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「ワイヤレスジャパン2023」基調講演
新周波数割り当てで始まった
新たなプライベートワイヤレスの展開
一般社団法人 無線LANビジネス推進連絡会(Wi-Biz) 代表理事 会長
802.11ah推進協議会(AHPC) 運営委員
NTTブロードバンドプラットフォーム株式会社 取締役
神奈川工科大学 客員教授
北條 博史
5月24日(水)から26日(金)の3日間、「ワイヤレスジャパン2023」が東京ビッグサイトで開催され、3日目に開催された基調講演では当連絡会 北條 博史会長による「新周波数割り当てで始まった新たなプライベートワイヤレスの展開」と題する講演が行われ、200席は事前登録で満席になり、当日は立ち見が出る盛況ぶりでした。講演を採録いたします。
昨年9月に2つのシステムの周波数割り当てがプライベートワイヤレスにありましたので、本日はそれを中心に、これから先の話を少しさせてもらえればと思います。
次のような中身を説明したいと思いますので、よろしくお願いします。
プライベートワイヤレスの新規周波数の割当
昨年もこの場所で講演をさせていただき、「もうすぐ周波数が割り当てられます」という話をしたところ、9月に、図の青色の②と③、6GHz帯のWi-Fi 6Eと920MHz帯のWi-Fi HaLow、この2つの割り当てが無事に行われました。今年はその周波数でどんどん商品が出てサービスが展開されるという状況になっています。①の5Gとローカル5Gについては、すでに3年前からスタートしていますので、後で詳しく説明しますが、ワイヤレスのいろいろなパーツがそろってきました。
まず5Gについては皆さんもご存じの通りモバイル4社専用に割り当てられており、それに加えてローカル5Gといって誰でも使える周波数が4.5GHzのところと28GHzに割り当てられました。
図中の下に3.5GHzというものがありますが、これは4Gのときの最後に割り当てられた周波数になります。モバイル各社に40MHzという帯域が割り当てられています。
横を100%にしてしまっているものですから同じように見えていますが、今回、5Gでは3.7GHzと4.5GHzのところにモバイル各社に1つ当たり100MHzの単位で割り当てられるということで、単純にいっても40MHzから100MHzで2.5倍の帯域が割り当てられています。
さらに28GHzでは400MHzということで、3.7GHzとか4.5GHzのさらに4倍の周波数帯域が割り当てられています。「帯域幅」イコール「通信速度・通信容量」にあたりますので、これはとても重要なことです。後で言いますが、周波数が高くないと、たくさんの帯域が割り当てられないので、高速化を狙う場合は高い周波数をどんどん使っていくことが必要になります。
Wi-Fiの方は、6GHz帯が世界ですでにフルで割り当てられている国もありますが、日本もようやく昨年の9月に1.2GHzあるうちの下の500MHzの割り当てが完了しました。2.4GHz帯は元々20MHzを1チャンネルとすると4チャンネル、5GHz帯はW53・54・56で20チャンネルあります。合計24チャンネルになりますが、今回割り当てられた6GHz帯は、これまでと丸々同じだけのチャンネルが割り当てられたことになります。これはまさに通信容量が一気に倍増したということです。
端末は、まだそれほど多くの6GHz帯対応のものは出ていませんが、これからどんどん出てくるでしょう。はっきりとは言えませんが、秋のiPhoneは6GHz帯に対応してくれるのではないかと期待しています。
ただ、本来動作モードとしては①Standard Power、②Low Power Indoor、③Very Low Power という3つのモードがあるうち、日本では下の500MHzのみで、なおかつ②と③のモードだけ今回は開放になりました。①Standard Powerは海外の標準パワーなので、日本でいうとLow Power Indoorの出力がW52やW53の出力と同じになりますので、今まで国内で使っていた屋内用5GHz帯と同じ使い方が6GHzでできる。ただ、チャンネルが24あるということです。
