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対談
北條会長 vs 加藤理事
能登半島地震と00000JAPAN
迅速に発動し、避難所支援でも連携進む
元旦に起きた能登半島地震は甚大な被害をもたらしています。Wi-Bizは当日、「00000JAPAN」を発動しました。今回の発動の経緯とWi-Bizの取り組み、また災害と通信について、00000JAPAN推進委員会
加藤 一寛委員長(ソフトバンク)と北條会長(NTTBP)の対談を行いました。
能登半島地震と00000JAPAN発動
–最初に、今回の能登半島地震の00000JAPAN発動の経緯についてお話しください。
加藤 1月1日は関東圏に居ましたが、16時すぎに携帯電話の緊急地震速報を受信しました。そんなに強い揺れを感じなかったので、その瞬間には00000JAPANを発動しなければならないとは感じていませんでした。ただ弊社では、一定の規模の災害が発生すると全社員に安否確認メールが届きます。このメールを受信したことで、これはどこかで大きい地震が発生したと思いスマホでニュースを確認し、能登半島であることを理解しました。その後はすぐに直属の上長と話を始め、00000JAPANが必要になるかもしれないという状況になりました。
–キャリア間のホットラインはあったのですか。
加藤 普段から00000JAPANに関してはお互いが連絡を取り合える環境にあります。
まず当社としては該当地域を想定し、00000JAPAN発動に向けた準備を始めました。
その後、他の携帯電話事業者窓口の方々に各社の状況などを確認させて頂きました。
各社とも携帯電話ネットワークへの被害状況を確認しつつ、発動を決めたという流れです。
–最初テレビは、大きな津波が来る可能性があるけど、今のところ来ていないというようなトーンでしたね。
北條 当初は津波がまだ明確でなかったですね。テレビに珠洲市かどこかの海岸の映像が流れていて、建物は倒れていなくて人も外へ出ていました。そこは全く壊れていませんでしたが、実際は違う場所で大きな被害があったのですね。その映像を見ていて「震度6なのに大ごとはないのかな」という感覚が出てしまったのではないかと思います。
加藤 18時前後には被害状況も見えてきており、携帯電話に限らず通信への影響も発生していましたので、00000JAPAN発動となりました。
北條 Wi-Biz側の対応でいうと、ソフトバンク、KDDIはすぐに連絡が来ましたが、ドコモについては、こちらが調べてホームページに「開放している」と記載があったので、連絡して追加しました。
–今回は、モバイル基地局だけではなくて固定回線も大きく寸断されました。
–珠洲、能登、七尾など半島の奥まったところは、被害がとても大きかったと伝えられています。
加藤 全く影響を受けなかった訳ではありませんが、既設のWi-Fiスポットのうち00000JAPANを提供できなかったものは思ったより少なかったです。
北條 被害の地域は広かったのですが、意外とWi-Fiスポットの被害は少なかったですね。
加藤 今回特に被害が大きかった地域にはもともとWi-Fiスポット数が少なかったということがあります。既設のWi-Fiスポットは繁華街などに設置されている場合が多く、その地域はアクセス回線が担保できていました。
避難所支援でキャリア間の協力
–発動後はどんな状況でしたか。
加藤 既設のWi-Fiスポットでの00000JAPAN発動の他、避難所への臨時スポットの提供も行われました。様々な方が避難所支援をされる中で、携帯電話事業者はスマホの充電支援などを行います。その際に臨時のWi-Fiスポットを持ち込んでもらい、00000JAPANを提供しました。
–避難所支援は、連携が必要ですね。
加藤 避難所支援においても携帯電話事業者間で連携した取り組みが行われたと聞いています。より数多くの避難所支援を実現する為には必要だと思いますし、00000JAPANの側面からも、より多くの避難所に臨時のWi-Fiスポットが設置できることが望ましいと思います。
–どのモバイルキャリアのお客さんでも、使えるようになるというのは非常に効果的で、被災者の皆さんにはとてもいいことですね。
加藤 00000JAPANに限らず、充電サービスなど、契約先事業者にかかわらず少しでもお役にたてればという取り組みだと思います。
–今回は避難所支援が中心で、そこが大きな役割を果たしているわけですね。
