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企業訪問
阪急阪神ホールディングス株式会社
Wi-Fi事業を軸にグループDX戦略を推進
顧客とつながり強化し「安心・快適」と「夢・感動」を提供

阪急阪神ホールディングスは関西で鉄道事業をベースに、住宅・商業施設の開発や、阪神タイガースや宝塚劇場などのエンタテインメントにいたるまで、多岐にわたる事業を展開している企業グループ。同社は2022年5月に「阪急阪神DXプロジェクト」を発表、その中でWi-Fi事業を取り組んでいる。
その戦略について、阪急阪神ホールディングスのグループ開発室・DXプロジェクト推進部の明石達雄課長にお話しを伺いました。

 

 

「阪急阪神DXプロジェクト」4つの取組

―阪急電車も阪神電車も関西人でなくても知っていますし、阪神タイガースや宝塚歌劇場は余りにも有名です。阪急阪神ホールディングスの事業の概要を教えて下さい。

明石 阪急阪神ホールディングスは、関西で鉄道事業をベースに住宅・商業施設の開発や、阪神タイガースや宝塚劇場などのエンタテインメントにいたるまで、多岐にわたる事業を展開しています。
当社グループでは、「都市交通」「不動産」「エンタテインメント」「情報・通信」「旅行」「国際輸送」の6つの事業領域をコア事業と位置付け、グループ経営機能を担う当社の下、阪急電鉄、阪神電気鉄道、阪急阪神不動産、阪急交通社、阪急阪神エクスプレスの5社を中心に、グループ全体の有機的な成長を目指しています。アイテック阪急阪神は、情報通信事業を担っています。

 

 

–阪急阪神ホールディングスは、「阪急阪神DXプロジェクト」を決定、グループを挙げて、推進に取り組んでおられます。どういう狙いだったのでしょうか。

明石 プロジェクトは、2022年4月からDXプロジェクト推進部が立ち上がり、その年から本格的にその取組みがはじまりました。コロナ禍を契機として、人々の行動・生活拠点の変化やQOL向上への意識拡大など、様々な社会変化が加速しており、これらは、今後も一層進展するものと想定されます。そうした中でも、グループとして持続的な企業価値の向上を実現すべく、「阪急阪神ホールディングスグループ長期ビジョン-2040年に向けて-」を策定し、その取組の一つとして、グループを挙げて「阪急阪神DXプロジェクト」を推し進めていくことになったのです。

–具体的には、どういう取り組みでしょうか。

明石 お客様との接点の多様化を進め、お客様一人ひとりに寄り添いながら、ライフスタイルのデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進することが目標で、「4つの取組方針」からなっています。
下の図を見てください。

 

 

 

まず一番目は、『お客様を「知る」取組』ということです。
当社グループでは、既存の顧客情報に横串を刺す形でグループ共通ID「HH cross ID」を導入しています。これにより、お客様は、当社グループの様々なサービスを1つのIDでシームレスにご利用いただくことができます。
また、HH cross IDを通じてグループ横断的に顧客データを統合し、当該データの蓄積・分析を行うことにより、One to Oneマーケティングや各事業間の相互送客を実現し、ロイヤルカスタマーの拡大等を図っていきます。さらに、新たな商品・サービスの開発等にも活用し、顧客満足度の一層の向上につなげていく狙いです。

–顧客との接点として、グループ共通ID「HH cross ID」を起点にするのですね。

明石 そうです。2番目は、『お客様に「伝える」取組』 ということです。お客様とのつながりの強化です。
スマホアプリ等のデジタルツールを通じて、顧客接点を拡充していくとともに、交通広告などの既存媒体と組み合わせることで、告知効果の最大化に努め、お客様とのつながりを強化していきます。
また、利用データを蓄積・分析することで、クロスセルの手法も用いながらお客様にリアルのサービスをご利用いただくなど、お客様とのつながりのさらなる強化を図ってまいります。

