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トップインタビュー
エクシオグループ株式会社
代表取締役社長 舩橋 哲也氏
次の時代を見据え新社名と「2030ビジョン」
3セグメント事業でDXを進める

10月1日、「株式会社協和エクシオ」は「エクシオグループ株式会社」に社名を変更しました。舩橋社長に、社名変更の狙いと、これからの経営戦略について伺いました。

 

 

「グループ」に込めた思い

――このほど、社名を変更し、「新生エクシオグループが誕生しました。その狙いと今後の抱負をお聞かせください。
舩橋 私どもは1954年の創業になります。NTTの前身である日本電信電話公社からの仕事、特に通信関係のエンジニアリングが出発点です。そのときは電設事業がメインで、多くの小さな会社が集まってのスタートだったので、「協力・和合して電設を頑張ろう」という思いでの「協和電設」だったのです。
これが37年ほど続きまして、「電設だけではなく通信の発展に対応できるように仕事の幅を広げよう」ということで「協和エクシオ」という名前になりました。エクシオというのはラテン語で「みずから殻を破って外に出る」という、非常にいい名前でもあります。

――協和エクシオの社名にはすっかりなじんでいました。
舩橋 今年は協和エクシオで、ちょうど30年目の節目になります。この先、10年以上先を見たときに、エネルギーの分野、あるいはソフト開発も含めたシステムソリューションでもグループ全体として社会のお役に立つべきではないかということで、思い切って「エクシオグループ」に社名を変更しました。
「協和が取れたのか」とよくお聞きいただくんですけど、名前の親しみさを引継ぎ、協和の「協力・和合」を「グループ」に読み替えたと思っていただくといいです。

 

 

――これから、二段階、三段階先を見て行こう、という意気込みですね。
舩橋 そうなんです。これからはエネルギーの分野など、今までやれてこなかったところにも取り組んでいかなければなりません。弊社は、通信関連のエンジニアリング全般をやっているんですけど、特に強いのは土木と電気、それから交換機のソフトウェアの開発に携わっていたのでソフト開発も結構やっています。それらをコアに発展させ、都市インフラのセグメントを大きくしたいと思っています。それから、ソフトウェア開発の経験を生かし、これから時代はクラウドになりますので、システムソリューションの事業もさらに拡大させたいということです。
「通信キャリア事業」「都市インフラ事業」「システムソリューション事業」という3つのセグメントをバランス良く成長させたいというのが1つです。
もう1つは、ここ2~3年グローバルの仕事も急速に展開をしています。過去、グローバルで痛い目に遭ったこともあるんですが、本気でもう一度グローバルをちゃんとやろうということで、シンガポールに中間持株会社相当の組織をつくり、そこを拠点にしながらAPACを中心に事業展開をしています。10億・20億の世界だったところが、今は150億を超えるレベルまでまいりました。
お蔭様で連結売上は5500億円を超えるレベルになり、グループ会社数も100社ぐらいになってきましたので、まさにグループ会社一丸となって、これからの次のディケイドを目指そうという流れをイメージしています。中期経営計画では、2025年売上高6300億円を目標にしています。

――単に社名を変えたというより、新しい分野を開拓しながら戦略的成長を実現したいという思いが込もっているわけですね。
舩橋 若手を集めて、2年ぐらいかけて、将来どんな会社になりたいのかと知恵を出してもらいました。自分たちが、どんな会社で、どんなお役に立ちたいのかをイメージしようじゃないかと。その中で出てきた議論から、イノベーティブな仕事として新しい事業領域の拡大もやろうということでテーマを出しまとめています。

 

 

コロナ前にリモートワーク体制に

――この間、コロナ禍で大きな変化を強いられているわけですが、どういう影響だったのでしょうか。
舩橋 実はコロナ禍の前に、これからはクラウドのソリューションを使って仕事をしようということを始めていました。2020年2月に、テレワークに大きく舵を切った途端に、コロナが始まったのです。

――コロナが始まる前に、テレワークに切り替えていたのですか。
舩橋 そうです。パソコンを全部入れ替えたり、勤務形態も見直し、「本当にみんな、やるんだな。金が掛かるぞ。本当だね」と言ったら、みんなが「やる」と言うので、やり始めたら、ちょうどコロナになってしまったのです。

