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活動報告
セミナー「病室にWi-Fiが普及するために必要なこと」を開催、
高い関心を集める

企画・運用委員会 吉岡 博

8月25日に、企画・運用委員会主催で、「病室にWi-Fiが普及するために必要なこと」をテーマとし、セミナーを開催しました。

 

 

多くの病院にWi-Fiがあっても主にスタッフ向けのものであり、病室の患者様向けの導入はまだ十分ではないという状況を踏まえ、あらためて「病室にWi-Fiが普及するためには何が必要か?」というテーマで開催しました。
セミナーには、病院関係者を含む約200名の方が参加し、質疑応答も活発に行われ、病室へのWi-Fi導入について関心の高さがうかがえました。

北條会長の挨拶

 

 

北條会長から、新型コロナウイルスの影響により、在宅勤務など、仕事の実施形態が以前と比較して大きく変わりつつある点や、5G、Wi-Fi6など、新しい通信方式の導入が進んでいる点について紹介がありました。
社会生活の中で、新型コロナウイルスの影響により大きく変わった場所の一つに病院があります。コロナウイルスの感染を気にして、面会も自由にできず、患者様の病状回復にも影響を与えており、患者様とのコミュニケーションを図るため、病室から通信できる環境の整備が重要と考えられております。
現場でのWi-Fi導入に向けての課題などを中心に幅広く講演をいただき、参加者皆様で共有しました。

厚生労働省の西川玄希様の講演

厚生労働省の西川玄希様から「病院内での電波利用について」てご講演をいただきました。スマートホンを始めとした電子機器が発する電波が、医療の現場で使用する医療機器の動作に悪影響を与えているのではないかとの不安が以前から指摘されております。これについては、医薬品医療機器等法で定められております厚生労働大臣が定める基準において、各種電子機器と医療機器が共存して正常に動作できる電磁両立性が確保されています。電磁両立性の具体的な基準については、国際的なJIS規格に従い、医療機器メーカー皆様のご努力のもと、電磁波に対する十分な耐性が確保されており、医療機器の動作が影響を受けない形で利用されていることを、ご紹介いただきました。

病室Wi-Fi協議会笠井信輔様からご挨拶

病室Wi-Fi協議会の笠井信輔様から特別ゲストとして、ご挨拶をいただきました。

 

 

今から2年ほど前に入院した際、面会もままならず孤独を感じました。病室にWi-Fi環境はなく、毎月8000~1万円の追加料金を支払い、スマートホンの通信サービスを利用しました。これをきっかけに、病室Wi-Fi協議会を結成し、病室へのWi-Fi工事に補助金をつけていただくなどの活動を進めております。2020年4月に厚生労働省の補助金がつきましたが、実質的には半年間でWi-Fi導入の取り組みが途切れたため、ぜひとも、予算の復活をお願いしたいと思います。
全国の9割の病院で、病院関係者皆様のためにWi-Fiが整備されていますが、3割の病院しか、入院患者様のためにWi-Fiが整備されていないという実態もあります。
病室Wi-Fiが使用できれば、自分のスマートホンで、追加料金なく家族や友人と面会ができます。電子カルテや医療機器などは、電波の影響を受けないようにできているというお話を聞き、勇気づけられました。ぜひとも、病室Wi-Fiの導入を進めて行きたいと考えております。皆様よろしくお願い致します。

佐賀県医療センター好生館の長友篤志様のご講演

佐賀県医療センター好生館の長友篤志様から、当院における患者用フリーWi-Fiの整備と運用状況のご紹介をいただきました。

 

 

