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活動報告 第19回技術セミナー
「Wi-Fi 7がやってきてどうなっている??」を開催

技術・調査委員会 大濱 裕史

都内ではやっと蒸し暑さが和らいだ9月20日に、「第19回技術セミナー」を株式会社ビーマップの会議室を会場にオンライン開催しました。今回も前回にひきつづきWi-Fi 7の話題をとりあげ、Wi-Fi 7の利用状況やその展望についてマーケットをけん引するメーカーから二人の講演者を招いて講演を行いました。

 

 

北條会長からの挨拶

 

 

昨年12月のWi-Fi 7のための省令改正、本年の「ワイヤレスジャパン」出展企業各社のWi-Fi 7の製品などにふれて、いよいよ新しい時代がきたなという感想を述べられました。他方で6GHz帯のWi-Fiへの割当は道半ばで、現在は5925~6425MHzの500MHz帯のみが利用可能で、Wi-Fi 7の実力を発揮するにはさらに「上半分」の6425MHz~7125の700MHz帯の割当が必要である点、これには放送事業者などの他のシステムとの共用のためにAFCシステムの運用開始が早期に望まれることなどにふれて、Wi-Bizとして積極的に貢献していくと話されました。
諸外国ではすでに運用が開始され、マーケットの活況ぶりが気になるところですが、本日のメインテーマ「Wi-Fi 7がやってきてどうなっている??」について、海外の状況やマーケットのお話に期待を寄せていると述べ、二人の講演者にマイクを引き継がれました。

ファーウェイ WLAN開発部門システムエンジニア Shanya Cong様 
ご講演 「Wi-Fi 7 市場動向とファーウェイのソリューション」

 

 

ファーウェイのShanya Cong様の講演は、中国からオンラインで行われ、同時通訳を交えての講演となりました。
Wi-Fi 7の主要技術を説明されたうえで、Wi-Fi 7のプロトコル規格も成熟し、主要なチップセットメーカやモバイル端末メーカーも続々とあたらしい製品を発表しており、ファーウェイやH3Cなどのデバイスメーカは法人向けのAPをリリースしているとして、事業展開しているマーケットの状況を説明していただきました。

「Wi-Fi 7規格の策定では、ファーウェイとして積極的に取り組み、全体の22.9%の提案を行い標準化へ貢献」しているという点と、2024年1月に開始されたWi-FiアライアンスによるWi-Fi 7認証の開始により「現在、20種類以上のチップがWi-Fi 7をサポートして、40種のスマートフォン、ノートPCがWi-Fi 7に対応している」状況をふまえ、エコシステムとしての市場の成熟について説明されました。

また、Wi-Fi 7の活用にむけた独自のソリューションについて、同時接続時のパフォーマンスが50%程度向上する「ジョイントスケジューリング技術」、専用レーン保証や個別の電波強化による損失ゼロを実現する「VIP機能」、無線通信を不正な手段で盗み見をふせぐ「Wi-Fi Shield」など、デモの動画を交えて紹介していただきました。
また、最新の導入事例として3例の紹介がありました。
「東南大学の九竜湖キャンパスのスタジアムの事例」では「Wi-Fi4で構築された無線ネットワークの無線カバレッジ、通信断などの課題の解決にWi-Fi 7を活用するとともに『光/電気ハイブリッドケーブル』による長距離のデータ伝送技術を導入した事例を紹介されました。

医療施設の事例では中国で導入が進むスマート医療の紹介として、無線医療システムの導入について、Wi-Fi 7でカバレッジを確保し、広い院内を移動する際に発生するローミング時の通信断をなくすことに成功したことで、医療システム、患者さん、来訪者向け、IoT向けのそれぞれのネットワークをセキュアに隔離しつつ統合することでTCOを60%削減したと話されました。

最後の事例として、あたらしい無線LANの活用事例として住宅やホテル、オフィスにおいてミリ波とWi-Fiを組み合わせたソリューションをデモを交えて紹介していただきました。ミリ波レーダをセンサとして使い、Wi-Fiと組み合わせて病室で患者のバイタルサインの観測などプライバシー配慮したあたらしいソリューションを紹介されました。

QAセッション:
ファーウェイShanya Cong様、Wi-Biz本橋副委員長

 

Wi-Biz 本橋副委員長によるQAセッション

 

Q1:Wi-Fi 7が盛り上がっているのはどこでしょうか
A:ファーウェイは世界に展開していますが、特にヨーロッパや東南アジアです。

Q2:御社独自技術のジョイントスケジューリング技術の利用について受信する端末は、何か特別な機能を実装している必要はありますか?
A:必要としません。通常の端末でご利用いただけます。

