ご挨拶
Wi-Bizの活動報告と今後の方針について
~ ポストコロナの新たな方向性について ~
(一社)無線LANビジネス推進連絡会 会長 北條 博史
「一般社団法人無線LANビジネス推進連絡会」として2年目の活動を終えました。2020年4月から2021年3月まで初めての年度通しの活動となりましたが、新型コロナウィルスの影響で、残念ながら年度計画とは大きく異なる一年となりました。
新型コロナによる緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置などにより、飲食店やカラオケの営業自粛やイベントの自粛など、多くの不自由な生活を余儀なくされた一年でしたが、一方で、在宅勤務の推奨により、Wi-Fiの重要性も高まった一年でした。ここでは、昨年度一年間のWi-Bizの活動内容をご報告するとともに、コロナ禍における今後の方針について考えを述べたいと思います。
第2期(2020年4月~2021年3月)の活動報告
一般社団法人になって2年目の1年が終了しましたが、第2期は新型コロナの影響により、集合形式の会議がすべてテレワーク型となり、進め方が大きく変わりました。Wi-Biz事務局でもそれに対応してテレワーク中心の運用に移行しました。総務省受託案件については昨年と同様の案件を受注することができ、かつテレワークへの移行により諸経費を減らすことができたため、結果として、一般会計と特別会計(収益事業)のいずれも黒字化することができました。
コロナ禍における活動内容について
新型コロナ感染拡大で、在宅勤務が推奨され、会議やセミナーの開催はテレワーク型が基本という状況に一気に移行しました。テレワークでは、PCにしろ、スマートフォンにしろ、Wi-Fi接続での参加が必須となり、Wi-Fiの通信環境があらためて見直されることとなりました。
特に自宅からのテレワークの際に、家庭の通信環境が問題となり、古いWi-Fiルータを使っている人や、光ファイバが導入されていない人、さらには複数人が同時にテレワークする際などで会議の品質が低下するなどの課題が出てきました。
Wi-Bizでは年度当初よりテレワークへの移行を進め、理事会、各委員会をはじめとして、社員総会や各種セミナーなどもすべてオンライン開催に移行しました。
その結果、交際費や、会議費、旅費交通費などがほとんどゼロになりましたが、逆にWebexやZOOMなどの会議システムのコストや、会議を運営する事務局のコストなどが増加することになりました。
テレワークのセミナーを従来の集合形式のセミナーと比較すると、テレワークは、セミナー後の名刺交換などができないというデメリットはありますが、参加へのハードルが低くなるため、より多くの参加者があることがわかりました(さらに事前周知期間が短くても集客率は変わりません)。
周波数獲得に向けた取り組み
昨年度の大きな活動のポイントとして、802.11ahとWi-Fi6Eの周波数獲得に向けた取り組みがあります。802.11ahについては、IoT用周波数である920MHzでの利用承認、さらには新周波数の割り当ての取り組み、Wi-Fi6Eについては、6GHz帯の無線LANへの割り当てなど、さらなるWi-Fiファミリーの利用拡大にブーストがかかる活動です。802.11ahについては、渉外・広報委員会を中心として802.11ah推進協議会(AHPC)と連携した取り組み、Wi-Fi6Eは技術・調査委員会の取り組みであり、第3期に継続して進められています。
受託案件(収益事業)について
総務省の関係機関より、直接契約及び再委託契約により初年度と同様の受注をさせていただきました。受託業務については、Wi-Fiの業界団体としての特徴を生かせるような調査案件、普及促進案件であり、会員企業の知識や経験をうまく活かせる内容となりました。
このコロナ禍にあって、Wi-Bizの関連メンバーの皆様に直接的、間接的に様々なご協力、ご支援をいただいたことにより、受託業務(収益事業)はすべて、無事に完了することができました。
ご発注いただいた総務省関係各位、再委託を受けていただいたWi-Biz会員の皆様、さらにはWi-Bizのスタッフの一員としてご協力、ご支援いただいた皆様に、あらためて御礼申し上げます。
第3期(2021年4月~2022年3月)の活動に向けて
第3期は引き続き新型コロナ蔓延の状況でスタートすることになりました。今年度の活動計画は、テレワークを中心とした活動であった昨年度の結果をベースに作成しました。ワクチンの普及により集合形式の会合も徐々に復活していく可能性もありますが、テレワークのメリットをうまく活用した形に移行していくものと思います。