患者用フリーWi-Fiの導入について比較的容易に進めることができた経験を共有させていただき、未導入の医療機関の方に、導入のハードルはそれほど高くはないことを認識いただければと思います。
2013年5月に、新病院開院と合わせて、業務系・情報系・学術系など論理的に系統を分割して利用可能な統合ネットワークを構築しました。また、無線デバイスの普及を見据え、全館にアクセスポイントを設置しました。この先行投資により、患者用フリーWi-Fiが容易に導入できました。
2014年5月に、佐賀県公衆無線LAN等環境整備事業費補助金の制度ができ、病院におけるフリーWi-Fiの導入に向け、県職員とも相談し、検討を開始しました。構築のポイントとしては、既存の配線・機器を活用すること、公衆無線LANを論理的に新設すること、暗号化などセキュリティ対策を設定することが挙げられます。構築費108万円のうち補助金が50万円であり、病院の負担は58万円でした。
通信速度を測定したところ、ダウンロード、アップロードともに30Mbps程度が確保されており、支障なく使用できております。フリーWi-Fiについて、患者様から特に苦情はなく、満足に利用いただけていると思われます。
わずかな投資でセキュアな患者用フリーWi-Fiを導入することができておりますので、ぜひご検討いただければと思います。

岡山記念病院の小林孝一郎様のご講演

岡山記念病院の小林孝一郎様から、「院内Wi-Fi環境のニーズと課題を考える」と題して講演をしていただきました。

 

 

新型コロナウイルス感染症の流行を機にデジタル化が進み、入院患者を中心に、院内Wi-Fi環境の充実を望む声が上がっています。患者サービスとしての病室Wi-Fi環境の整備と導入について、医療従事者の立場からニーズと課題を考えております。
病室Wi-Fiに対する要望・意見として、「有ると便利」「患者サービスの差別化につながる」「病室Wi-Fiの利用が増えると、電子カルテの動作が遅くなるのでは」などが挙がっています。病室Wi-Fiが普及すれば、病室にいながらのワークや、多人数のオンライン面会、オンライン学習、医療者からの病状説明、健康指導などが可能になります。高齢者施設、医療機関でのクラスターが増加しているため、オンライン面会の必要性が高まっていると考えます。
小児病棟にWi-Fiを導入することで、子供の孤立を防ぎ、オンライン学習も可能となったという事例もあります。福山リハビリテーション病院では、フリーWi-Fiが導入されており、オンライン面会による励ましが、リハビリのやる気につながっております。
病室Wi-Fi設置について、賛成意見としては、面会できない不満が解消されること、患者のストレス軽減により治療の一環になる、などが挙がっております。逆に反対意見としては、過剰なサービスではないかという点や、接続できないなどのトラブル対応で病院スタッフの業務が増えてしまう、などが挙がっております。
導入に向けての課題として、誰が整備し、どう運用していくかが考えらえます。総務省は、病室Wi-Fiの整備は、患者サービスとして進めて行くべきという考え方であり、厚生労働省は、医療機関の経営努力として位置づけています。運用にかかるコストや使用料の負担についての整理、および、接続や利用マナー、情報漏洩など、トラブルへの対応について整理することが課題として挙げられます。

シスコシステムズ合同会社の若村友行様から提起

シスコシステムズ合同会社の若村友行様から「病室Wi-Fi利用にとどまらないWi-Fi構築について」提起をいただきました。

 