Q3:御社独自技術のVIP機能は従来のQoS機能との違いはどこでしょうか。
A:従来のQoSの技術は無線区間の輻輳には影響を受けますが、VIP機能は無線区間が輻輳時でも専用レーンやスーパフレーム、出力パワーを制御することで品質の維持をおこないます。

Q4:御社独自技術のWi-Fiシールド技術について、同一のチャンネルを利用する他のユーザへの影響はどうでしょうか。
A:認証しているユーザには影響はありません。不正に盗み見しようとするユーザに対して、その通信はノイズのように見えますが、同一チャネルの他のユーザには影響はありません。

Q5:御社の超長距離と説明された「光/電気のハイブリッドケーブル」は御社独自の技術でしょうか。それとも標準化された規格でしょうか。
A: 弊社で開発した弊社の独自の技術となっております。

Q6:Wi-Fi 7の売上について、御社では大学や教育機関から多くご利用をいただいているとご説明をお聞きしました。大学や教育機関が御社をえらぶ理由は何でしょうか。
A:有線/無線のフルラインナップの商品とソリューション力と考えております。

Q7:ミリ波の到達範囲はどのくらいでしょうか?
A:一概にはいえませんが、観測対象である対象物との距離にも変わってきます。病床の広さでは一つのミリ波レーダで対応が可能です。

Q8:ミリ波の活用にはAP以外に何か特別の機器は必要でしょうか。
A:必要ありません。APのみで対応可能です。

Q9: APについて6Eに対して7の価格感はどの程度でしょうか。
A:型番によってかなり変わってきます。実装するオプションが増えると高くなり、少なければ安くなります。5GHz/6GHz帯利用の2RFなのか、2.4GHz帯も使える3RFなど、機能が少ないものであれば、場合によりWi-Fi 7が多機能のWi-Fi6Eよりも安くなる可能性があります。

Q10:御社独自技術のVIP機能について、複数APが互いに干渉源になる場合でも機能するのでしょうか。
A:同一イントラネットのAP間の干渉ということであれば、チャネルの少ない2.4GHz、5GHzでは確かに発生します。その場合、干渉自体は避けられませんが、本日の資料にはない弊社独自技術がありAP間相互で協調制御を行い、干渉を最小化することでVIPユーザの品質は確保されます。

シスコシステムズ合同会社 上岡 昌人様
ご講演「6GHz時代の到来」

 

 

二番目のご講演はシスコシステムズの上岡様で、6GHz開放から2年を経た現在の状況についてお話をいただきました。
上岡様のご講演でも、冒頭iPhoneの話題にふれられ、次に25周年を迎えるWi-Fiの進化にふれ、歴史と技術進化について概観が示されました
6GHz帯を利用するWi-Fi6Eはデバイスの出荷やWindow、MacOSがサポートを開始するなど、いよいよ安心してWi-Fi6Eをお勧めできる状況となっているというお話でした。

「キャズムの谷」のスライドでは、国ごとに事情は異なり、日本ではWi-Fi 7は産まれたての状態で「技術に詳しいユーザ層(TECH ENTHUSIASTS)」が注目する初期段階にあると説明いただきました。現状はコンシューマ向け製品が登場する時期を迎えつつあるという分析に加え、これに対して先行するWi-Fi6Eはキャズムの谷を越えて、マーケットの主力製品として、ユーザはさまざまな製品を選択できる状況にはいっているというお話しでした。

つづいて今回のメインテーマである6GHzを活用した「Wi-Fi 6E」の話題では、「MIMO技術を進化させ、チャネルを増やしアンテナも増やして、なんとか高速化を果たすための技術を詰め込んできたWi-Fiの歴史は」ある意味「たくさんの利用者が、よりよい電波環境を作って、つながるよう競うための技術を詰め込んできた」ものであったが、「Wi-Fi 6Eは、これまでの発展とは異なり、6GHz帯を各国で揃って使えるようにした」というのが大きなジャンプアップであり6GHz帯の開放の効果を強調されました。

過去2年間のWi-Fi 6E導入状況を振り返り、当初は半導体不足やコロナ禍の影響で障害があったものの現在では遅れを取り戻す勢いで導入が進んでおり、特に2017年から2018年頃にWi-Fi設備を導入したお客様が、5年から6年の償却サイクルに合わせて、Wi-Fi 6Eへの移行を検討している傾向が見られるとお話しされました。この状況から、Wi-Fi 6Eの導入が順調に進み、既存設備の更新時期と重なることで新技術への移行が加速しているという状況を説明していただきました。

