「ワイヤレスジャパン2022」基調講演
新たな周波数割当で飛躍するプライベートワイヤレス
Wi-Fi 6E/Wi-Fi HaLow/ローカル5Gへの期待
一般社団法人 無線LANビジネス推進連絡会(Wi-Biz) 会長
802.11ah推進協議会(AHPC) 運営委員
NTTブロードバンドプラットフォーム株式会社 取締役
神奈川工科大学 客員教授
北條 博史 氏
5月25~27日に東京ビックサイトで開催された「ワイヤレスジャパン2022」で、 一般社団法人 無線LANビジネス推進連絡会の北條博史会長が基調講演を行いました。「新たな周波数割当で飛躍するプライベートワイヤレス ~Wi-Fi 6E/Wi-Fi HaLow/ローカル5Gへの期待~」と題する講演の要旨を掲載いたします。
無線LANビジネス推進連絡会の北條と申します。無線LANビジネス推進連絡会(Wi-Biz)や802.11ah推進協議会(AHPC)について少しご説明したいところですが、講演時間が短いので、直接展示会場の展示コーナーに行き、いろいろご質問をしていただければと思います。
今日のメニューです。今回のテーマである新しい周波数の割り当てをプライベートネットワークに焦点を当ててご説明したいと思います。プライベートネットワークに使われるのは今まではWi-Fiが主体でしたが、ローカル5Gというライセンスが必要なバンドが増えました。さらにWi-Fi 6の周波数を拡張しようという動きがあります。それから、たぶん皆さん、一番興味があると思いますが、802.11ahというIoT用無線LANに周波数が割り当てられる見込みです。
この3つの無線の方式について、どういう周波数が割り当てられたのかということ、それから具体的な方式の特徴、最後にプライベートワイヤレスネットワークを作っていくにあたっての活用法をご説明できればと思っております。
新たな周波数の割り当て
まず周波数の割り当てです。これは横軸に周波数を対数表示で書いてあります。下の方の周波数は昔から放送で使われていた周波数です。それからどんどんと高くなっていって、1ギガの少し下あたりからピンク色のものが見えると思いますが、これが3Gや4Gなどのモバイル通信が使っており、今は5Gにも使えるようになっています。
それで、オレンジ色のところ、3.7GHzと4.5GHz、それから28GHzというところが、5G並びにローカル5Gに割り当てられました。ローカル5Gは現在いろいろなところでPoCとして試験をされて、どれぐらいの実力があるのかを実際に確かめられている状況です。
Wi-Fiに関しては②に示しているようにWi-Fi 6の拡張型、6GHz帯に拡張されたということで、薄いブルーのところにあります。それがWi-Fi 6Eに当たります。
③に示しているように、目玉であるWi-Fi HaLow(802.11ah)は、携帯がプラチナバンドと呼ばれている遠くまで飛ぶ周波数、これが割り当てられる見込みです。
②と③につきましては作業班の答申が出ましたので、今後はそれに従って順次制度化していくということで、後でスケジュールについて述べます。
赤い縦の点線があると思います。ここが周波数の取り扱いやすさ・にくさの分岐点になっているところです。「サブ6」とよくいわれますが、その6は6GHzということで、6GHz帯よりも下かどうかが無線の使い勝手に大きな影響が出てきます。これ以上、高くなると雨による減衰などの影響が出てくるので、距離が飛ばなかったり、もっと高いところになると、ほとんど角で曲がらない、つまり障害物が入ると途端に通信が切れてしまうようなことも出てきます。そういう意味でローカル5Gと5Gに28 GHzを割り当てたことはとても画期的なことで、これまで扱いにくいために一般ユーザ向けに使われてこなかったミリ波帯(30GHzからミリ波というのが正確なのかもしれませんが)が使われることになるのは非常に大きなことだと思います。ただ、残念ながら、昨年度のiPhoneには、5Gは搭載されましたが、日本では28 GHzの送受信の部分はマスクされて出てきました。大変残念ですが、28GHzの帯域の広さは凄くメリットが大きいです。
5G/ローカル5Gの割当周波数