――それは、これからはクラウド時代ということで決められたのですか。
舩橋 古いやり方ではだめだ、どこからでも仕事ができるようにしたいし、紙をやめたいということです。「DXをやろう」という議論はずっとしていたのです。やはり、ITの力を最大限に使わないと、これだけ少子高齢になってきてしまうと仕事がやりにくいじゃないですか。ですから、若い人が少なくても効率良く仕事ができるなんてことを考えたら、抜本的に変えなければだめだということを感じたものですから。
いろいろ準備をして、みんなでリモートワークの体制をスタートしたら、とたんに3月からコロナになってしまいました。社員の皆さんも「社長はいろいろ言うけど、あれだけはよかったのではないか。これは当たった」と、言っていただける。
会議もそのときからTeamsですし、スマートフォンもTeamsがインストールされていますので、メールも当然見れるし、決裁もできるようになって、だいぶ進んできたと思います。世間並みに、普通になってきたということですか。

――コロナによる事業への影響はどうだったのでしょうか。
舩橋 コロナの発生状況はグループ会社のみならずビジネスパートナーの皆様も含めて、フォローさせていただいています。必要な物資、例えばマスクや消毒液なども、できる限り我々で準備してお届けしています。業界では早いほうだと思うんですが、職域の接種もやりました。だいたい接種者の3分の1ぐらいはビジネスパートナーで、その方々にも打っていただきました。私どものグループ社員を含めてご家族も、私どもに関係してくださっている方々に幅広く接種していただきました。

――コロナ禍でリモートといっても、通建事業ですから現場があるわけで限界がありますよね。
舩橋 2つあったと思います。1つはお客様から、「仕事は頼みたいけど、今は来ないで欲しい」というケースで、昨年のコロナの最初のころですか。1か月半から2カ月弱ですけれども、仕事を止めました。
もう1つは、インターネットサービスの開通工事等でNTTを含めて通信キャリアの仕事は必ずお客様のご自宅に行くわけですが、そういう方々からも「不安だ」と言われたので、それへの対応の問題です。

――お客様の宅内を訪問するということですね。
舩橋 コロナ禍ですから宅内を訪問すること自体が不安だということです。そこで、危険・インセンティブ手当みたいなものを考えたりもしました。

――それはつまり現場の力というか、現場で働く人の健康管理とか、そこが基盤的に大事だという判断ですね。
舩橋 そう思っています。

――1年たって、コロナ禍の経営への影響はどうだったのですか。
舩橋 仕事が止まったりもしたんですが、マクロで見るとそれほど大きな影響ではなかったんです。通信インフラの仕事をさせていただいているということで、仕事自体が余り切れなかったんです。通信なくしてテレワークなんかできないわけですし、5Gもスタートしましたから。我々にとってはコロナ禍であろうとなかろうと、インフラを支えさせていただくという意味では、お仕事をいただき本当にありがたかったと思います。

――経営的にはそんなに大きなダメージはなかったんですか。
舩橋 はい。結果的には19年よりも20年のほうが、成績が良かったんです。たまたま特需もありましたし、GIGAスクールとか高度無線(キャリア5G)等といったものがあったものですから、対前年でへこむというよりも着実な成長に見えたと思います。

新経営戦略とDX

――社名変更を機にしたエクシオグループの新経営戦略、その基本的な考え方と取り組みを教えてください。
舩橋 先に話しましたように、私どもは事業セグメントを3つ定義しましたので、それぞれの中にDXを活用して、「少ない人数でも効率良く仕事ができるように」を合言葉にしようと思っています。
都市インフラは、設計であればCAD、それを流通するBIM/CIM、そういうものを駆使する時代になってきているので、しっかり自分のものにしていくことが必要だろうと見ています。
都市インフラの中で好調なのがデータセンター事業です。我々は建築そのものはできませんけれども、中の特別高圧の電気・電力、ラック、空調を作ったりするところはできますので、データセンターという最先端の中で、お客様のご要望に対応して、短納期でいい品質のものを作る仕事には役に立っていくと思っています。

――データセンター分野は堅調で、得意分野のようですね。
舩橋 得意分野になってきたなということです。都市インフラのところでは電気・電力、データセンター、それから土木も無電柱化をはじめ、いろいろなシールド工法でのトンネルを掘るといった仕事は得意です。
また、オフィスを作ると必ず排水処理があります。当然地下になりますので、土木工程が出ます。トンネルを掘削するんですが、そういう特殊なところも得意なのです。通信のとう道の技術を持っているからです。
その技術を生かして上下水道を含めた排水、それから必要な大型のトンネル、JVを組んだりします。こういうものは意外と着実なんですね。
それから、最近は公共系でいいますと道路関係です。過去に作られたトンネルは、ものすごい数があります。トンネルもだんだん時代とともにメンテが必要ですから、これをやるだけでも相当の年限が掛かるといわれています。