「6GHz追加で嬉しいこと」と題して「使えるCH数の増加」、「開放したてで干渉源が少ない」、「DFSの影響をうけない」、「遅い既存端末がない」の4点を嬉しいポイントとして示し、個別にその効果の解説とAPの更改の注意点として、古い規格の端末が混ざっている場合の課題や「Wi-Fi4~7で知っておくべき主要機能」というテーマで「周波数」、変調方式の「QAM」、「チャネルボンディング」なども説明をいただきました。

また、「Wi-Fi 7を待つべきか」について、あたらしい機能についてお客様のやりたいことや、環境をふまえて検討するのがよいというお話をされました。Wi-Fi 7の機能を有効に活用できる環境という観点で、総務省における6GHzの屋外利用、利用できる周波数の拡張について期待を述べられました。

「Wi-Fiデザイン」では「最新規格で高速化したのでAP数を減らしていいのか」という問いに対して、最大出力が変わらないのでAP数を減らすことはトラブルに繋がり、リプレイスの際にAP位置の修正など具体例をあげてご説明をいただきました。新しい規格の導入時に発生しうるWPA3の接続性の問題や、WPA、TKIPなどの古い規格の端末を利用したいというお客様のニーズへの対応など、規格が新しくなった際の注意点についてお話をいただきました。

QAセッション: 
シスコシステムズ合同会社 上岡昌人様、Wi-Biz本橋副委員長

Q1:日本は世界的に見て法制度が遅れているとお考えでしょうか?
A:日本は弊社にとって第一優先国としてとらえています。周波数拡張に向けて皆様の関心が高いとともにWi-Bizの皆さまの貢献、国をあげて積極的に取り組まれていると考えています。6GHzの下半分(5925~6425MHz)は事実利用できているので、そういう点でむしろ進んでいると捉えています。

Q2:6GHz帯の利用について、期待されるユースケースはございますか?
A: Wi-Fi展開への期待が高まっているのは主に製造業のお客様と感じています。労働力不足や自動化ニーズに対応するため、様々な分野でWi-Fiへの期待が高まっています。特にAI活用のためのデータ蓄積や高度なセンサ利用のニーズが増加しており、これらの処理に対応するため、高速で多チャネルの6GHz帯Wi-Fiの利用が増加しています。また、コンシューマ市場では、広帯域を必要とするゴーグルなどの端末での利用拡大が予想されています。このように、産業界とコンシューマ市場の両方で、高性能Wi-Fiの需要が増加傾向にあることが分かります。

Q3:Wi-Fi6EとWi-Fi 7の価格の比較についてお聞きできますでしょうか?
A:Wi-Fi 7の高速化に伴い、上位ネットワークも10Gイーサネット(mGig)へ移行すると予想されます。アクセスポイント(AP)にはmGigインターフェースに加え、GPS、BLEなど多機能化が進むと考えられます。あくまで個人的な見解ですが、これらの要因により、APの価格は現状維持か上昇する可能性が高いと想像しています。

Q4:Wi-Fi製品のオプションが多様化し、アンテナ数、MIMO、チャネルボンディングの設計により性能が変化するというお話がありました。メーカーはハイエンドからローエンドまで幅広い製品を提供していますが、ボリュームゾーンとしてはどのレンジの製品になるのでしょうか。
A:ミドルレンジの製品が最も売れ筋となっています。4×4 MIMOなど、多くのお客様のニーズに合致するスペックを持つためです。ただし、特定の要求があるお客様は8×8のような高性能製品を選ぶこともあります。一方で、2×2でも十分と考えるお客様もあり、選択はお客様次第です。長期使用を考慮すると4×4が無難な選択肢となり、結果的にミドルレンジ製品が主流となっているようです。

Q5:OFDMA、MU-MIMOをはじめAPの選択についてたくさんの機能やオプションがありますが、使う側の目線で、どうすれば欲しい機能をもつベンダを選択し、製品が選べるのでしょうか。
A:悩ましいご質問だと思います。われわれも悩んでいますが、これに対する回答として、弊社のお話にはなりますが、各社の端末を実際に試験して、すべての機能ではないにしろ、それらをドキュメント化してご提示するようなことはしています。違う観点、実装している機能を活かすためのお話をすると、APと接続するスマートフォンやPCについても新しいドライバーに更新していくことも有効な手段です。

小松委員長への最後の質問(締めのご挨拶にかえて)
本橋副委員長

 

 

Q:最後に新しい周波数の拡大についてWi-Fi業界として期待するところありましたらお話を頂けないでしょうか。

A:使える周波数が広ければ広いほど、いろんなことができるようになると考えています。6GHzが屋外でも利用できるようになれば、さらにできることが増えるでしょう。このため、AFCを用いて屋外で利用できるようになることには期待をしています。Wi-Biz技術調査委員会も総務省の議論に参加させていただいて3年以上経過していますが、引き続き業界の皆様とともに積極的に取り組んでいきたいと考えております。


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