まず5G・ローカル5Gについてご説明します。これはよくある絵で、5Gの周波数は3.7GHzと4.5GHzと28GHzということです。下に参考で書いてありますが、その割り当て前にLTE-Advanced(4G)用に周波数の割り当てがありました。3.4GHzから3.6GHzの3.5GHz帯と言っていますが、1社当たり40MHzのブロック単位で割り当てられました。
それから、5Gになって3.7GHzと4.5GHzに今度は100MHzのブロック単位で割り当てられました。そして、28GHzは400MHzのブロック単位で割り当てられています。
ここで見ていただきたいのですが、帯域の大きさが重要です。見た目は同じように見えていますが、この図はリアルでスケールを合わせたものです。
いかに28GHzは帯域が広いかということをご理解いただけると思います。LTE-Advancedで割り当てられた周波数はトータルで200MHzでしたが、それが5Gのサブ6でローカル5Gも加えると900MHzも割り当てられています。それでも凄いのですが、それよりも28GHzの方がもっと凄いんです。5Gやローカル5Gが最大20Gbps出ますと言っているのは、この帯域をたっぷり取ったことをベースにシステムとして考えている数字なので、28GHzが使われるようにならないと、本格的な5Gの到来にはならないということです。今はまだ少し時間が必要だということが言えると思います。こういったところに緑のローカル5Gがしっかりと割り当てを受けています。これは、モバイルキャリア4社でなくても誰でも使える5Gという扱いになります。
Wi-Fi 6Eの割当周波数
続きましてWi-Fi 6Eです。これはリニアで書いてありますが、今回、検討対象となったのは右の2つのところです。アメリカでは合計1.2GHz(1200MHz)が丸々使えるような形になりました。当然こんな広い土地なので、すでに使っている人がたくさんいて、邪魔にならないような形でどうやって使うかということが問題になりました。その関係で、ヨーロッパもそうですが、日本では取りあえず下の500MHzを割り当てましょうということになりました。
このチャネル数を見ていただくと2.4GHzで4チャネル、5GHzもW52・W53・W56を入れて20チャネルだったものが丸々同じだけ増えることになります。これは今まで「無線LANは干渉で使えないですよね」と言っていたことが劇的に解消されると思います。ましてや室内で通信するのであれば、ほとんど干渉フリーで使えるということが言えると思います。
周波数帯は下の500MHzですが、使い方にも制限があります。アメリカで議論されていたのは、3つのユースケースに沿った動作モードがありまして、下の③からいきますが、ローパワーで例えばBluetoothで端末とセンサーなど近いところだけで通信できるようなモードで、非常にローパワーであることから既存の設備にはほとんど影響を与えないでしょう。②は屋内限定モードです。低電力モードと書いてありますが、アメリカはそもそもパワーが高く、低電力というのが日本のW52やW53と同程度のパワーになりますから、W52・W53と同程度の使い方が500MHzの24チャネルでできることになります。ここまでが今回、承認を得られたところです。
強いパワーで吹く①のSPモードにつきましては、普通にやっていては干渉条件が満足しないことが分かっているので、アメリカ等ではAFCといいまして、「そのエリアで使っていない周波数だったら使ってもいいよね」ということで、GPSを基地局に搭載して、GPSで自分の位置を送ると「この波なら吹いていいよ」というような返事が返ってくるシステムを構築して、そのエリアでその周波数を吹くというような扱いのモードです。それが今、米国等では具体的に進んでいます。
日本の場合は個別の条件もあると想定され、そう簡単にはいかないと思いますが、引き続き検討は続けるということで答申の中にも入っています。こういったところがWi-Fi 6Eです。帯域は単に倍になるだけではなくて、全く新しい使い方も出てくるのではないかと期待をしています。
