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活動報告
第15回技術セミナー「Wi-Fi6E」テーマにオンライン開催

一般社団法人 無線LANビジネス推進連絡会 大濱 裕史

 3月4日、技術・調査委員会主催の「第15回技術セミナー」がご登録者200名に上り、盛況のなかで開催されました。今回は、6GHz帯開放にむけて「Wi-Fi6E:無線LANの6GHz帯割当への期待と課題解決」をテーマに、2社のご協力を得てご講演をいただきました。その概要をご紹介させていただきます。

司会は、技術・調査委員会の小松直人委員長が務めました。冒頭、北條会長からのご挨拶では、1EEE802.11ah利用開始、無線LANの6GHz帯開放にむけて節目の年になるというお話をいただきました。
講演1は、「周波数開放が期待されているWi-Fi6E」と題して、日本ヒューレット・パッカード合同会社アルバ事業統括本部のプリセールスエンジニア、山田 雅之 様に行っていただきました。

講演1 Wi-Fi6Eの技術を分かりやすく解説

現在、日本国内での6GHz帯の利用開始にむけた準備作業が行われていますが、6GHz帯で802.11axの技術を利用する「 Wi-Fi6E」では、開放される広い帯域幅を活用して、ギガビットの高速通信と低遅延により、音声、映像、そしてAR/VRといったあたらしいサービスの利用環境を提供できる技術であることを、わかりやすく解説いただきました。

 

 

 

また、Wi-Fi6Eの導入にあたり、あらたに6GHz帯の無線局を実装してトライバンドを扱うため、高いスループットと安定的な通信品質を確保するために、電力やバックフォールを含めたネットワークの構成の観点で導入時のポイントをお話いただきました。導入や提案をご検討されておられる方々にとって大変有意義なご講演となったのではないでしょうか。

 

 

 

講演2  Wi-Fiの構築、運用、管理のポイントを解説

講演2は、「Wi-Fiデザイン超入門」と題して、シスコシステムズ合同会社アジア域エンタープライズネットワーク事業部のシニアプロダクトマネージャ、前原 朋実 様から行っていただきました。
今回は「超入門」と題してご講演をご準備いただきましたが、日ごろ無線LANの提案や構築、運用管理に携わる方々にも「なるほど…」思わせるポイントがいくつもあったのではないでしょうか。

講演で解説していただいた、お客様からのご要望と対策は次のようなものでした。
「見栄えのためAPを天井裏に隠したい」
「天井ではなく机の上にAPを置きたい」
「吹き抜け環境下でAPを設置したい」「VLANに合わせてSSIDを沢山つくりたい」
「2.4GHzはCH1/6/11がよく使われているので干渉を避けるため別チャネルを使いたい」
「新規採用で高速化するのでAPを減らしたい」
「逆に高速化メリットを最大限にするためにAP数を別に大幅にふやしたい」
「出力を強くしたい」
「では、弱くしたらどうなるか」
「家庭向けのAPを企業向けで使いたい」「USBクライアントを使いたい」

 

ご説明の一例

 

ご講演の最後で、RFデザインに関する考え方をまとめていただきましたのでご紹介をさせていただきます。
電波は無線空間を共用しているので、自分がいくらきれいな環境整備していても周辺で、例えば出力を強くしたり、2.4GHz帯の設定でチャンネル2であげてしまったり、ここは電波が届かないから自分で勝手にAPにつないだりすると、それが迷惑行為になる場合があります。この点が無線の難しいところです。
また6GHz帯の開放にむけて、RFデザインのポイントとして、6GHzになってもLPIの出力が変わらないので5GHzと大きくデザインは変わらないと考えています。唯一注意点としては外付けアンテナが使えないということと、WPA3しか使えないところが注意点になると思います。自分だけではなく周辺にも迷惑をかけないということが無線でのデザインにおける注意点になると思います。
今日は両極端の例を紹介して、強くしてもダメ、弱くしてもダメという説明をしてきました。全部自分で考えて対応することが厳しくなってきていると思います。そこでツールに頼っていただくことが一番はやいと考えております。まずはサイトサーベイをする。そして稼働がはじまっても無線の環境は常時変わっているので、そこはチャネルの自動調整を使っていただく。そうすることで現地に出向いて調査して修正する時間を短縮することができます。
なにかひとつにこだわってデザインしても無線は全然ダメです。すべてのバランスをとる必要がある。ということで今後RFのデザインをご検討いただければと思います。

