海外情報
米国で「AFC」技術がオープンソース化
岩本賢二
6GHzアンライセンス化とAFC
「AFC」というキーワードをお聞きになったことがありますか? Automated Frequency Coordination:自動周波数調整)という意味です。米国で、このAFC分野で、大きな動きがあったので報告させて頂きます。
数年前から話題になっている「6GHzアンライセンス化」は米国の通信市場で、大きな流れになってきています。アンライセンスバンド化された6GHz帯の1200MHzに及ぶ広大な周波数帯域は5Gシステムと次世代のWi-Fiにとてつもない通信容量を提供してくれます。
しかし、そのためには、背景に多くの問題があり、これらを解決しなくてはならないのです。例えば、既存で周波数割り当てを受けていた利用者がそれを使えなくなってしまうというケースです。
そこで、アンライセンス化しても既存利用者をピンポイントで守るために生まれた技術がAFCなのです。
そもそも6GHz帯の周波数というのは地上利用において遙か彼方に電波が飛ぶということはありません。それほど飛ばない電波なのです。そこで、その特性を利用して、既存利用者が利用している「場所と時間」のみアンラインスバンドの利用を停止すればそれ以外では、既存利用者に影響を与えずに利用することが可能ということになります。
Wi-Fiのケースで言えば、Wi-Fiアクセスポイント(AP)の中にAFCソフトウェアを入れておきます。既存利用者の利用場所や時間は既にサーバーに登録されています。APは電波を利用する前に、自分の場所と利用するチャネル・時間などをサーバーにアップロードします。サーバー側で両システムが時間的エリア的に衝突すると判断すれば、AP側に非許可の回答を出します。その結果、APはチャネルを変更するなどして、既存のシステムに影響を与えない条件で運用を開始することが可能になります。
AFCのコンセプトダイヤグラム
「Open AFC Software Group」 がAFCをオープン化
無線の世界は歴史的には遠くまで飛ぶ低い周波数のシステムが先に発展してきました。そのため、日本国内のどこかで利用される周波数は遠くのエリアまで影響を及ぼすために、国全体のエリアで周波数を管理する必要があり、既存の法律はそのように制定されてきています。
しかし近年、近距離無線通信が普及してくると、それらは高い周波数を利用するため電波は遠くへは飛びません。その場合、どこでどの周波数を利用しているのかを上手に管理さえすれば、同じ周波数を異なるエリアで安全に運用することが出来るようになります。AFCはWi-Fiに限らず、マイクロ波中継無線システムなど様々な無線システムに利用することが可能です。
しかしこのAFCを実現するにはメーカー側の開発負担が増えることになってしまいます。AFCを開発し、それをそれぞれの基地局に組み込む必要があるからです。この負担を軽減するためにFacebook社が主導するTIP(Telecom Infra Project)は新たに「Open AFC Software Group」を発足しました。彼らはAFCの仕組みを開発し、それをオープン化することで、広く普及させる選択をしました。このOpen AFC Software GroupのメンバーはFacebook、Cisco、Broadcomです。
発表されたプレスリリースによると、米国、EU、カナダ、ブラジルなどは既に6GHz帯をアンライセンス化が決定もしくはその方向に調整が進んでおり、Wi-Fi Allianceの予測では2025年までに6GHzWi-Fiが世界経済に対して5275億米ドルの経済的利益をもたらすと発表しています。
このAFC技術を応用すれば、単に既存利用者との衝突を防ぐだけではなく、周辺に利用者の少ない屋外などでは出力を上げて、さらに広範囲をカバーするサービスを安全に提供することさえ可能になります。
日本でも現在6GHzの開放に向けて協議が進んでいますが、AFC技術の存在について認知度が低く、既存利用者による猛烈な反対があるようです。周波数は物理的な物で増やすことが出来ませんので、その時代の最先端の技術を使い最大限効率的に割り当て、利用すべきです。一部の既得権益者の主張よりも、電波法第1条にあるとおり「公共の福祉を増進」できるようにすべきです。
AFC技術の認知度が上がり日本でもオープンな利用が可能となれば、状況は一気に変わっていくはずです。
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