スケジュールはここにある通り、答申が4月に出たので、これから日本のルールの省令に焼き直しをして、その省令で問題がないかというパブリックコメントをした上で、審議会でオーケーをもらって官報に出ます。このあたりのスケジュールは総務省様側でやるので確約はできませんが、通常は半年から1年といわれていますので、早ければ秋に官報が出ると具体的に日本の場合は技術適合性試験の認定が始まるので、それが始まったら実際に商品が出るという流れになりますから、うまくいけば年内に商品が出始めるかもしれません。ただ、海外ではすでに6Eの商品が売られていますので、これからの運用次第ですが、6Eの製品を6GHzは吹けないような状態で買っておいて、のちに制度改正されたらファームアップして吹くことのできる方向で調整していると聞いています。それがオーケーであれば、新しい製品をどうしても早く買いたい人で6Eを使いたい人は、そういうことも可能かと思いますので、このあたりは実際に買われるメーカーの方によくご確認をされたらいいかなと思います。
802.11ah(Wi-Fi HaLow)の周波数割り当て
たぶん皆さん、ahのことに興味を持ってこの講演を聞きに来られたと思います。これは今回割り当ての答申があった920MHzのところです。
IoT向けの周波数は世界各国ばらばらで、アメリカは同じようなところを割り当てていますが、ヨーロッパは別です。ようやくアメリカと同じエリアの割り付けを受けることができました。その関係でアメリカ用に作っているチップベンダーさんに協力を仰いで、AHPCという協議会で、日本での利用ができるように制度化を、関連団体が集まってやりました。15MHz弱のところにRF-IDもあれば、同じようなIoTの仲間であるWi-SUNやLoRaもここに入っています。
下側はRF-IDが使う場所で、間に中間帯があって、上はLPWAが入るエリアになっています。ここに11ahを割り当てることができました。11ahには1MHz・2MHz・4MHzの帯域モードがありますので、4MHzまで入ることになりました。規格上ですが、4MHzのモードでは20Mbpsぐらいまで出ると言われています。実際は規格の通りにはいかないと思いますが、4MHzのモードを動かせば5Mbpsとか、うまくすれば距離が近いところであれば、もっと高いビットレートも出ます。
答申は3月に出ましたので、先ほどのWi-Fi 6Eより少し早く動いているということです。これも省令改正・パブコメということです。Q1・Q2・Q3は年なので、Q2が新年度ということです。早ければ夏ぐらいから利用可能になります。
これも最後に見せますが、展示コーナーでは、今でも商売が開始できるぐらいの完成度の品物が具体的に展示されています。
11ahは2017年5月にいったん規格としては出来上がっていますが、気運が上がらず1回、しぼみかけていました。チップベンダーさんが前向きになった関係で、複数のチップベンダーが作りたいという流れがこの1~2年で出てきました。その結果、2021年11月にWi-Fi Allianceで相互接続プログラムがスタートしました。これで一人前になったといいますか、違うメーカーのチップでもAPと端末がつながることが保証されました。これはWi-Fi Allianceがこれからいよいよ商用化が進むと認知したという印です。これが今後、重要なポイントになって普及していくのではと思っています。
もう1点、これはまだどうなるか分からないという、先ほどのWi-Fi 6Eでいうところの上の700MHzみたいなものです。今説明してきたように、11ahはRF-IDと書いてある周波数の上半分を使いますが、いわゆるLANみたいにいろいろな人がたくさん使うときを考えると、今の帯域では1MHzだと3~4本使うといっぱいになってしまいます。通常のWi-Fiで考えると今でも20チャネルぐらいあるので、十分に使うためには周波数がもっと必要になってきます。
そういうことを総務省さんも考えておられて、実は、MCAというタクシー無線などに使われている自営無線を、高度MCAというLTEベースの方式に持っていきましょうということで、下の※1・2のところに、今、移行する方向で具体的に進み始めました。
いずれMCAのユーザがゼロになれば、そこがすっぽり空くので、800MHzのところと、900MHzのRF-IDを引き伸ばした形で一続きの帯域ところを、新規に割り当てることが検討されています。時期については、まだ何も決まっていません。今、そこをAHPCのメンバーを中心に、割り当てをいただけるような調整に入っている状況です。これが入ると周波数の利用の仕方がさらに拡大して、既存の無線LANのように自由に使うことができるようになります。
通信速度と到達距離