今、世界の動きとしては、上半分とか、Standard Powerなどをどう割り当てるかということを議論しているところで、既存システムとの干渉を避けなければいけないので、AFCと呼ばれるような、その場所に空いている周波数帯なら吹けるでしょうということで、電波を吹く前に自分の位置情報を送り、その送った位置情報によって「使える周波数はここです」という割り当てを受けてやるシステムですが、それで上半分の周波数、屋外、パワーを増やす、そういったことができるようにしようという動きがあります。
そういう動きが日本でも昨年から今年に入ってからですけど、Wi-Fi 7の日本での利用検討とセットで議論されていると聞いています。Wi-Fi 7は、そもそも6GHz帯を使うことが前提となっている方式で、802.11beといわれるものですが、今まで20MHzを8チャンネル、160MHzまでチャンネルボンディングしていたものを320MHzまでできます。
もし下の500MHzしか割り当てられない状態だと、1チャンネルを割り当てしてしまうと、いっぱいになってしまうということなので、前提として1.2GHzが全部割り当てられたら、本当に使い勝手が良くなるよねというような感覚で今、議論されています。干渉があって既存のシステムに迷惑が掛かってはいけないので、そういったところをどうやって解決していくかというのは、世界的な議論としてなされています。
もう1つ③ですが、今日、展示会場でも展示していますが、802.11ahと呼ばれるもので、これはIoT用の無線LANになります。周波数帯が920MHzといって、これまでLoRa、Sigfox、Wi-SUN、そういったものが使われていた周波数のところに802.11ahも使えるようになりました。幅は15MHzありますが、下にパッシブなRFIDが入っていますので、上を中心に割り当てるということで、これも昨年9月に認められました。
細かくいうとこれまでは、200KHz単位でチャンネルを割り当てていましたが、1MHz単位で11ahは使えますので、そういうものが今、5チャンネル割り付けることができます。普通のWi-Fiと同じようにチャンネルボンディングで2MHzや4MHzなどつなげられますが、2MHzだと青いところのように重なって干渉してしまいますので、そのあたりを分けながらやると、2MHzは2チャンネルを取れることになります。1МHzは5チャンネル、プラス下のやつも含むと6チャンネルを取れます。なお、4МHzは残念ながら1チャンネルしか取れなません。
普通のWi-Fiと一緒なので、キャリアセンスをして、自分の使いたい帯域が空いていればパケットを出せますということになります。チャネルの空きによって4MHzを2MHzにしたり、もっと空いていなければ2MHzを1MHzにしたりして出すことができるようになっていますので、そういったことで最適な帯域を選んで通信するということになります。
920MHzが特徴的なのはIoT専門周波数なので、10%デューティのルールというものがあります。解釈の仕方がいろいろとあるかもしれませんが、60分(1時間)のうち6分しかパケットを投げられないということです。これはどういうことかというと、時間的に1割しか投げられない。つまり、残りの9割は他の端末の人が投げられるようにエチケットを守りなさいということです。このルールがある関係で、端末側からの上りは一人一人が10%でも問題ないんですけど、基地局から下りを投げるときは、基地局にも同様の制限が掛かりますので、10%しか投げられないということで、そのあたりが920MHzの制限のあるところです。
実は10%ルールを何とか外せるようなことはできないかということで検討が進んでいます。緑のところが今回割り当てて使えるようになった11ahですが、その少し上と800MHzのところにデジタルMCAというタクシー無線などに使われるシステムがあります。それらは、高度MCAという図の※の1と2のところに、移行することが決まっています。
高度MCAとは基本はLTEベースで非常に周波数の利用効率がいいので、広いところから狭いところに移ってもカバーできるものです。問題は空いた跡地、そこにIoTのシステムを入れたらどうかという議論がなされています。
