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第10回社員総会 特別講演
新時代ワイヤレスWi-Fi HaLowの体感施設「νLab」の紹介

一般社団法人無線LANビジネス推進連絡会の第10回社員総会が2023年11月17日に沖縄セルラー電話株式会社本社ビルで開催され、802.11ah推進協議会 運営委員の吉田 英邦氏による特別講演「新時代ワイヤレスWi-Fi HaLowの体感施設「νLab」の紹介」が行われました。講演の要旨を掲載します。

 

 

ただ今ご紹介にあずかりました802.11ah推進協議会運営委員の吉田です。本日はこのような場でνLabをご紹介させていただく機会を賜りまして誠にありがとうございます。早速ですが、冒頭に北條会長からもありましたWi-Fi HaLowに代表されるプライベートワイヤレスの体感施設「νLab」をご紹介したいと思います。
νLab(ニュー・ラボ)なのですが、よくブイと間違われます。New Era WirelessのN・E・Wを取ってニュー、それをギリシャ文字にしてνLabとしています。進化した新しいプライベートワイヤレスをご紹介していきたいと思っています。

プライベートワイヤレスの進化と役割

先ほど総務省様のご紹介にもありましたが、2019年に自営無線の1つであるローカル5Gが制度化されています。また、昨年の9月に、今回、主に紹介させていただく802.11ah、通称Wi-Fi HaLowと呼んでいますが、こちらが制度化されています。同じく2022年9月にWi-Fi 6Eが制度化されており、自営無線と呼ばれるプライベートワイヤレスネットワークの幅が大きく広がり、新しい時代を迎えたと感じています。これらの最新機器やユースケースを体験できる施設としてνLabを開設しました。

皆様、ご存じのように、日本を取り巻く課題としては、少子高齢化、労働人口減少に伴う労働力不足、地球温暖化、自然災害の多発は、大きく取り上げられています。これらの課題をICTで解決していくために総務省を先頭に国全体で推進しているデジタル田園都市構想やSociety 5.0が大きく取り上げられています。これらの課題解決のため通信事業者は光回線の提供、あるいは公衆モバイルワイヤレス、いわゆる携帯のネットワークを提供してきましたが、今回、先ほどの制度化も踏まえて、自ら設計、構築ができる、いわゆるオーダーメイドのネットワークであるプライベートワイヤレスネットワークで対応することができるようなりました。

 


 

 

プライベートワイヤレスネットワークの種類と特徴です。このグラフは縦軸に伝送容量を示すような使い方を示しています。また、横軸に距離を示しています。高画質な映像を伝送するようなものについてはローカル5GやWi-Fiが使われていました。一方、センサー情報の収集についてはLPWA、例えばLoRaWANなどの伝送容量は小さいが距離を延ばす方式がありました。このイメージグラフから分かりますようにグラフの右上が隙間が空いていました。ここを埋めるものが、802.11ah(Wi-Fi HaLow)になります。併せてWi-Fiも6GHz帯を新たに制度化されましたので、おおむねプライベートワイヤレスで全ての使い方をカバーできるようになってきたことが分かるかと思います。これらのWi-Fi 6Eと802.11ahをνLabにして展示しています。

νLabはNTT東日本様にご協力いただいてNTT東日本 中央研修センター内に構築しています。1つの部屋をお借りして、新時代ワイヤレスの世界のご説明の他に、技術展示エリアとして802.11ahの装置や動態展示をしています。また、ユースケース展示エリアにはスマート農業・スマートファクトリー・スマートホームと3つのユースケースを動態展示も含めてご覧いただくような形になっています。また、Wi-Fi 6Eについては伝送速度を体験できる動態展示をしています。

【技術展示エリア】802.11ahの技術・装置の展示

最初に技術展示エリアです。802.11ah(Wi-Fi HaLow)の技術展示になります。802.11ahはWi-Fiファミリーの規格で920MHz帯のプラチナバンドを利用しています。比較的遠くまで飛び、見通しがあればという条件が付きますが、だいたい1キロを超えるような伝送性能を持っている規格です。また、大きな特徴として動画も送信可能です。更に別の特徴として、IPベースの通信規格となっており非常にデータ処理がしやすい形になっています。今までのネットワークを十分に使えるような形になっています。

具体的な装置類ですが、802.11ahのアクセスポイントとしてフルノシステムズさんの製品などが既に発売されておりますし、端末も静止画を送る太陽電池で動くようなカメラやAskey様の動画カメラも出てきています。更に、今までのセンサーに802.11ah対応の機器を組み合わせた製品も出てきています。これらがどんどん出てくると安価になってきますし、普及につながっていくと思っています。

 


 

 

νLabは静態展示の他に動態展示という形で実際にネットワークを構築しています。中央研修センター内の5号館屋上に802.11ahのアクセスポイントを置かせていただいて、宿泊棟ルート、養魚場ルート、ひまわり畑ルートとνLabの部屋から隣のビルのローカル5Gラボのルートと合計4方向のネットワークを構築しています。これらの動態展示ですが映像等をサーバにあげていますので、実際にこの場所からネットワークとつないで皆さんにご覧いただきたいと思います。まず宿泊棟ルート、アクセスポイントから端末のカメラまで185メートルあり、見通しはない形になっています。その映像がこちらになります。

 

 

ここは車の通りがあって動態ということが分かります。これが802.11ahで送れる映像です。さすがに車が通ったときにナンバーは見られませんが、台数、あるいは人が通ったら人数カウントはできます。このぐらいの画質のものは、見通しがなくて200メートルぐらいの距離であっても見ることができます。