私も40年ぐらい無線をやっていますが、無線というものが意外と知られていないというか、報道を見ていると非常に違和感のあるようなことがあるので、少しだけご説明しておきます。これは横軸が飛ぶ距離で縦軸が通信速度に当たります。Wi-SUN、LoRa、ELTRES、そういうLPWAはずっと遠くまで飛びますが、温度やセンサーの数値の送信などが中心だと思います。実は通信速度を上げようとすると距離が飛ばなくなるという関係があります。これはどういう仕組みかというと、右上に書いている通り、通信速度を上げようとすると通信帯域を増やさなければいけません。例えば通信帯域を今は28GHzで1キャリア当たり400MHzを取っていますが、400MHzを取ろうと思ったら、1GHzのところに400MHzなんか取れません。±200MHzを取らないといけないから、800MHzから1.2GHzまで取らなければいけません。そんなことはできるはずがないので、周波数は高くないとだめです。
帯域を取ろうと思うと周波数が高くならないといけない、周波数を高くしようと思うと距離が飛ばない、こういうジレンマに陥ってしまいます。それを全て満足するような周波数やシステムはありません。「じゃあ5Gは何でできるんだ」とおっしゃるかもしれませんが、5Gは斜めになっています。超高速を出すときは高い周波数を使わなければいけないし、IoT用に遠くまで飛ばすときは低い周波数を使わなければいけなくて、今の4.6GHzだとたぶんだめです。5Gは今、800MHzでも使えるという状況になっていますから、800MHzで遠くまで飛ばすということを、使い分けていかなければいけません。
「Wi-Fiは? 無線LANは?」というと、それを1つのシステムの名称で呼ぶのをやめて、プロトコルは非常に似通っている、ad/ayというWiGigと、普通のWi-Fiと、今回のahという3つの方式で、まんべんなくカバーしたということになります。つまり、いろいろな周波数の要求条件に従って、適切な方式を選ぶことによって全体をカバーできます。ローカル5Gもローカル5Gの適切なモードを使うことによって、それが実現できるということなので、その点をしっかりと理解していただきたいと思います。
プライベートネットワーク ローカル5G
ここから、プライベートネットワークの話に入ります。まず、5G/ローカル5Gからです。5Gには、超高速・低遅延・多数同時接続という3つのメリットがあります。
今、申し上げた通り超高速をやるときは、多数同時接続はおそらくできない。2つのモードは別物です。それから、低遅延のときもモードは別物で、そのときだけフレーム長を短くして、低遅延専用のモードで動かさなければいけません。これを全て同時に満足させるのは無理なので、うまく組み合わせて使っていくことが重要です。
もう1つローカル5Gは、ご存じの通り自分のところの土地・建物でやりなさいというものがあります。これは総務省の絵でよく使われているものです。隣の土地をカバーしたり面的にカバーしてサービスを提供したりすることは、今のところ基本的にはできません。それは5Gでモバイルキャリアさんがやるという扱いになっています。そういう特徴をつかまなければいけません。同じような企業が隣り合わせの土地にいた場合、周波数がかぶってしまうと調整をしなければいけないということも実際はあります。
ローカル5Gも5Gも、NSA(Non Standalone)モードが今はメインで出てきていると思うので、それがたぶん当面は鍵になるでしょう。例えばキャリア5Gを専用モードでやろうとすると、今は3.7GHzと4.5GHzしかないので、3.7GHzと4.5GHzで飛ぶ面積のところしか通信できません。そこをまたぐとハンドオーバーしますが、がちゃがちゃいって面倒くさい。Non Standaloneなら低い周波数を使いますから、制御チャネルは低い周波数を使っておけば、安定して回線自体は生きたまま通信チャネルだけを切り替えていくようなこともできます。
ローカル5Gのときはややこしくて、5Gで割り当てられているのは28GHzと4.7GHzだけです。下の周波数はないのではないかなと思っていたら実はあって、PHSがいたあたりの1.9GHzをsXGP、プライベートのLTE、自営利用のLTEということで開放されています。もちろん免許バンドです。