――日本はインフラの老朽化が一つの象徴のようになっていますね。
舩橋 その分かりやすいケースがトンネルです。トンネルには通信もあるわけです。また、5G・4Gの基地局もある、中の電気のリニューアルもあるので、総合力が試されるケースなんです。こういうものは、我々の事業の幅出しにはうってつけだなと思っています。
さらに先を見るとエネルギーの分野だと思っています。1つはバイオマス、これは間もなく報道発表の予定ですが、2カ所、プラントを作ります。自家発電をして、再生可能エネルギーとして売電をさせていただきます。再生可能エネルギーの知見を溜めることと、木材なども近場で調達しますからエコになると思うんですよね。地元のお役に立ち、人の雇用にもつながり、再生可能エネルギーの供給にもなると思います。

――それは、新しい取り組みで、新産業創出にもなりますね。
舩橋 がんがんいけるかどうかはまだ分かりませんが、やっておかないといけないテーマだと思っています。
もう1つが太陽光、今までFIT制度で大型の太陽光発電をずいぶんやらせていただきましたが、これからはやり方が変わると思っています。今までは何ギガとか何メガという大きなものをドンと作るという方式でしたが、一通りそれが終わり、例えば戸建ての屋根の上だとか、学校、公共関係の屋根の上だとか、そういうところに太陽光を設置して、必要なら蓄電池も置いて、安定して使う。もし、いざ災害が起きれば、蓄電池からある程度の時間は使うこともできるような、環境に配慮したトータルシステムだと思うんです。
弊社は面白いことに、テスラさんの蓄電池を利用した工事なども受けているんです。そういう意味では太陽光を設置する、蓄電池を設置する、充電器などを設置する、一通り制御も含めてやれますので、ソリューションとしての貢献も期待できるかなと思っています。

――こうみてくると、「通建」という枠からはるかに広がっています。
舩橋 そうなりたいと思っています。特に洋上風力になりますと、僕らがプロペラを作ったりというのはできないと思うんですが、大型のプラントが出てくると、陸上に電力ケーブルを敷設しなければいけないんです。そうすると海の底からケーブルを立ち上げてくる、ランディングステーションといいますけど、小さな変電所をつくるとか、あるいは送電網に連結するために自営線と呼ばれるものですが、これも結構な大型工事になります。
そこには土木の力がなければだめなんです。先ほど申し上げたようにルートを決めて穴を掘ったりしますから、土木工事のノウハウがないとだめなんですね。
海底ケーブルを随分やらせていただいていますが、私どもが得意としているのは、サンゴ礁とかの下をくり抜く土木の技術を持っております。アメリカから最新鋭の機械を調達してやっているんですが、日本でも本当に数が限られている。
当たり前ですけど、電気のノウハウも必要、その両方持っている事業者は案外少ないと思います。

ワイヤレスは社会インフラに

――今、5Gが始まり、ローカル5G、Wi-Fi6、IoTに不可欠なLPWAなど、ワイヤレスがとても注目されています。この点、どう見ておられますか。
舩橋 通信キャリアの仕事を大きくいいますと、有線の仕事と無線の仕事があると思います。これだけモバイルの技術が発展してくるなかで、またコロナという影響もあり、どこでも仕事ができるような、あるいはどんな時にもサービスを受けられるという状況を作らなくてはなりません。そういう点では、無線の重要性はますます高まっています。もしも携帯電話のインフラに何かがあると大変なことになります。

 

 

