国聯通Wi-Fi6技術白書』もコストに敏感な利用シーンなどにおいてはWi-Fi6の成長空間が大きいとしている。
◆Wi-Fi6実用例:大学キャンパス
2021年現在、大学キャンパスではHUAWEIがWi-Fi6 APで浙江大学内での無線ネットワークを構築し、10.75Gbit/sの最高速度と、AP当たり1024のエンドユーザー接続を実現している。
◆Wi-Fi6実用例:スマート医療
浪潮ネットワーク社がOFDMAを用いて重症患者介護、急診救急での無線ネットワークの構築を実現している。MU-MIMO技術で遠隔ビデオ診察などの映像系伝送も実現。
◆Wi-Fi6実用例:スマートホーム
ZTEがWi-Fi6モデム、カメラ、スマートチャイムなどスマート端末を数多く発売している。Wi-Fi 6対応ZXHN E1620モデムは160MHzの帯域幅を有し、ギガビットに近い壁通過力と180°折り畳み角度アンテナ付属している。400万画像のスマートカメラZXHN K720は庭、店舗、デパート、養魚池、果物畑の様子をリアルタイムで把握可能。1080P高画質のスマートチャイムZXHN K310が玄関前の様子を常に把握可能、来客とのビデオ通話も可能。
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