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活動報告 第14回企画運用委員会セミナー
「大阪・関西万博における先端技術」を開催
企画・運用委員会 副委員長 土屋 貴嗣
10月18日、企画・運用委員会主催で「大阪・関西万博における先端技術・通信ネットワーク技術に関する期待」をテーマにセミナーをオンライン開催しました。
いよいよ開催まで半年を切った「大阪・関西万博」は、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマとして、新しい技術や商品が生まれ生活が便利になる「きっかけ」となるよう「持続可能な開発目標 (SDGs)達成への貢献」、「日本の国家戦略Society5.0の実現」を目指しています。会場内では、Wi-Fi環境が整備され、Open Roamingを活用したシームレスな無線ネットワークが提供されます。
今回はお二人の講師の方に、万博におけるICTやネットワークに関する技術動向を紹介いただきました。QAコーナーでも多数の質問をいただき、大変有意義なセミナーとなりました。半年にせまった「大阪・関西万博」に対する期待が非常に高まったと感じます。
委員長挨拶
冒頭、企画・運用委員会の吉田委員長よりご挨拶があり、2025年4月から開催される万博は、未来社会の縮図としてさまざまな技術が多くの注目を集めており、特に通信ネットワーク分野は社会の基盤で今後のビジネスの在り方も大きく変えていくものになります。無線ネットワークではセルラー5GやWi-Fi6E/Wi-Fi7などにより高速、低遅延、大容量を扱えるようになり、万博でも未来のライフスタイルをどのように提供できるかが興味深いテーマとなります。
前回セミナーの「Open Roaming」では、無線ネットワークがシームレス・セキュアにつながることの重要性、可能性を考えることができましたが、今回のセミナーではそれも活かして、実際にどのような価値を生み出しそのチャンスを共有することによって、より未来のネットワークに近づけることを願っている、とのお話しがありました。
「大阪・関西万博」の成功に向けたICTの活用
1つ目の講演では、2025年日本国際博覧会協会ICT局長の菱沼宏之様より、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに開催する万博を成功に導くためのICTの準備状況について講演をいただきました。
2025年日本国際博覧会協会 菱沼 宏之 ICT局長
■大阪・関西万博の概要
略称「大阪・関西万博」ですが、正式には「2025年日本国際博覧会」であり、日本全体の博覧会となります。未来社会の実験場というコンセプトで、過去最多の規模となります。会場の夢洲までは来年に地下鉄がつながり、交通手段は地下鉄や、パーク&ライドバス、または船でのアクセスとなります。
また、ボランティアの募集が2万人に対して、5.5万人の応募が若い世代を中心にあったということ、全国各地のオフィシャルストアも展開されており、関東でも徐々に盛り上がりが始まってきています。
【特徴的なイベント】
・4/13開催初日:歌手のAdoさんによるコンサート
・5/26~6/3:総務省の主催による「Beyond 5G Ready ショーケース」として、2030年の6Gに向けた紹介、次の姿を示すイベント
・シグネチャー・パビリオン:8人の著名なプロデューサーによる「いのち」をテーマとしたパビリオン展示。など
■大阪・関西万博におけるICTの概要
会場内の情報通信インフラとして、日本国際博覧会協会が全域に光ファイバを整備し、その基盤の上でWi-Fiを含めた無線ネットワークでエリアカバーされていきます。会場内のWi-FiはCisco社のOpen Roaming対応アクセスポイントが導入されており、必要なプロファイルはOsaka Free Wi-Fi経由でダウンロードすることができます。これにより、空港や鉄道の動線からアクセスする海外/国内からの万博来場者に対して、シームレスなWi-Fi環境が提供されることになります。
■未来社会ショーケース事業の全体フレーム:特徴的な項目を示します。
・スマートモビリティ万博:EVバス(レベル4、無線給電)、空飛ぶクルマ
・デジタル万博:パーソナルエージェント、自動翻訳システム(1対N対応の同時翻訳)
・バーチャル万博:インターネット活用
・アート万博::会場の一部である水上を活かしたショーや大屋根リングのプロジェクションマッピング
・グリーン万博:水素やアンモニアの活用