元々下のバンドと上のバンドがありますが、下のバンドを先に検討しましょうということで、これが使えると先ほどの10%ルールはないので、普通の無線LANとしての使い方ができるようになります。
今後の無線通信の進展と条件
ここから無線の特徴というか、少し技術的になるかもしれませんけど、説明させていただければと思います。
これは横軸が時間で縦軸が通信速度です。対数表示になっていて、これが」直線になっているということは、2倍・2倍・2倍あるいは10倍・10倍・10倍と増えていくということです。昔、LSIの集積度はどんどんピッチが細かくなっていって集積度がどんどんログベースで上がっていくということでしたが、無線もここ最近まで、第4、第5世代まで、最大速度はどんどん上がってきている。これから6Gにいくと、またどんどん上がっていくのか、そもそもそんなに帯域があってどうするの?という話がありますが、そのあたりを少し紐解いてみたいと思います。
実はWi-Fiも全く一緒で、802.11というアルファベットが何も付かない状態から、どんどんどんどん速度が上がってきて、これも対数的に直線状に伸びている状態です。
ただ最近のWi-Fiは上と下に分かれてきています。速度は低いが遠くまで飛ぶ11ah、これは後でご説明しますが、皆さん、忘れているかもしれませんが、11adとかayは60GHz帯、すなわちミリ波を使ったものです。これも新しい動きがあって、これから期待されているところです。
「この先、どうなるんでしょうか」というところです。人間とは飽くなき探求で速度を高くしたいという思いが、たぶん皆さんにもあると思います。無線で速度を上げようと思ったらどうしたらいいのか、あるいは容量を増やそうと思ったらどうしたらいいのかというと、1つは周波数利用効率の拡大・向上ということです。これは同じ帯域でどれだけのスループットが取れるかというのを、どんどんどんどん上げていきましょうということです。その最たるものが、64QAMや256QAMなど、そういう変調方式を高度にするというやり方です。
16が64、64が256など数字は常に4倍・4倍になっていっているので、容量も4倍になっているみたいなことを思っておられる人がいるかもしれませんが、ビット数でカウントしますので、16QAMからいくと64QAMは1.5倍ですし、11axは1024で、11be(Wi-Fi 7)では4096で4倍になるような雰囲気ですけど、わずか20%(1.2倍)しか増えない。それほど周波数を十分に使い尽くしていると言えると思います。なので、ここで稼ぐことは今、厳しい状態で、これ以上ここで無線屋さんが活躍する場はないのかもしれません。
もう1つはMIMOといいまして空間多重するものです。これは同時に複数の信号を上げて、受信側も同時に複数の信号を受信して、信号処理で分離して別の信号として受けるというものです。多重数が実はどんどん増えています。11nのときが4、acは4、axは8、今度のWi-Fi 7は16といわれています。言うのはたやすいのですが、信号を別々に出さなければいけないので、16ということはアンテナが送信機を含めて16組必要になります。「そんな端末を見たことがありますか」ということなんですね。今のスマホですと、Wi-Fiに2つ割り当ててくれていればいいほうで、LTEや5Gにも2本とか、そういうことを言い始めると、ここはアンテナがいっぱいあって、Wi-Fiには2個が限界だとすると、スマホに対しては、それほど速度は上がらないと思います。
ただ、Massive MIMO技術のように基地局はたくさんアンテナを付けて、そのうちの2本を端末にという形で、同時に複数の端末を高速化することができるということで、容量は増えますが、速度はあまり増えない。しかも、Massive MIMOのような技術は高い周波数が適しているので、実際に我々が使っている普段の周波数でいくと、あまり向上は期待できません。つまり1も2もあまり期待できません。
そこで3番、言いたいことにつながるのですが、帯域の拡大。これは着実に進んでいます。11aのときはチャンネルボンディングで40MHz、acで160MHz、axで160MHz、今度は320MHzになります。
