ローカル5G技術講座Ⅱ
第2回 導入事例
NTTe-City Labo
ローカル5Gを活用し遠隔からトマト栽培の農作業支援
公益財団法人東京都農林水産振興財団 東京都農林総合研究センターと東日本電信電話株式会社(NTT東日本)、株式会社NTTアグリテクノロジー※は、2020年4月「ローカル5Gを活用した最先端農業の実装に向けた連携協定」を締結。その第一弾として、東京都調布市のNTTe-City Labo(NTT東日本が所有する地域循環型社会の実現に向けた実証フィールド)敷地内に最先端のグリーンハウスとローカル5Gを整備し、トマト栽培とローカル5Gによる新しい農作業支援の実現に向けた取り組みを開始しました。その最新の状況をレポートします。
※https://www.ntt-agritechnology.com/company/pdf/ntt-agt_profile.pdf
農業経営体数の減少
ローカル5Gを活用した最先端農業の実装に向けた連携協定の背景には、二つの背景があります。一つは、農業経営体数の減少です。
日本では農業経営体数は年々減少の傾向が続いています。全国で見ると2005年には200万経営体があったものが2020年には約100万に半減しています。東京都でも同様に約8000経営体だったものが5100に減少しています。
こうしたなかで、「生産性の高い農業」と「省力化」の両立がますます社会的な要請となっています。そこで、就農者に向けた農作業支援の重要性が高まっています。
もう一つは、支援する人材の減少です。「小規模分散型の東京農業における農作業支援に係る人手不足の解消」、そしてコロナ禍での「移動制限があるなかでの新しい農作業支援の形」が求められています。
最先端グリーンハウスでトマト栽培
2021年12月、東京都調布市のNTTe-City Labo敷地内に最先端のグリーンハウスとローカル5Gが整備され、トマト栽培が始まりました。
ハウスは約450㎡で4レーン、大玉トマト「桃太郎ピース」350株を全自動制御で栽培しています。温度・湿度・照度・CO2濃度といった環境データをセンシングし、全自動で環境制御を行い、最適な光合成を促すハウスで、遠隔からハウス施設の制御を可能としています。また、4Kカメラ6台、360度カメラ1台、走行型カメラ1台を設置し、ローカル5Gを介してハウス内における高解像度の映像データを立川市の東京都農林総合研究センターに伝送し、農作業支援に活用しています。
ハウス内のトマトの生育状況は、全過程がデータ管理されており、研究員が遠隔から映像データと管理データを元に農作業支援を行うことができます。さらに、生産者がスマートグラスを装着することで、トマトの葉の裏の細かいところまで研究員は確認することが可能となっており、遠隔から的確な農作業支援を行うことができるようになっています。
栽培未経験者に向けた遠隔農作業支援
従来農作業支援は、週一回、ハウス内で行われていましたが、ローカル5Gの導入により、一日5~10分ほど映像データで確認することで、同等の農作業支援が遠隔から実施できるようになりました。研究員は研究所からハウスまで車で1時間ほどかけて移動することが多々ありましたが、ローカル5Gを活用することで移動時間が無くなりました。
農作業支援にかかる時間が削減されたことで、一人の研究員がより多くの生産者を支援することができるようになりました。また、日々ハウス内の状況を確認できるので、生育状況の変化に応じた適切な対応も可能となりました。NTTe-City Laboの栽培スタッフはこれまでトマト栽培の経験はありませんでしたが、研究員による遠隔からの農作業支援を受け、定植から出荷まで完遂し、美味しいトマトの栽培に成功しました。
デジタル化に対応した食育
収穫されたトマトは、地元JAと協力して市場に流通するだけでなく、地域のこども食堂や小学校の学校給食にも提供されています。
また、小学校の学校給食を通じた「デジタル化に対応した食育」が始まっています。NTT東日本・NTTアグリテクノロジーにより、市内の小学校で、トマトが最先端のテクノロジーを活用して栽培されていること、農業が地域の重要な産業であること、地産地消を実現していることが紹介されています。児童からは、「調布市でこのような最先端技術を取り入れて、トマト栽培していてすごいと思った」「学校の近くで地産地消が行われていて農業と最先端技術に興味を持ちました」というアンケートが寄せられているといいます。
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