加藤 各社の災害対策を担当されている方々が横連携し、より効果的な取り組みをされていたのだと思います。
北條 楽天モバイルは、普段はWi-Fiサービスをしていませんが、今回は1月2日に臨時APを設置するという形での発動になりました。楽天のバックホールで00000JAPANを吹くものを現地に持っていくという形です。
–楽天のユーザーは普段楽天のWi-Fiサービスを使っていなくても、00000JAPANでWi-Fiが使えるのですね。
北條 楽天のネットワークが来ていれば直接モバイルを利用できますが、それが来ていなくても他社の開放した00000JAPANでWi-Fiを使えるようになります。
加藤 00000JAPANなので、どこのキャリアも大丈夫です。
北條 仮にもし楽天のネットワークだけが生きているとすれば、他のキャリアの端末もみんなが楽天モバイルの臨時APを経由して楽天のモバイルネットワークにぶら下がる感じで使えることになります。
加藤 楽天モバイルは過去にも、臨時APの設置をしていただいています。
–固定回線が残っているところはWi-Fiは使えますが、固定回線がなくモバイルしか使えないところではWi-Fiはモバイル基地局経由になるわけですね。
加藤 通常よりも多くのスマホが接続できるタイプのポケットWi-Fiとイメージしていただければ良いと思います。
00000JAPAN推進委員会 加藤 一寛委員長
避難所では高い活用
–今回は能登半島だけでなく、他の4県も00000JAPANの発動対象ですね。
北條 今は北陸4県、石川、富山、福井、新潟です。
加藤 携帯電話事業者が対応する00000JAPANは、県域での発動がベースになっています。必然的にカバーするエリアは大きくなります。市区町村など、自治体が設置されたもので発動する場合は、その自治体だけがエリアとなります。
北條 石川県で自治体が00000JAPANを吹きたいというところはありました。また、新潟県でも、同様の自治体がありました。00000JAPAN認定事業者としては未登録でしたが発動していただき、登録は後日行いました。
–2ヶ月経ったわけですが、どういう状況なのでしょうか。
加藤 モバイルネットワークもだいぶ復旧してしますが、まだ暫定的な対応までという状況のところも多々あると思います。避難所も継続されていますので00000JAPANも継続提供中です。
北條 今までの例でいうと、避難所がある限り、終了はしにくいところがあって、モバイルが戻っても避難所があるとWi-Fiは吹き続けるようになります。
加藤 今回も含め、00000JAPANを止めるタイミングは難しいと思っています。先程もお話したように、携帯電話事業者は県単位で発動しますが、復旧状況は県内でも差が大きく、「まだ避難生活されている方がいる」と思うとなかなか停止の判断が難しくなります。
–トラフィック状況はどういう形ですか。
加藤 1月1日の夜間から徐々に増えて、2日・3日あたりはかなりの量になっています。その後、一定の量が続いた状況でしたので、相応の人数の方がご利用になられたのかと思います。
北條 今でもオープンしていて、例えば市街地の被災者ではない人がパケット代節約のために使っているということもあるでしょう。
加藤 例えば「観光で支援しよう」という動きもありますので、県単位でみると、避難生活をされている方がいる一方で観光客が入ってきています。観光客を受け入れるエリアでは被災者以外の方が利用していることもあるでしょう。
–石川県はじめ4県の人は、みんなWi-Fiを開けると00000JAPANが出ているのですか。
加藤 携帯電話事業者が普段より提供しているキャリアWi-Fiと呼ばれるものも継続して提供されていますし、00000JAPANも提供されています。並行して2波が提供されている状況であり、どちらもご利用頂けます。
北條 市街地の人が多く集まるようなところでは各社キャリアWi-Fiを提供しています。各キャリアのWi-Fiと00000JAPANとの両方が見えることになります。
加藤 スマホはWi-Fiへの自動接続機能があります。一度接続したWi-Fiには自動接続する設定としている方が多数だと思いますので、00000JAPANも自動接続される方も多く、トラフィックも多くなる状況です。
北條 自治体のWi-Fiはバックホールがそんなに太くなかったりしますが、キャリアはしっかりしたバックホールをお持ちなので大勢の人が使っても一応何とかなるということがあります。