もう1つWi-Fi 7では、マルチリンクといって、携帯でいうところのキャリアアグリゲーション、複数のバンドを1つに束ねるというのが定義されようとしています。例えば携帯でいうと800MHzと2GHzと3.5GHzとか、3つの周波数を同時に使うということです。そういう技術がマルチリンクですけど、今後、高くなると、そういうことが行われるようになる。ただ、マルチリンクは容量自体は増えていない、速度だけしか増えていないのです。
言いたいことは、今回、プライベート用にローカル5Gも割り当てられ、Wi-Fi 6Eも割り当てられ、Wi-Fi HaLowも割り当てられたということで、国としてプライベートな領域で、使い方が拡大するように割り当てようという方針に基づいて、実際に割り当てられたということで、これからはそういう方向で進んでいくというイメージです。
ここからが無線の難しいところです。これまでの話しで、高い周波数を使えばいいじゃないかと思うじゃないですか、帯域がたくさん取れるからと。
これを見ると、赤線が2つ縦に引いてありますが、一つはプラチナバンドといわれるサブギガ、1GHz以下のところ、もう一つはサブ6といわれるところです。この切れ目で3つのバンドがあり、左側のモバイルでも使える、動きながらでも使える、ちょっとした角なら曲がりますよというような周波数と、真ん中の角はあまり曲がりません、動いていると切れることがあります、みたいなものというものがあり、さらに今、乗り出そうとしている、さらに高速化するために帯域を増やさなければいけないのは一番右のミリ波です。
そういう気持ちは標準化に携わる人たちにもあって、5Gが4GHz・5GHzだけではなくて28GHzが入ったというのは、何とか28GHzをものにして無線の利用を拡大したいという思いがあったと思います。ただ、残念なことに日本で端末のシェアの半分を占めるiPhoneはいまだに28GHzに対応していません。アメリカで発売しているものは対応しているらしいのですが、日本では、5Gを28GHz帯に拡大する代わりに、既存の周波数帯を4Gから5Gに変えるだけというような状態になっています。
特に2GHzとか下のこれまで4Gで使っていた周波数帯を方式だけ5Gに変えるというものがあり、「なんちゃって5G」といわれます。先ほど説明して分かるように変調方式はそんなに変わりません。それから、MIMOも別に変わるわけではないので、通信容量としてそんなに増えているわけではありません。だから、皆さん、「5Gに移ったから5Gのメリットはありますか」と聞かれると、今のところ、たぶんあまりないのではないかなと、「少し速いかな」みたいな感じだと思います。
本当の意味で5Gの容量の大きさを実感するためには、一番右にあるミリ波を使わなければいけません。青い字で書いてあるメリットですが、うまく連続して幅広い帯域を使うことができる、そういうことで超高速な通信が可能というふうになっています。ただ、赤で書いてある通り、障害物に遮蔽される、移動通信は難しい、値段が高い、発熱するということがあります。値段が高いとか発熱するは、これから技術でカバーしていくと思いますが、みんなが使うようにならないと値段は下がりません。昔は800MHzがメインでしたが、1GHzから6GHzまでの間は、当初は値段が高かったんです。Wi-Fiや3Gが普及したことによって、2GHz帯などのデバイスの価格が大きく下がって、皆さんが使えるようになった。「それと同じステップをまたミリ波でもやりたいよね」ということがポイントになります。Wi-Fiの場合はサブギガがWi-Fi HaLow、今回の11ah、サブ6は我々が使っているWi-Fi、それから先ほど少し言いましたが、ミリ波はWiGigという802.11adというものがありますから、こういういろいろなタイプのものを今、プライベートワイヤレスとして用意しています。