QAセッション

続いて、「QAセッション」に移りました。コーディネータは、技術・調査委員会 副委員長の本橋 篤 様が務め、ご回答者は、山田様、前原様、小松様に、行っていただきました。
以下、主な質問とご回答を掲載します。

ご質問:6GHz帯に対応したAPの出荷はいつからか
ご回答:
山田様:Wi-Fi6E対応の製品はすでに販売を開始していますが日本国内では6GHzの利用の準備段階なので、利用可能となった際にファームアップで6GHzが利用できるように対応いたします。

前原様:弊社も販売を開始しております。現在は6GHzをオフにして将来的に技適が取れたあとでファームウェアのアップデイトでご利用いただけるような形で販売をさせていただいております。

ご質問: Wi-Fi 6Eに向けての電波法改正はいつ頃になりそうでしょうか?
ご回答:
小松委員長:先日パブコメの募集がはじまりましたが、過去の経緯ふまえると夏から秋にかけて利用可能になるのではと期待しています。

ご質問: 中国がまだWi-Fi6Eの検討にも入っていないのはなにか背景があるのでしょうか?
ご回答:
前原様:あくまで噂ですが、5G を優先してWi-Fi6E の整備は優先度が低いという話を聞いたことがあります。

ご質問: 将来的にWi-Fiは6GHz対応が主流になる見通しでしょうか?
ご回答:
山田様:6GHz帯はスピードがでますのでデータ通信について主流になっていくと思われますが、2.4GHz、5GHzがなくなるわけではなく、用途に合わせて使い分けがされるのではと考えております。

ご質問: Wi-Fi 6EはWi-Fi 6と比べると部品構成上、高額となる可能性が高いでしょうか?
ご回答:
前原様 半導体問題を発端にして様々な物や流通などのコスト上昇もあり、価格設定は非常に複雑な事情を含んでおりますので、シンプルにWi-Fi6E だからといった判断は難しい状況です。

ご質問:先ほどは家庭向けを企業で使うお話はありましたが、企業向けを家庭で利用するような使い方はあるか?
ご回答:
前原様 弊社も製品ラインナップをご用意しており、企業向けはCatalystシリーズのアクセスポイント (Aironet)と、Meraki シリーズですが、「Meraki Go」はSOHO向けにご用意した製品ですが、これを自宅で利用しているというお客様もいらっしゃいます。設定は比較的わかりやすく、機能も企業向けなのでご選択いただいているようです。1台では電波が届かない場合に中継器を利用されると思いますが、電波の状態の確認など企業向けの場合はアプリが充実しているので、そういう意味でもご利用をされているようです。

山田様
テレワークでご利用されるケースがあります。機能面に加えて最近ではセキュリティ面で会社のネットワークを自宅まで延伸してご利用になるお客様もいらっしゃいます。VPNで接続するやり方もありますが、AP自体を会社のネットワークに接続して会社にいる環境と同じにしてしまうという使い方が、最近増えてきており、弊社でもそういったソリューションをご用意しております。

ご質問: 家庭で1Gbps以上のインターネットはまだまだ普及しないと思います。そのような環境でWi-Fi6が優位になるユースケースはございますか。
ご回答:
山田様:6GHz帯(Wi-Fi6E)についてお話すると、スループットが高く遅延が少ないので、快適な無線で企業向けの用途にご利用いただけるのではと思います。
前原様:DFSによる予期しない切断がないので医療機関での利用やVR/ERの利用が考えられます。海外では歴史の授業でリアルなVR体験を学習教材が活用されているようです。

 


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