ビジネス&パートナーズ
現地訪問 ライブハウスのWi-Fi設置現場
超高速通信を可能にしたノウハウを見る
一般社団法人無線LANビジネス推進連絡会事務局 村上紗織
このほど、ボイドルーターシステムズ様が「ライブスタジオfireworksstudiosにWi-Fiを整備する」ということで、見学にお邪魔させていただきました。江副様にも同行していただきました。
*株式会社ボイドルーターシステムズの会社情報
https://www.voidrouter.co.jp/
ライブスタジオが求める要件に応える
Wi-Fiを設置した建物の外観と、光ファイバーが通っている電線
株式会社ボイドルーターシステムズの代表取締役、北條秀一様にお話を伺います。
――今回のWi-Fi整備について、ライブスタジオ側のご要望や条件はどのようなものだったのでしょうか?
北條 最大100名が収容可能なスタジオで、Wi-Fiを使ってライブの生配信をしつつ、会場にいるお客様がYouTubeを見たり快適にWi-Fiを使えるというのが条件でした。
――どうすれば、そんなことが可能になるのでしょうか。
北條 今回、小型ONUを使用しています。
江副 小型ONUは小指くらいの大きさなのに、めちゃくちゃ優秀ですね。
北條 普通はAP、ルーター、イーサケーブル、ONUと繋ぎますが、イーサケーブル無しで繋げるのでノイズが入らず直接減衰幅が少なくて済むので、回線の効率が良くなるのです。
それと、メンテナンス用のLTEをつけているので、光回線が遮断された場合でも外から入れて装置の動作状況の確認が可能です。回線が故障しているのか、装置自体が故障しているのか、簡単に分かります。
さらにONUが直装しているので、決まったタイミングで再起動させることもできます。ルーターもONUも再起動させることで可用性(ルーターの信頼度)があがります。
――我が家のWi-Fiがご機嫌斜めなときに業者に電話したら「電源入れ直してみてください」と言われて、実際にやってみると復活したのですが‥あれを機械自体がやってくれるということですか!
北條 そういうことです。365日24時間稼働して疲れて止まってしまうよりも、使っていないタイミングを見計らって再起動する時間を作っています。
――バックアップがしっかり整った万全体制ということですね。
――この黒い箱は、なんでしょうか(上の写真参照)。
北條 これはルーターです。オリジナル設定で、世界中でボイドにしかない中身になっています。
回線、機器、工事のトータル設計
――具体的にはどういう特徴がありますか。
北條 回線についてはメインでIPoE接続のDS-Liteを使って、PPPoEはサブ回線として使用します。通常、PPPoEは一般家庭や中小企業の回線で使われているのですが網終端装置の処理能力が原因で遅くなってしまっていて、そこをボイドルーターシステムズではDS-LiteというIPv6を利用してプロバイダーに直接繋げることで速度を速めています。
つまり、一般家庭で使用する経路とは別の経路を使うことで解決させています。
今回の事例でいうと、70人80人が一斉にYouTubeに繋いでも大丈夫な設計になっています。常にインターネットに繋がっている状態を維持しています。
基本的にはIPoE接続でIIJ側の回線と通信していて、ダメなときはバックアップとして自動でPPPoE接続してビッグローブ側の回線に切換わります。極力、インターネットを使える状況にしている、ということです。
――プロ用の回線を2回線も使って、早い方を常に使うという芸当ができるみたいで、それでめちゃくちゃ速いということが分かりました。
北條 2つともダメになったときのバックアップとして、さらにLTEもスタンバイしています。それなりの手立てをして、リモート面でもサポートしています。
江副 Wi-Fi自体はどんどん早くなってきていますが、その他の通信装置、例えばルーター、光ファイバー、プロバイダーを経由してやっとインターネットに出ているので、そのどこかが遅いだけでも速度が落ちてしまう。
しかし、利用者からみると「このWi-Fi遅い!」になってしまうわけです。手元ばかりを見てしまうという悲しい現状です。実際にはすでに光ファイバーより無線LANの方が速いのですが、回線が遅いことは社会問題に近いと言えると思います。そういうことを知っているボイドルーターシステムズが回線まで設計して、ストリームに耐えうる環境を構築しているということですね。
北條 トータルとしていかに良い状態の回線を使うか、高速のAPを使うか、高速のルーターを使うか、それらを組み合わせて超高速通信を実現している会社は少ないので、我々のような会社にお声がかかるということだと思っています。ネットワークインテグレーションをトータルで面倒みてくれるところはあまり多くないのです。
――リモートで管理する仕組み、回線を2重化しておくアイデア、マイクロティックが使えるというのは、なかなかできるお仕事ではないわけですね。
コロナ禍のライブ配信を支える
そして、初のライブ配信現場にもお邪魔させていただきました。北條様も立ち合われ、最後まで無事に配信ができたことを見届けておられました。
コロナ禍で思うように活動ができないなかで工夫して活動されるアーティストさんたちにとってもWi-Fiが必要不可欠な時代になっていることを実感しました。
Wi-Fiがそれぞれの用途に即して、システムを工夫して設置し構築する現場を見学させていただき、さらに久しぶりに生の演奏・パフォーマンスを見させていただくことができて、感動しました。会場には居られなくてもリアルタイムで配信をみることができるのは、この時代環境のなかにあってファンの方にとっても嬉しいことに違いないと痛感しました。
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