それから、WiMAXが一時騒がれたときに出てきたBWAのチャネル2.5GHzのところに、今まで地域BWAとして割り当てられていたものが、自営BWAとしてローカル5GとセットでNSAを実現する周波数として使うことが承認されました。
皆さんがローカル5GをNSAで使うときは、必ず下の周波数が空いているかどうか、これも結局は隣に使っている人がいるとだめなので、しっかりと見た上で、使えるのならそれを制御チャネルに使って、通信チャネルを5Gで使うことになります。ローカル5Gも当初は28GHzを中心に製品が出ていましたが、ミリ波の取り扱いが難しいということで、今の主流は4.7GHzになっています。
これを見てもらうと分かる通り実は300MHzしかなくて、屋外で使えるのは100MHzなので、特に屋外をエリア化しようとしている方は、5Gの原則100MHz単位としてしまうと1波しかありませんので、ぶつかったら終わりということになります。なので、周辺環境もよく見た上で申請をしてください。今はほとんど使っている人がいないから、ぶつかることはないと思いますが、これから増えてくると、そういう状態が起こります。その点、28GHzだと900MHzありますから、100MHzチャネルを9本も取れるので、ぶつかるようなこともなく非常にいいと思いますが、取り扱いが大変です。
プライベートネットワーク Wi-Fi 6E
無線LANは11ac(Wi-Fi 5)まで来ました。セキュリティはWPA2が問題になって、いろいろとありましたが、それを契機にWPA3ができてセキュリティの心配はなくなりました。それに併せてEasy Connectだとか、フリースポットで使われる可能性のあるEnhanced Openというような、フリースポットだけど、暗号フリーではなくて暗号がかけられる、一時的に暗号キーを作って通信するようなメカニズムもできています。
本体のWi-Fiについていうと、先ほど申し上げましたが、3つのシステムに分化していて、遠くまで飛ぶものと超高速と通常のものの3つに分かれて進んできました。このタイミングで6GHz割り当て、あるいは920MHz割り当てということで、大きな進歩があって、これからいよいよこれらが使われることになります。
6/6Eについては、見ていただきたいのですが、Wi-Fi5とWi-Fi6は6.3Gbpsが9.6Gbpsになったぐらいで、通信速度はほとんど上がっていません。これも実は重要なことで、無線技術者の努力によって周波数を使い尽くしてきているので、これ以上、利用効率を上げることは期待できません。256QAMが1024QAMになったと書いています。4倍になっているような気がしますが、実は25%しか帯域が増えていません。これをさらに4096QAMにすると今度は20%しか増えません。「変調方式を工夫しても難しくなってきた」イコール「帯域を確保しなければいけない」ということになってきました。帯域割り当ては無線システムにとっても、なくてはならない重要なこと、逆に周波数を割り当ててもらえればバラ色の未来が開けると言っても過言ではありません。
なお、Wi-Fi 5からWi-Fi 6になって良くなったことは、速度向上、容量の増加、省電力などいろいろな面で非常に使い勝手が良くなっています。昔のアクセスポイントをもし使っている方がいらっしゃったら、パソコンのCPUだって昔のパソコンに比べれば10倍・100倍の性能差がありますから、Wi-Fiのアクセスポイントだって、方式はさておき、中に載っているチップも飛躍的に良くなっていますので、方式が古い規格でも十分だと思っておられる人も、最新の装置に更改することによって極めて使い勝手は良くなる可能性があります。
プライベートネットワーク 802.11ah
ここから11ahとなります。これは同じIoT、LPWAの仲間を並べたものです。これはWi-Fi Allianceのホワイトペーパーに実際に書いてある数値です。
一番左のahのところだけは書きかえてあります。距離はだいたい1キロとWi-Fi Allianceでは言っていますが、実際の我々の実験では2.5キロぐらいまで見通し外でも飛びましたので、そういったところまで頑張ればいけるのではないかということです。伝送速度は4MHzのものが書いていますが、1MHzで最も電波状況が悪いところで150kbps、通常のところだと1Mbpsぐらい出ますので、映像などがそこそこ綺麗にいけることが実験を通して分かってきました。