これは横軸が飛ぶ距離、縦軸がスループットです。このように左上から右下に流れていっています。今まで下から2番目、802.11ahがなかったので、プライベート通信をやろうとすると、そこだけが抜けている感じになるんですね。だから、プライベート通信でHaLowなしだと、やれることが限られる。5G・ローカル5Gもこのように書いていますが、ミリ波で多端末なんていうのはナンセンスなんですね、もともと100メートルしか飛ばないわけだから。28GHzでIoTをやろうという人はたぶんいなくて、携帯が持っているたくさんの周波数の中の一番低いところでIoTをやる、超高速は一番右側の高い周波数でやる、そういうことをキャリア側で自動的にうまく調整をしてくれて、その時その時に最適なものを選択するのがキャリアの5Gです。まだそこの5Gのパーツは全部埋まっていない状況なので、これからキャリアとして、いろいろなタイプの基地局をつくっていって、ユーザはいろいろなタイプを使っていくことになります。プライベートはというと、この周波数の中からどれを選ぶのかが重要になります。
Wi-Fi 6Eは6とそんなに変わらない、帯域が多いだけなので、今回新たに使えるようになったWi-Fi HaLowについて詳細な説明をさせていただきます。
IoTを一気に推し進めるWi-Fi HaLow への期待
920MHzのWi-Fiですが、帯域は20MHzが1MHzになっているので、スループット自体はWi-Fiほどないですが、次のページが分かりやすいので、いきます。
「パーツが空いていました」というところにWi-Fi HaLowが穴埋めされることになりました。ちょうどこういうポジショニングになるので、距離の飛ぶWi-Fiと言えます。例えば家の中で外まで飛ぶことができるとか。もう1つは温度、湿度、水位だけだったものが、動画が送れるようになるIoT。さらにはIPネットワークと親和性がありますので、今までのネットワークにそのままつなげることができる、構築が簡単でコストも安い。Wi-Fiファミリーにいるので、Wi-Fiのセキュリティをそのまま踏襲できます。ですから、WPA3を使うことによって、例えばLoRaとかSigfoxでセキュリティが問題で乗っ取られたとか、信号を盗まれたとか、そういうことはありません。
こういったメリットがあるので、どういうところに使えるのかというと、これは一例ですが、「地域の安心・安全」ということで、いろいろなデバイスを1つのネットワークにして使うことができる。それをクラウドに集めることによってインターネットから確認することができたり、それから農業の分野が一番最初に考えられますが、生育状況などの監視をすることができる。
今までは、農業従事者は高齢化が進んでいるところですが、現地まで行かないと様子がよく分からなかったところが、行かなくても映像を見ることによって生育状況が分かる。そういうものが今までWi-Fiではできなかったものが、遠くまで飛ぶとか、動画を送れるとか、そういう観点でメリットがある。
さらにWi-Fiで工場のコントロールをやられているところもたくさんあると思いますが、大きな工場だとWi-FiのAP1台では当然カバーできないので、多くWi-Fiを設置する必要があります。HaLowだと1台でカバーできるので、もちろん高精細なものはたくさん送れませんけど、そういうものをうまく併用してやると、情報収集とか、いろいろな管理のことができるようになります。
それから、ホームユースといいまして、特に家の中で考えると、今までのWi-Fiは、大きい家では部屋の隅までいかないということがありますし、基本的に家の中の通信になりますが、Wi-Fi HaLowを使うと、家の外に駐車場があって、車から降りたら車の情報が自動的に家の中に入ってくるとか、あと家の外に置いてある監視カメラを壁に穴をあけることなく持ってくる、そういうことができます。あといろいろな周辺の安心・安全も考えると非常に有用なのではないかと思っています。
こういったものが製品として、いろいろと出始めています。細かい話なので、詳しくは説明しませんが、こういった感じで進んでいます。
この発表が終わるのは4時10分ですが、5時に今日は閉まり、残り50分しかありませんが、ぜひ見に行ってほしいなと思っています。これは人が誰も入っていない、前日の写真です。今、本当に出ている製品がいっぱいあります。だから、買いたいといえばインターネットで買ってということになりますが、LoRaやSigfoxのように管理されていませんので、Wi-Fiと同じように買ってそのまま使えます。