ポストコロナ(ニューノーマル)の新しい生活様式の実現に向けて
コロナによって一気に在宅勤務に移行した会社も多いものと思いますが、ポストコロナ(必ずしも在宅勤務が必要ではなくなったタイミング)における生活様式はどのようになるのでしょうか。
テレワークについてはさらに洗練されていき、単に自宅からテレワークということではなく、レンタルスペース(ホテルの一時利用なども含む)の利用やシェアオフィスの利用もあることと思います。さらに、オフィスも、テレワークの増加により出社社員が減少することが想定され、フリーアドレス化によるオフィスの縮小やサテライトオフィスの活用などが進むと想定されます。
これまでのようなオンプレ(オフィス内)のサーバとオフィス内のPCで業務を行うという従来型から、まさにクラウド型のオフィスへと移行することにより、社員の勤務形態の自由度が大きく拡大していくものと思います。
一方で、テレワークによって、分散的に社員が配置されることから、これまでのFace-to-Faceの社内コミュニケーションが減少するため、それをカバーしていく新しいコミュニケーション手段が必要になると思います。WebExやZOOMなどのTV会議ツールもその一つですが、LINEやSLACKのような手軽に利用できるコミュニケーションツールの利用が拡大するものと思います(さらに全く新しいツールが出現するかも)。
いずれにしても、いつでもどこでも通信ができる環境を整えることが必要で、通信の重要性がさらに高まると考えられます。
今後のプライベート無線について
802.11ahの920MHz帯利用について、いよいよ総務省の作業班が開始され、割り当てに向け秒読みとなりました。Wi-Fi6Eについても、6GHz帯の割り当てに向けて着実に進みつつあります。昨年サービスを開始した5G/ローカル5Gについても、過度な盛り上がりも落ち着き、これから真価を発揮するフェーズに入ってきました。Wi-Fi6は大規模ユーザーを先頭にすでに普及が本格化しており、5Gに匹敵する高速で効率性の高いWi-Fiの真価を発揮する局面に入ろうとしています。
一方、テレワークの進展により、人口集中する都会だけでなく地方の重要性が高まり、地方の高速通信環境をどのように整備していくのかが重要になります。このような環境の中、どのエリアにどのような無線方式を選んでいくのか、エリアオーナーや利用者の要望に合わせたプライベート無線の構築が重要になってきます。
Wi-Bizとしては、Wi-Fiファミリーをベースとして5G/ローカル5Gを含めた最適な無線ソリューションが提供できるように、今後いろいろな取り組みを進めていきたいと考えております。
今後とも会員の皆様の支援ができるよう、努力してまいりますのでご協力のほど、何卒よろしくお願いいたします。
最後に(働き方改革の推進に向けて)
Wi-Fiの活用とは直接関係ありませんが、働き方改革について一言コメントを述べます。
働き方改革を行う目的は、一人ひとりの意思や能力、個々の事情に応じた、多様で柔軟な働き方を選択可能とする社会を追求していくことで、「労働者にとっての働きやすさ」を実現していくことにあります。
新型コロナによって、大企業中心に在宅勤務に一斉に移行したのですが、これにより、在宅勤務のメリットやデメリットが明らかになり、在宅勤務に対してのハードルが大きく下がりました。これ自体は、働き方改革にとって大きな追い風となりましたが、一方で迫られての極端な移行だったため、在宅勤務が必ずしも働きやすい環境ではないと感じる人たちにとっては、働きにくい環境となっています。
働き方改革は、あくまでも、働く個人にとって働きやすい環境を構築し、「ライフステージに合った」仕事の仕方を選択しやすくなることです。
つまり、例えば、ポストコロナの環境において、在宅勤務、サテライトオフィス、通常勤務から個人が自由に選択し、また休暇についても、帰省や旅行とそれに付随した遠隔地からの在宅勤務など、個人の嗜好により選択できるような仕組みが必要になります。
働き方改革はまだまだこれから先は長いと思いますが、このような取り組みを進めることにより、結果的に、企業にとって、労働者の確保や労働者の生産性の向上が図られていくものと思います。
このプロセスの中で、通信環境の構築と各種コミュニケーションツールの開発、そして新たな文化の推進は、通信関連事業者の責務だと思います。
■Wi-Biz通信(メールマガジン)の登録はこちら