ただ、00000JAPANは災害用で被災者の方がすぐに使えるようにということで、期間限定ですから、セキュリティもない、暗号化も掛けてないということは理解していただきたい。例えばLINEアプリはは、通常のスポットだと必ずブラウザ等で一度1回、認証を掛けてからでないと使い始められないので、いきなりLINEを起動してもつながりません。それを避けるために00000JAPANは全くセキュリティを掛け認証動作をしていません。だから、そういうリスクがあることを。
–避難所にポスターを貼ったりするのですか。「00000JAPANを吹いています。使えます。ただ、セキュリティはかかっていません」とか。
北條 セキュリティは書くようにはなっています。避難所に行くときには、そういうものを出してくれという話はしています。
加藤 避難所支援では臨時Wi-Fiスポットを設置し、その場で00000JAPANが使えることが確認できればポスター類もすぐ掲示ができます。「00000JAPANが使えます。セキュリティに気を付けてください」と伝えられます。
逆に、臨時Wi-Fiスポット設置自体はできるものの、そのタイミングでは00000JAPAN
を提供できない場合があって、その際にはポスター類の掲示を迷うことがあります。
北條 まだ使えていない。バックホールとして利用するモバイルネットワークがアクティブになっていないですからね。
加藤 モバイルネットワークがアクティブになり次第ご利用頂けるよう、臨時Wi-Fiスポットの設置はするのですが、そのタイミングにはご利用頂けない。ポスター類を掲示することで変に期待を持たせてしまうかもしれないという懸念もあるので、掲示判断も難しいですね。
北條 普通だったらWi-Fiに接続しなんらかにアクセスした際にホームページ転送して表示したりすることもできるのですが、利便性のため00000JAPANではそういうことは一切やらないようなルールになっています。
–今回の能登半島地震での発動は、スムーズに行ったわけですね。
加藤 従来通りのルールでしっかり対応できたかなと思います。
北條 今回は16時から21時までなので、5時間ぐらいで発動しているということで、これは各キャリアの普段からの準備ができていた賜物だと私は思っています。そうじゃなければ、以前はもっと時間がかかったことがたくさんあるので、今回は正月という特殊な環境にあったにもかかわらずとてもスムーズだったと思います。
–昨年来、災害など、いろいろとあって発動が多かったと思いますが、この間の状況はどうですか。
加藤 2023年の発動実績は、5月に広島で1回、6月に広島、松本、長野と異なるタイミングで1回ずつ、8月に沖縄・福岡、京都・岐阜を対象に1回ずつという状況で、計6回でした。発動要因は大雨や台風に伴うものでした。
–やはり増えているのですね。
加藤 最近では何かが起きてからではなく、予防的な段階で発動頂くケースも増えてきました。
–過去の経験から、予防的な発動する自治体もいるのですね。
北條 当初は地震が中心だったのですが、豪雨も考えなければいけないということで、もともとは広島の豪雨災害の教訓が起点になっています。
Wi-Biz 北條会長
震災と通信ネットワーク
–震災と通信ネットワークということでいうと、震災が起きるたびにネットワークの被害というものが社会に大きな影響を与えるようになっています。
北條 今回は道路、電気は被害甚大で、水道は壊滅的な被害を受けました。通信は必死の努力でわりと早めにいろいろと回復してきたように思います。
加藤 モバイルネットワークの被害は大きく3つの要因があると思います。1つ目は物理的に基地局設備が破損・倒壊してしまうこと。2つ目は電源です。各社予備電源の準備は勿論あるのですが、電気の復帰が長引いてしまうと徐々に影響範囲も大きくなってしまいます。3つ目はバックホール回線です。こちらも様々な準備をしていますが、光回線などの被害により影響を受けてしまいます。
北條 難しいですね。全国でいうと、充実したネットワークのところもあり、まだ十分ではないところもあり、災害が起きてもう一度見直して、他にも同じように被害が拡大するところはないかということは、確認をしていかないといけない。
そもそもアクセスする道路が1本しかなくて、そこが通じないとか、海から入りづらいとか、今回は非常に条件的に悪い状況にあったと思います。
–Starlinkが注目されていますが、衛星直通モバイルは、注目されていきますか。