当初はそんなに小さい端末はないですけれど、ワンセットを買うと、簡単にLANで結ぶことができる。皆さん、家に必ず無線LANがありますよね。それのLANの口にぴゅっと挿すだけで、すぐに遠くのところの情報を取得することができる、軽い動画なら取れるということです。今回は動態デモを5つぐらい展示しています。Wi-Fi 6Eや7、7でしたらサンプル機、そういうものも展示していますので、ぜひ行っていただければなと思います。
プラベートワイヤレスネットワーク の構築に向けて
今までお話ししてきた無線の特徴を踏まえて、プライベートワイヤレスネットワークを作っていかなければいけません。
プライベートワイヤレスネットワーク、言葉が堅苦しいかもしれませんが、公衆ではないWi-Fiは全部そうです。Wi-Fiは皆さんの生活の中に入ってしまっていると思います。知らず知らずのうちに使っていると思いますが、そういうものを、ネットワークを作るサイドになって考えていかなければいけません。今、ここで11ahのよってパーツが埋まりましたので、ライセンスバンドたるローカル5Gを加えて考える必要があります。
実はローカル5Gもサブ6とミリ波とがあります。ミリ波は当初、製品が出ていましたが、取り扱いが面倒なのか、価格が高いのか、いろいろとありますけど、最近はあまり話を聞きません。ほとんどがサブ6だと思います。先ほどの講演で渡辺さんが発表されたと思いますが、サブスクで借りられるようになってハードルは凄く下がったと思いますけれども、そういったものをパーツとして使う、それからアンライセンスで自由に使える方式も使う、これらがプライベートワイヤレスネットワークとして使えるものになります。
重要なことは、この中のどれをどのように選ぶのかということなんですね。先ほどの周波数のときにも言いましたが、1つを選ぶのではありません。いろいろなものを組み合わせて使うことが重要です。だから、それぞれの無線の特徴をきちんと理解した上で、適材適所で物を使っていくことが重要なので、今日ご説明したような無線の少しの知識があると、どれを選べばいいのかということが分かると思います。
今までWi-Fi HaLowがなかったので、そういう用途に使えるプライベート通信はなかったのですが、なかったというか、LoRaやSigfox、少し下のもので「動画が送れないから残念だね」みたいな話になっていました。今回、使えるようになったことで、こういう使い方をどんどんしていって、端末の数がどんどん増えていけば、皆さんももっと使いやすくなると思います。
この図はいっぱい情報が書いてあるので、いちいち説明しませんが、言いたいことは左上の「どれか1つではなく適材適所に各方式を利用」ということです。上を見ると先ほど言った農地、水路、山林、右側を見ると工場、左下が家庭、オフィス、それからイベント会場、展示場。ここもそうですが、いろいろな場所で、どういう目的で通信を行いますか、どういう人を対象にしますかということで、どれを選びますかということが決まっていくので、先ほど言った一番右のミリ波なのか、真ん中のサブ6なのか、左のプラチナバンドたるサブGなのか、そういったものを選んでいかなければいけません。
さらにローカル5Gを使うということも実はあるでしょう。つまり、高信頼で、きちんとした通信をやりたいというときはローカル5G。今は少し値段が高いですけど、そのうち下がるでしょうから、そういったものを使う。先にも申しましたが、ミリ波が今後の鍵になると思うので、みんなが使えば値段が安くなるし、どんどん使いやすくなるというところです。そういったところをしっかり考えていかなければいけないと思います。
そういったところの特徴を、宣伝みたいになって申し訳ないですが、比較表などを書いて、保守に掛かる費用も含めて、こういう表を作っています。『プライベートワイヤレスネットワーク』というものを今日の展示と同様にWi-BizとAHPCと2つの団体が共同で発刊したものですが、こういうところに詳しい無線の方式と、その無線をどう選ぶべきかが書いてあるので、今日は時間がないので、細かくは説明しませんが、よろしければ購入して見ていただければと思います。
今まで話してきた中で1つだけ無線の重要な特徴だけど、意外と見過ごされていることを最後に1つだけ話をします。