先ほどの右下から左上に上がっていく中で、この場所に適当な方式がありませんでした。Wi-Fi 6は100メートル飛ぶと言っていますが、100メートル飛ばして使っている人は、たぶんほとんどいません。50メートルぐらい。長距離が飛ぶものは逆にスループットが小さくて、「もうちょっとデータを送りたいよね」というようなときに送れていなかった。そこに、これが入りました。ということで位置付け的に隙間を突いています。
これをよく見ると、11ahの特長の1つ目は距離が飛ぶWi-Fi。つまり、今までWi-Fiをやっていたけど、広い家だと飛ばないので、中継を置いている大邸宅の方もいらっしゃると思います。11ahがあればそういうことは心配なく1個置けば遠くまでいきます。戸建てだと家の駐車場まで飛びますから、そういったことができると車との連携をすることもできますし、いろいろな新しい利用形態があるのではないかと思います。
それから、動画が送れるIoTということで、今まで痒いところに手が届かなかった方が動画を送れることは、いうまでもなく新しいメリットとして使われるということです。それから、意外と使ってみると、あっと思うのですが、Wi-Fiの仲間なので、買ってきたらその場ですぐ使えます。アクセスポイントを例えば既存のイーサネットにポチっと挿せばすぐ使えます。これが最大のメリットです。他のものは1回プロトコル変換をしたり、LoRaWANのようにサーバを必要としたり、端末を登録する動作や監視する動作など、いろいろなものが必要ですが、IPベースなので、PINGを1本送ればセンサーが生きているかどうかが分かりますし、既存の保守システムをお持ちなら、それをそのまま使うことができます。そういう方式なので、AHPCの中でもいろいろな使い方ができるのではないかということで、いろいろなところで実験をしています。
その状況もブースに行っていただければと思います。これからこういったところに広がるのではないかということで進めています。
それで、「じゃあ、商品化はどうなんでしょうか」ということで、今、想定されている今年のQ3、夏ごろといわれていますが、どんな商品が出てくるのか、これは展示をしていますので、ぜひご覧いただければと思います。
普通のアクセスポイントから始まってカメラソリューションだとか、あとはモジュールレベルでいろいろなものが作られていますので、ソフトベンダーからデバイス(装置)ベンダーまで、いろいろな人がこういうものを使って自分の装置に組み込むことができます。
多種多様にしようと思うとセンサーベンダーの人に11ahを入れていただかなければいけませんが、そういったものも加えながらやっていくことで、さらにこれが広がっていき、現在アメリカで出ている製品も日本に入ってくるようなものが出てくるのではないかと思います。今回は海外の製品も展示をしていますので、ぜひ将来的なイメージとして、そういったものが日本でも使えるようになるんだというイメージで見ていただければと思います。
プラベートワイヤレスネットワークの活用法
最後に、プライベートワイヤレスネットワークについてです。
今まではプライベートワイヤレスといったらWi-FiとBluetoothかなという話があったかもしれませんが、今、言ったようにいろいろな方式が出てきているので、これからは場所・場所に応じた適切なものを使っていかなければいけません
Wi-Fi自体の使い方も、これまではモバイル事業者がオフロード、つまり4Gの帯域がいっぱいになって使いづらくなってしまうのをWi-Fiでカバーしようとか、そういった面で普及してきたと思います。今、申し上げたように5Gで帯域ががばっと増えましたので、だんだんと帯域の輻輳が少なくなってきています。今後、Wi-Fiはその本来の目的であるプライベートネットワークを主体として移行していくものと思います。自分たちの土地の中をどうしようというのが先にあって、逆にプラスアルファで公衆機能を入れましょう、訪問してくるお客さんに対応しましょうということも出てくると思っています。
これは細かいので、いちいち説明していると時間がないとは思いますが、今日ご説明したローカル5G、無線LAN、WiGig、こういったものをどうやって選んでいくのかというところだと思います。通信の速度や周波数帯、これは飛ぶ距離に依存しますが、それから品質やセキュリティは比較的分かりやすいと思います。