加藤 それは当然注目されるのではないでしょうか。今でも衛星電話サービスは提供されていて、自衛隊や警察など復旧活動を行う方々が利用されています。
これが一般コンシューマ向けにもう少し普及してくると、災害のときの影響も少しは下がるのかもしれません。
北條 私も昔、衛星をやっていましたが、災害用の設備というものは災害が起きると「必要だ、必要だ」と話題になるのですが、災害が1~2年ずっと無いと、「衛星のこのコストはなぜ払っているのか」という声が出てきます。
–インフラは道路、水道、通信、それに電気も見逃せませんね。
北條 モバイル基地局はもちろん回線がこないとつながりませんが、そもそも電源がないと使えません。スマホも電気が来ないと電池が切れてしまいますから。
加藤 避難所支援においても携帯電話の充電提供は重要ですし、モバイル基地局の維持も同様です。自家発電装置や臨時バッテリーで対応します。
4月にガイドラインを改訂
–昨年、「通信障害時の00000JAPANの発動」が決まりました。大きい意味では災害だろうと通信の故障だろうとユーザにとっては同じことですから、これは重要なことですね。
加藤 携帯電話はすでにライフラインの1つとなっています。障害が発生したときにそれを支援する、00000JAPANが寄与できると捉えれば、今回のガイドラインの改訂は意味のあるものだと思います。
北條 実際には発動のタイミングがなかなか難しいとは思います。今回もあるキャリアが少しだけ故障したことがあったのですが、「あまり長くないから発動してもしょうがない」ということで発動しないことになりました。
加藤 短時間でもライフラインなのだから発動すべきだった、とのご意見もあったようですね。
–今、手順としては何時間という工程表があるのですか。
加藤 「何時間以内に発動しなければなない」という基準はありません。
自然災害の場合、当社では災害が発生し00000JAPAN発動の可能性が考えられた時点で発動の準備を始めてしまいます。発動判断に必要な諸々の情報収集や状況確認なども行いますが、とにかく準備だけはスタートしてしまいます。
一方で通信障害の場合、発災事業者の依頼を受けるまでは、他社が事前に情報を把握して準備を進めておくというのは難しいと思います。
北條 携帯電話事業者間で最初に連絡/相談をすることにはなっていて、それ以外のWi-Fiスポット事業者に対しては、その後Wi-Bizを経由して発動をお願いするという手順になっています。手順はきちんと決まっていますが、こういうことは起こらないほうが良いですね。
–4月にガイドラインが改訂されますね。
加藤 改訂の1番のポイントとなるのは、Wi-Biz会員ではなくても00000JAPANを提供頂けると、明文化したことです。
北條 00000JAPANは「基本は会員の皆様が吹きます。登録をきちんとしてください」というものからスタートしています。ただ、中には施設のオーナー様など、「ボランティアで被災者のために提供したい」という方もいらっしゃいました。そういうケースではWi-Bizに加入して年会費をお支払頂くということなく00000JAPANを発動できるようにしたということです。
北條 ただし、「00000JAPANを吹いていますけど、これは公式のものですか」というご質問が一定数来ますので、Wi-Biz非会員でも00000JAPAN認定事業者としての登録をいただくということになります。
–それを明文化したわけですね。
加藤 はい。ユーザ保護の観点から、Wi-Bizの会員にならなくとも「00000JAPANを発動する事業者です」ということをエントリーして欲しいという考えです。
北條 また会員と非会員の違いですが、非会員の方は発動する場所で「ここが発動場所ですよ」というような掲示だけはできますが、それ以外の活動、例えばパンフレットに「当社はこんな活動をしています」と記載することなどはできません。
加藤 改定のもう一つのポイントは、通信障害時の00000JAPAN発動に関わる部分です。「通信障害時の発動を可能とする」為の改定を早期に実現する必要があったことから、従来のガイドラインには暫定的な記載を行っていましたが、これを今回正式に反映しました。
ガイドラインは4.2から5.0になります。4月1日に施行を計画していますので、以降これに基づき、これからもしっかり対応していきたいと思っています。
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