–『お客様を「知る」取組』と、『お客様に「伝える」取組』とが対になっているわけですね。

明石 その通りです。3番目が、『お客様が「デジタル時代の利便性」を最大限享受できる取組 』という点です。これは無料Wi-Fiサービス「HH cross Wi-Fi」の展開エリアの拡大を指しています。
1番目で述べましたように、グループではHH cross会員向けのサービスとして、一部の鉄道車両や駅・商業施設・ホテルなど、沿線を中心に無料Wi-Fiサービス「HH cross Wi-Fi」を展開していますが、展開エリアをさらに拡大し、お客様の利便性の向上を図ります。
また、Wi-FiサービスをはじめとしたHH cross IDで得られる複数の利用データを組み合わせることにより、サービスの利用場所やシーンを分析して新たな商品・サービスの開発につなげていきます。

–取り組みの3番目に、Wi-Fiサービス「HH cross Wi-Fi」の展開が全体の軸として位置づけられているわけですね。

明石 そうです。そして、4番目が、『当社グループの強みであるコンテンツを磨き上げる取組』です。 コンテンツの発掘・創出とその魅力度の向上を目指すものです。
当社グループが保有する既存の豊富なコンテンツそのものを磨き上げていくのはもちろんのこと、これまで整理ができていなかったコンテンツについても、デジタル技術を活用しながら集約・蓄積するとともに、系統立てて整理し、アーカイブ化していきます。
特に当社グループは、京阪神エリアを主要な事業基盤として多様な事業を展開しているため、こうした事業フィールドにおいてコンテンツを新たに発掘するなどして、その価値の創出・魅力度の向上を図っていきます。
また、リアルで展開している事業をデジタルで展開することについても検討を進め、外部のパートナーと連携しながら、新たなコンテンツの開拓に挑戦してまいります。

–こうした『4つの取組方針』によって阪急阪神グループのお客様に対して、デジタルとリアルの組み合わせで、よりよいエクスペリエンスを提供するという「DX戦略」なわけですね。
『阪急阪神DXプロジェクトの4つの取組方針』は、沿線を中心に駅や施設など阪急阪神グループのお客様に対して、どれだけ稠密な双方向の関係を構築できるかということが重要になりますね。

明石  そうですね。「阪急阪神DXプロジェクト」には、『沿線にお住まいの方をはじめとする多くのお客様に対して、さらに「安心・快適」な生活をお届けするとともに、当社グループが有する多様なコンテンツを活用して、デジタルとリアルをうまく組み合わせながら、「実体験」や「人とのふれ合い・コミュニケーション」等の不変のニーズから得られる「夢・感動」の提供を拡大していく』と謳っています。
なおこれら「阪急阪神DXプロジェクト」の取組については、まずは当社グループの沿線においてビジネスモデルを構築することとし、そのうえで、高機能なプラットフォームを低コストで利用できることをインセンティブとしてパートナー企業をさらに拡大し、沿線外も含めた関西エリア、そして 関西以外の他地域での展開を目指していきたいと考えています。

DX戦略の核を担うWi-Fiサービス

–「阪急阪神DXプロジェクト」の全体戦略がよく分かりました。今度は、その中のWi-Fiサービスについて、詳しく教えてください。

明石 下記の地図を見ていただくと、サービスエリア概要が分かると思います。

 

 

2021年11月1日からサービスが始まったのですが、そのときは阪急京都線の特急車両の9300系と京とれいん 雅洛、そして西宮エリアの阪急西宮ガーデンズからスタートしました。現在は、大きく広がったエリアでサービスをしています。

–鉄道事業を中心にグループ施設横断で、どの施設でも使えるようになっているのですか。

明石 駅・車両については、阪急・阪神のほぼ全駅、あとグループの鉄道各社の駅、車両は阪急9300系・2300系および京とれいん雅洛で提供しているという状況です。
商業施設は、梅田エリアでいうと観覧車が設置されているHEP FIVEをはじめ、近隣の主な阪急阪神の商業施設にもあります。
あとはグループでいえば宝塚大劇場や、阪神甲子園球場などにも提供しています。
ホテルがいくつか梅田や神戸三宮にありますが、こちらでもHH cross Wi-Fiが使えます。
「沿線中心に」と申したのですが、東京にもグループ施設があります。ホテルのほか東京宝塚劇場、ビルボードライブ東京・ビルボードライブ横浜でも提供しています。

–阪急阪神ホールディングスがサービス主体なのですか。

明石 サービスは我々が行っています。阪急阪神ホールディングスが提供するサービスを、沿線を訪れていただくお客様に、各施設共通のサービスとして、どこに行ってもお使いいただくということです。
アイテック阪急阪神はグループの情報通信のプロとして、各施設にWi-Fi設備を敷設しており、それをお借りしてHH cross Wi-Fiを展開しているわけです。