「距離が1キロ飛びます」とかとよく言いますよね。IoTなんかで長距離が飛ぶみたいによく言いますが、何もない平面で通信するような状況はまずいないので、普通は建物や山があります。そこに書いてあるように建物の裏側は通信できません。距離がいくら近くても建物の裏側はできません。それも周波数が低ければひょっとしたらできるし、高ければ全く通じない。それから、山があると、それで遮られます。
「1キロ飛びます」と言うときに「運が良ければ1キロ飛びます」が正しい表現なんですけど、そんな売り込み方だと誰も使わないじゃないですか。100メートルくらいならひょっとすると障害物がなく100メートル均一で飛ぶようなエリアを仮定することはできるかもしれませんが、1キロ以上の場合はほとんど障害物が存在するので、例えば、「この基地局が1個あったら10キロカバーできます」と言っている人は、ほとんど眉唾です。
だって、障害物があるんですから。10キロ先の山の向こうには絶対に届かない。難視聴地域が放送にあるのと一緒です。そういうことは、先ほどの方式選びの中で、必ず考えておかなければいけません。確率論で言われてしまうと、「あなたの家は確率論で外れました」と言うわけにいかないので、サービスを提供するためには、そういうところは中継機器を入れて迂回するようなことも考えていかなければいけません。今日ご説明してきた通り、どの方式をどのように使うか、無線の特徴をよく理解した上でやっていただくことが一番いいかなと思います。
Wi-Bizの取り組み(00000JAPAN)
最後に実はここ数日、今週ぐらいに話題になった、私ども無線LANビジネス推進連絡会の取り組みがニュースに出ているので、それを少しだけ最後に紹介したいと思います。
私どもで00000JAPANという災害用統一SSIDというものを、会員の皆様のご協力により進めています。これは地震や洪水や大雨で被災地になってモバイルが使えなくなったとか通信手段がなくなったときに、Wi-Fiを使いましょうということです。モバイルキャリアは基本的に「モバイルを使いましょう」ということでやっていますが、元々Wi-Fiの設備も同時に持っている場合が多く、両方を併用してサービスを提供されています。
この場合、例えばドコモの加入者だとドコモのWi-Fiは使えるけど、KDDIやソフトバンクのWi-Fiは使えない、となります。災害のときは、必ずしも3社とも生き残っているとは限らないので、誰もが使えるほうがいいでしょうという人命重視の考え方によりまして、全てのキャリアが、SSIDを「0が5つのJAPAN」というものを出すことによってキャリアに関係なく通信できるようにしましょうという枠組みです。
総務省の地域通信振興課様を中心に、Lアラートというのは災害用のインフラ情報を提供するサービスがありますが、災害のときにテレビの外枠にテロップがありますよね。そこにLアラートから出ている情報が表示されています。水道や電気などのインフラが災害によってどうなっているかというものがありますが、それにWi-Fiの状況、00000JAPANが吹いているか吹いていないか、3年ぐらい前から提供を始めました。これによって00000JAPANが使えるエリアで安心して使っていただけるということです。これまで、ずいぶん発動する契機がありました。
言いたいところは右下のところですが、昨年、auさんが通信障害を起こして困られた方がたくさんいらっしゃると思います。そういうときにキャリア間ローミングは良い方法ですが設備対応が大変なので、少し長期的な視点でやるらしいと聞いています。Wi-Fiだったら簡単に使えるようになるということで、00000JAPANの枠組みを使ってやりましょうという申し出がありまして、Wi-Bizとして会員企業と相談した結果、公共性を重視して通信障害時にも開放できるような枠組をつくりました。もちろん開放するのはキャリアさんのWi-Fiが中心なので、実際の発動時に私どもがどうこう言うつもりはありません。災害用統一と言いながら通信障害にも使うので、言葉が合っていませんが、特例的にこういうことになりました。
以上で講演は終わりですが、この後、50分時間がありますので、ぜひお越しください。すぐにご覧いただけると思います。皆、待っておりますので、ぜひよろしくお願いします。以上で講演を終わります。ご清聴ありがとうございました。
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