802.11ahのユースケースのご紹介

続いてユースケース展示エリアのご紹介です。ユースケースの展示は3つの大きなテーマで扱っています。1つ目はスマート農業/自治体向け、2番目にスマートファクトリー向け、3番目にスマートホーム向けという形で、それぞれ動態を交えながら展示しています。

① スマート農業/自治体のユースケース
最初にスマート農業あるいは自治体向けになります。スマート農業/自治体様はいろいろな課題があるかと思っています。

 

 

昨今では、鳥獣害被害、ここはイノシシの絵が描いてありますが、最近はクマの被害も多いのではないかと思います。高齢化や後継者不足もありますので、農作物の管理などもICT化し効率化できればと思っています。ここでは農業に着目をして、デモをお見せしたいと思います。農地ではその場所に電源がないことが多いと思っています。νLabでは電源がないところにソーラーパネルの太陽電池を備えた静止画カメラを設置しています。それを802.11ahで伝送して画像をご覧いただく形になります。

 

※この画面は後日、改めて撮った画面です

 

これが先ほど動態展示のネットワークのうちヒマワリ畑ルート、今の季節はヒマワリがなくて草ばかりで申し訳ないのですがνLabは東京にありますので、今、東京は雨ということが分かります。これは現在の映像で、左下に15時44分とありますがこの時刻の画像が送られてきています。この画像は5分間隔で静止画が送られてきているのですが、ソーラーバッテリーの容量の残量は97%を示しています。5分間隔で静止画を送る運用を1カ月ぐらい実施していますが、バッテリーの容量はほとんど変わりません。太陽電池で十分に動作できると思っています。
さらに「過去映像を探す」という右側の画面ですが、こちらをクリックしていただくと、過去の写真・映像が5分ごとに送られて保存されています。時間を見ていただければ分かる通り零時、夜中です。これは赤外線カメラではなくて高感度な普通のカメラです。こういう形でもずっと記録ができます。

② スマートファクトリーのユースケース
次はスマートファクトリーのユースケースです。昨今では工場内でCO2の削減が叫ばれています。聞くところによるとCO2をどのぐらい使ったかをEU等に輸出する場合には書類に記載しなければいけないという事例を聞いていますのでCO2の計測が非常に重要です。

 


 

 

νLabでご紹介しているのは、例えば古い工場のライン等でアナログのメーターになってしまっていてデジタル化できずデータを効率的に集められない場合です。それらのアナログメーターをカメラで撮ってAIでデジタルデータ変換し、そのデータを802.11ahを使って収集するデモです。

 

 

これは、温湿度の測定器をカメラに映して、それをAIで読み取ってデータ化しています。暗くて見づらいですが、これは温湿度計です。上段が温度で、下段が湿度です。これをカメラで読み取ってデジタル化した数字が画面に出ていると思います。こういうことは、Wi-Fiでもできるかもしれませんが、工場ですと既にWi-Fiが使われていて、さらにWi-Fiを利用しようとすると電波干渉が起きたり、SSIDが増えてしまって通信が遅くなるなど厳しい環境が工場内にあります。そういう場合には周波数帯が異なる802.11ahを使っていただくと解決ができるというユースケースになっています。

③ スマートホームのユースケース
次にスマートホームです。スマートホームは昨今、よくニュースで話題になるのは、マンション等の駐車場や駐輪場で放火事件が起きたり、バイク等の盗難が起きるということが報道されているかと思います。それらの対策のユースケースをご紹介したいと思います。

 


 

人感センサーを使いこれが作動したときに映るカメラ映像を10秒間サーバに送り、更にパトランプが回って知らせるシステムです。

 

 

これの映像等を802.11ahで送ってインターネット上のサーバに蓄積しています。防犯に役立つと思いますし、他にもいろいろなユースケースがあると思っています。

【技術展示エリア】Wi-Fi6E

今まで802.11ahの特徴である映像伝送を用いたユースケース等について詳しくご説明してきました。最後に、ここはWi-Bizの会場ですので、Wi-Fi 6Eも、釈迦に説法なところはありますが、ご紹介したいと思います。いろいろな形でWi-Fiを使われているので、非常に混雑しているという実例を挙げています。マンション近くの路上でキャプチャをすると、2.4GHz帯は言わずもがなで、5.2・5.3・5.6GHz帯でも非常に多くのWi-Fiが使われています。また、オフィスに目を向けると、全部の周波数チャネルを使っていて、かつチャネル利用率も非常に高く観測されることが多くなってきました。これを6Eで課題解決という形で導入を進められればと思っています。

 


 

 

皆さんご存じのことですので改めてご紹介はしませんが、最後のところで、今まで540MHzほどのWi-Fiの周波数帯が、このたびの制度整備によって+500MHz幅をいただけたということで、ここをうまく使うと課題が解決され構築も楽になっていくと思います。動態展示としては、Wi-Fi6Eのアクセスポイントから隣のパソコンにインターネットアクセスによるスピードテストをやっています。ここでスピードテストすると1.5Gbps程度の速度が出るデモとして紹介しています。

最後に

 


 

先ほど来、νLabのご紹介をしてまいりましたが、更に詳しく実機も見たい方はWi-Bizのホームページからお申込みいただければ見学できますので、是非お越しいただければと思っています。私の講演は以上になります。ご清聴ありがとうございました。


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