–阪急阪神ホールディングスのお客様に、デジタルで便宜を提供するわけですね。

明石 Wi-Fiサービスを使ってもらって、お客様にグループ各施設で、快適に、情報通信サービスをご利用いただくことが目的です。
阪急阪神ホールディングスとしてはDXの試みの中で、HH cross会員になってもらって、お客様のアクセス情報からお客様がどういう行動をされるかということを読み取って、One to Oneマーケティングの中でこの情報を生かそうとしています。

HH cross Wi-Fi会員の獲得策

-お客様のご利用はどんな状況でしょうか。

明石 毎日、沿線のとても多くの方が、電車、駅はもちろん、また劇場や球場、商業施設で使っていただいています。実にいろいろな方がWi-Fiを使われることが分かりました。毎日、何かしらWi-Fiを使われているという状況ですので、Wi-Fiはとても広まっている技術だなということを改めて実感しています。

–企業の顧客戦略としては会員獲得の目的はどこに置いているのですか。

明石 お客様にOne to Oneマーケティングを実践して快適に沿線を中心に生活いただくというところが目的です。マスの情報ではなくて、会員一人一人のお客様を知る取り組みです。
そして、デジタルを使ったサービスを新たに提供する、お伝えするというところです。
そのために、デジタルを使える環境やインフラを作るということで、Wi-Fiが1つの役割を担っているわけです。

–Wi-Fiサービスのミッションは何ですか。

明石 Wi-Fiに課せられているミッションはID獲得です。ID獲得のインセンティブとして、Wi-Fiサービスを提供しています。

–Wi-Fiサービスは、どんな段階ですか。

明石 日々お客様に登録いただき、順調に利用者は増えています。鉄道はもとより甲子園球場や宝塚大劇場利用者など幅広い客層の方を獲得できていると思っています。
他方で、場所によって干渉問題だったり、日々起こってくるWi-Fiの問題については、お客様の利便性向上がありますので、アイテック阪急阪神と一緒に改善活動を絶えず行っています。
また、Wi-Fiが秘めている付加サービス、付加価値は大きいと考えていますので、貪欲に追求していきたいと思っています。

–駅、電車、商業施設、ホテル、いろいろな場所でサービスを展開していますが、それぞれでの評価や手応えなどはいかがでしょうか。

明石 甲子園球場では、約4万人の観客席全部はさすがにWi-Fi特有の干渉など電波環境の問題があり、いつも全てに快適なWi-Fi環境が提供できない状況です。一方、バックヤードコンコースの飲食やトイレ休憩の場所などに手厚くアクセスポイントを施しています。観客席を何とかできないかというのは、やっている側としては結構もどかしいところではあります。
あとは車両は、掛かる初期投資、経費、通信費など課題は大きいですが、お客様のWi-Fiを使うシーンでいえば一番使いたい時間でもあるので、検討は続けていきたいと思っています。

–今後のサービス展開については、どういうプランでしょうか。

明石 グループ施設を中心にエリア拡大はさらに進めていきたいです。顧客の皆様方が楽しむのはグループ施設だけではないので、沿線外の地域でWi-Fiを使える場所は拡大できないかとか、そのための横の連携、Wi-Fi設備があるところや他のグループで相互乗り入れできるところはないかというところを探っています。
その他沿線エリアであっても、インバウンドの方々が行く場所は日本人とは違ったりもするので、その場所にWi-Fiが置けないか検討していきたいと思います。
あとは品質強化で、アプリ、電波環境とも日々改善に努めていきたいと思います。

–最後に、今度の取り組みについて、お願いいたします。

明石 私が担当しているのは、「Wi-Fiを使ってのDX」でもありますし、「広域化」の目的もありますので、鉄道会社だけではなくて、Wi-Fi網を広く国内に広げていきたいと思っています。アイテック阪急阪神を通じてWi-Bizともいろいろと連携させていただきたいと思っています。
来年4月から、大阪の万博が開かれます。外国人の方がたくさん大阪にも訪れていただきます。日本の各地からもいらっしゃる中で、駅や街の各所で利便性を高めるために、Wi-Fiサービスというものをより一層充実したものにしていきたいと思っています。

 


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