――モバイル/ワイヤレスはもはや社会のインフラですからね。
舩橋 皆様にとって欠くことのできない基盤になっていると思います。
私は、通信は有線、無線の両輪で発展していくだろうと思っています。無線の良さはご存じのようにフレキシブルだし、取り扱いも自由でいいのですが、電波の帯域、電波の飛びという意味で、制約をどうしても受ける部分があると思うんです。ですから、より広帯域で技術は発展していくでしょうが、有線とセットで発展していくんだろうと思います。
これだけ携帯電話が広がっていて、さらにWi-FiあるいはLPWA、ローカル5Gという技術が登場し、お客様にとってプライベートなネットワークを、どう上手に実現するのかという時に、欠くことができないのは無線の技術の適切な活用ということになっているのではないかと思います。
日本は非常に光ファイバ網が発展していますから、光ファイバ網を使ってユーザーにつなぐところは無線という理想的な展開に向かっているのではないかなと思うんです。Wi-Fiを1つ取っても、かつての2.4GHz帯から5GHz帯も出てきて、さらにOFDMだったものがOFDMAまで来ています。最近、びっくりしましたのは、昔は64QAMはほぼ無理だろうといわれていたのが、1024QAMまで進んでいます。
それだけ技術の進歩がまだまだあるという意味では、我々は無線を扱う工事あるいは保守、設計も含めてですが、是非そこは力を入れたいと思っています。有線の経験値を生かしながら無線でも我々の存在感を出したいと思います。

運用ガイドライン、端末規格、導入事例など

――そうしたワイヤレス新時代のなかで、Wi-Bizの役割と期待についてお願いします。
舩橋 電波を利用することは、すごく難しい面があります。「飛び過ぎてもいけないけど、飛ばなくてもいけない」と。どうやって制御をしながら適切な範囲に電波を吹くのか、あるいは、いろいろな自然環境の中で電波の伝搬は揺らぐんだと思うんですが、そういうことも設計の上で意識しつつ、お客様が常にうまく使えるようにするということです。そのためには、安全で安心な運用の標準化だとか、規格を決めたり、正しい運用の仕方をいざなっていただくだとか、ガイドラインみたいなものも含めて出していただくことは、ものすごく重要だし、不可欠なテーマなのではないかなと思っています。
それから、利用できる端末の幅を広げていただきたいなと。これは本当に鶏と卵だと思うんですけど、携帯電話も二つ折りの昔の端末からスマホになって、格段に便利になったと思うんです。そういう意味で、いろいろな用途で端末が普及していけるように、いろいろな環境面、端末の規格や認証(サーティファイ)を受けて、日本でちゃんと使ってもいいですよというようなところまで含めて、規格や標準化などを促進していただいたり、情報を展開していただくというところが、僕はすごく重要かなと。
もう1つ我々利用者サイドでいいますと、DXといっても、どんなところに使えるというか、どんな事例があるのか、知り得ないケースが多いと思うんです。だから、「こういう使い方をこういうところにしたら良かったと思うよ」というようなことをご紹介いただくだとか、最後はサービスになっていくような事例でしょうか、そういうものをどんどんお教えいただけると、我々も新しいお客様に対してご提案できますので、非常に大きな期待をさせていただいております。

――北條会長、その点、いかがでしょうか。
北條 舩橋社長のように、トップの方が無線に理解があることはとても素晴らしいことだと思います。無線を使いこなすのに一番問題なのは、無線には制限があるということを認識することなんです。だから、何でもかんでも無線がいいんだと言っている人は本当は理解がない人だとも言えます。
無線の制約が技術進歩によって取れていったりすることもあるので、最新の標準化と技術の内容を掌握していかなければいけないわけです。Wi-Bizとしては、そういうものについては常にアンテナを張って、いろいろな情報を把握し、また提供していくということを心がけています。そのため、いろいろなセミナーを開催したりしております。
それから、端末のほうは手が出てないんですけど、日本の無線端末の一番の問題は技適なんです。1個1個取らなければいけないという、とんでもないルールがあるのと、それから周波数の使い方も「こう使うしか認めない」ということになっているのです。
事例紹介については、最近ですとフジテレビの元アナウンサーの笠井さんが、がんになられて回復されたんですけど、病室にWi-Fiがないから一度入院すると面会も今はできないので、孤立してしまう。そのときに友達とタブレットで話ができたのが、自分の回復の原動力になっているとおっしゃるんですけど、その働きかけがあって病院に向けて補助金が9月末まで出ていたんです。そういう内容を皆さんにもお伝えをしています。
また、この度、『プライベートワイヤレスネットワーク入門』を発行いたしました。今話題に出た、どのワイヤレスの方式をどうやって使っていけばユーザーは効果があるのかということが最先端の技術を中心に書いております。こういうものを出すということも、そういう1つのものになっていると思います。今後も引き続き、努力して参りたいと思います。

 


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