「ローカル5Gが出てきたらWi-Fiはなくなるんじゃないの?」と言っていた方がいらっしゃると聞いたことがありますが、それはローカル5Gの通信品質がいいからなんです。メリットに青色を付けています。通信品質やセキュリティは圧倒的にローカル5Gがいいです。
だけど、実際に構築をしようとすると構築コストが掛かります。そもそも高いというローカル5Gのデメリットがあります。それを言ってしまうと、今は公平に比較してローカル5Gを使う理由は何もないと思いますが、実は少しずつ下がってきていて、サブスクモデルも出てきているので、それを使えば先行投資に何千万ということをしなくても、できるようになりつつありますので単純な比較をするつもりはありませんが、保守等を考えるとやはりローカル5Gは価格がデメリットになります。Wi-Fiは普及をしてくると街の電気屋で買ってきてそのまま付ければいいし、もう少ししっかりした無線LANが欲しい場合は企業向けにSIerさんが準備をしているメーカーのAPでインテグレーションしてネットワークを作れば比較的安くできます。こういう特徴があるものをどう使うかということです。
この図はブースのパネルにも展示してありますが、「やっぱり1つだけというのはないんじゃないですか」とか「組み合わせて使うなんてこともあるんじゃないですか」、それぞれ特徴があるので、これはこれしかだめというものもないでしょうという考え方です。
例えば家庭だと、今、申し上げたようにWi-Fi 6に11ahがもし組み込まれるようなことがあれば、家の中はもちろん車庫までいけますから、車からその日の経路をアップロードしたり、いろいろな利用形態が考えられます。オフィスは、ローカル5Gはたぶんないと思われるので、6Eと場合によっては11ahを組み合わせるだとか。
イベント会場はローカル5Gを入れたほうが良かったのかもしれませんが、皆さんが持ってきているスマートフォンをそのままWi-Fiで使うほうが、ローカル5Gだといろいろと面倒なことがあると思うので、Wi-Fiを選択してみました。6Eを使えば帯域ががばっと入りますし、閉空間なら6GHzの装置の持ち込みを制限することも比較的面倒なことではないと思うので、独占して使えることで、別にローカル5Gを使わなくても品質は基本的に確保できます。
それから、今までローカル5Gは工場がいいのではないかといわれていましたが、映像を集めるなら安定した品質のものが必要ですからローカル5Gが合うし、11ahを1つ置いておくと工場全体をカバーできるので、センサー情報はahで集めたほうがいい、ということもあります。ローカル5Gの値段に比べたら100分の1・1,000分の1ぐらいでシステムとして構築できるので、そういったものもいけます。こういったものをうまく組み合わせてやるのが一番いいということです。そういう意味では、これからはそこの目利きができるかどうかが重要になります。
AHPC/Wi-Bizの展示内容について
最後にWi-Bizのご紹介をします。今日話したことは、Wi-BizとAHPCが共同で出版した本がありまして、今日の講演はさわりだけでしたが、詳しく書いてあります。是非、お読みいただければと思います。
それから、展示は写真のような位置で、展示会場の真ん中の入口を入ったすぐ左に展示しております。朝からかなり盛況なので、もし見ていただける方がいらっしゃったら、少しばらけるようにしていただいたほうがいいと思います。
何を展示しているかというと、Wi-Fi 6はもちろんですが、6Eの機種も実物2つ写真1つ、ローカル5GはNTT東日本がサブスク型でやっている「ギガらく5G」の端末を持ってきていただいています。今日は東日本から説明員も来ていただいていますので、詳しくお聞きになりたい方は聞いていただければと思います。AHPCは当然まだ製品はありませんが、デバイスメーカーの方々、カメラ関係のソリューション、APや端末、この3つのブロックに分けて展示をしておりますので、この後、お時間がおありの方は見ていただければと思います。以上で講演を終わります。どうもありがとうございました。
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