Wi-Fiについては、世代が新しくなるほど、つながりやすくなり、速度が向上し、トラブル回避に関わる機能が増えております。最新の規格としては、Wi-Fi 6Eが、これから普及していきます。Wi-Fi 6におきましては、特に、MU-MIMO(複数端末で同時通信を実現する機能)などの実装により、さらなる速度向上が可能となっています。また、Wi-Fi 6Eでは新たに6GHz帯の電波帯(日本では24チャネル)が屋内で利用可能となります。
医療機関のWi-Fi利用は増加傾向にありまして、スマートホスピタル(スマートフォンの内線通話など)やオンライン診療、医療機器のWi-Fi機能搭載などが増加しています。
病室Wi-Fiを増設する場合に、業務用のWi-Fiと分離する機能として、物理的なネットワークの分離だけでなく、ルーティング方式の設定なども含めて論理的に分離する機能もあります。
事例としてクラウドWi-Fiをご紹介します。メリットは月額の少額投資でサービスを開始できるという点やクラウドに用意された管理機能を使用可能な点です。Wi-Fiに接続している人数や通信速度など、管理者が自宅からでも把握できます。
利便性向上に向けた機能として、QRコードを読み取ることで簡単にWi-Fi接続ができる点や、病室Wi-Fi用SSIDで利用時間を設定する機能などがあります。
最新のセキュリティ対策についてご紹介します。端末が不正なアクセスポイントと通信をしようとしている場合に、接続解除信号を送ることで、不正なアクセスポイントとは通信しないようにする機能があります。
珍しい活用例をご紹介します。Wi-Fiタグによる位置情報を利用して、濃厚接触の条件を満たす状況や場所を検知し、消毒するエリアを決定する使用方法や、Wi-Fiタグの温度センサを利用して、冷蔵庫などの温度管理・アラーム発出なども可能になっております。
身体の不自由な患者様において、スマートスピーカの機能を使用して、話すことでテレビの操作などが可能になる機能もあります。

活発に質疑応答が行われる

質問が以下のとおり寄せられ、それぞれ講師による回答がありました。

 

 

①佐賀県医療センター好生館 患者用フリーWi-Fiの整備と運用状況のご紹介
Q:導入に向けての課題はなかったでしょうか。
A:Wi-Fiがつながりにくいなどのトラブル発生時に、看護師の対応稼働などが増えないようにすることが必要と考えます。トラブル発生時のマニュアルの整理などを実施し、運用をスムーズに進めて行く対応が必要と考えます。

②電子カルテのWi-Fi利用について
Q:電子カルテにWi-Fiを導入しているケースは多いでしょうか。
A:シスコが対応している病院はほぼWi-Fiを導入しており、5GHzのWi-Fiで電子カルテを使用しているケースが多いです。有線で電子カルテを使用しているケースは減っていると思われます。中小の病院においても電子カルテにWi-Fiを導入しているケースは増えてきていると思われます。

③6GHz対応Wi-Fi機器の出荷について
Q:6GHz対応のWi-Fi機器は、いつごろから出荷されるでしょうか。
A:機器の出荷は来年度くらいからではないかと思われます。医療関連機器の6GHz対応については、今から1年後くらいからではないかと思われます。

④患者向けWi-Fiの提供について
Q:Wi-Fiの利用に関しては、若年層のネット依存防止などに向け、患者側とのルールづくりや、利用マナーを守る点などが重要と考えますが、ご意見いただければと思います。
A:病院は療養の場であり、治癒に向けて進めて行くのが第一です。Wi-Fiの使用に関しても、規約への同意やルールを守るスタンスを大事にして患者と接していくことが重要と考えます。Wi-Fiの適正使用についてのルールづくりが重要と考えます。

PRセッション(医療関係者様向け)

●株式会社ビーマップ 様
マネージドWi-Fiについてご紹介いただきました。特徴として、既存のネットワーク(業務用Wi-Fiなど)に干渉しない環境を構築可能な点や、クラウド管理ができる多機能アクセスポイントがあります。利用者が使用料を負担するシステムや利用時間を制限する機能なども提供可能です。カメラを使用したオプションサービスで、不審人物を検知する機能もございます。全国の宿泊施設や商業店舗など導入実績があります。ご検討よろしくお願い致します。

●株式会社フルノシステムズ 様
オンライン面会や家族イベントなど新しい需要にも対応していきます。高品質Wi-Fiのチェックポイントとして、多くの端末を接続しても通信が途切れないこと、運用管理ソフトウェアにより、管理者の負担を軽減することなどが挙げられます。クラウド機能により、短期間で簡単に導入でき、シンプルに管理ができます。遠隔でのログ解析も可能です。セキュリティに関しましても、認証システムにより、不正接続を根絶する仕組みを搭載しております。導入のご検討よろしくお願い致します。

 


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