・フューチャーライフ万博:未来の都市、ヘルスケアなど、Society5.0の実験場として、未来につながるイノベーション、IoT、スマートシティを見せていくことで、経済の発展と社会課題の解決、サイバーとフィジカルの融合を目指します。
■ICT-PFの構築とデータ利活用
「万博ID」によりバーチャル・リアルも連動できる仕組みが構築されます。ID登録して入場券を購入すると来場予約、駐車場の予約などもできます。スマホを活用したQRコード入場で混雑緩和、スムーズな入場が期待されます。過去の万博でも閉幕に近づくほどに人数は増えていく傾向があるとのことで、アプリ「EXPO 2025 Visitors」を活用して入場券や公式サイトやキャッシュレス決済情報など、シームレスにつながる様々な情報を賢く使っていくことが重要となります。
データ利活用・データ保護に対する統一的なルールを構築し、より良いサービス、会場運営を目指していきます。サイバーセキュリティ、安全安心に対して、しっかりしたリスクアセスメントや具体的な対処体制を構築していきます。
バーチャル万博は「空飛ぶ夢洲」のコンセプトで、Inclusive・Interactive・Co-Creativeを目指します。世界中、どこからでも誰でも参加できる、アバターの活用という、まさにリアルとバーチャルという融合がはかれます。
ぜひ事前情報を見ながら、実際に現地でワクワクする感動を味わいものと感じました。
NTTの大阪・関西万博への取り組み(IOWN活用)
2つ目の講演では、日本電信電話株式会社(以下NTT)研究開発マーケティング部門担当部長の河野成志様より、NTTの大阪・関西万博への参画と万博へのNTTのIOWN構想の活用についてご説明をいただきました。
NTT研究開発マーケティング部門 河野 成志担当部長
■NTTグループの大阪・関西万博における取組み
NTTグループでは、「人と地球のために挑み続ける」想いをもって、今回の万博では6つの協賛取り組みを進めています。
① NTTパビリオン:新しいの通信の可能性
② 来場者向けパーソナルエージェント
③ 福岡パビリオン
④ IONW-APN
⑤ バーチャル会場:バーチャル万博のプラットフォームの提供
⑥ 水素サプライチェーンモデル:水素発電 など
■NTTパビリオン:東エントランスそばのロケーション
パビリオンのテーマは「PARALLEL TRAVEL」。離れた場所と空間そのものをつなぎ、物理的、心理的な壁を越え、空間や感覚を共有できる新しい世界を示す、3D空間全体や五感をリアルタイムに空間伝送する体験型の展示となっています。
・空間をとどける。
・場を共有する。
・存在を感じる。
パビリオンの建築は「感情をまとう建築」のデザインコンセプト。来場者の盛り上がりなどをみて壁を揺らす「生きているパビリオン」、社員や子供たちとワークショップを通じてパビリオンの造作物をつくる「一緒に作るパビリオン」、カーボンニュートラルに配慮した建築素材や方法を採用「循環するパビリオン」、の3つ取り組みで進めています。建物も3つの分棟方式でパビリオンの間を抜ける風や光をコントロールし、3つのゾーンで空間伝送、先端技術やグリーンエネルギー、NTTの思い描く世界をPRしていきます。
■IOWN APN(オールフォトニクス・ネットワーク)
低遅延・大容量通信のIOWN APNのキャンパスネットワークを夢洲会場内に構築し、様々なユースケース作っていきます。(今後ニュースリリースなどにて公表予定)。
APNは、End to Endを光波長で接続する(電気変換なし)ため、100G/400Gとした高速通信を、低遅延、高品質で提供することができます。
■バーチャル会場(バーチャル会場プラットフォーム)
夢洲会場のデジタルツインとして、サイバー空間内にリアルパビリオンと同じ環境を構築。エンドユーザは各々アバターを作成し、各国のまた民間出展者様のバーチャルパビリオンを自由に訪問し、バーチャル展示を楽しむことができます。
■EXPO2025パーソナルエージェント(25/4月~提供)
万博会場は155haとたいへん広く、160を超える建物があります。「並ばせない万博」として、基本的に予約してパビリオンを回ることを推奨しています。そのために自分の趣味嗜好にあったパビリオン・効率的なルート・見学コースのレコメンドなど、AIを活用したアプリを提供していきます。
■IOWN技術について
世界のデータセンターの爆発的な増大にともない、データセンターの電力供給が大きな課題となっています(データ量:約16倍、電力消費量:約13倍)。データ量の増大は動画の高精細化や3次元化、インターネット接続機器の拡大(IoT化)によります。さらに自動運転やドローン制御、VR/ARなどにより、より低遅延なネットワークが求められます。
IOWN構想は、光技術による「伝送」と、光技術を活用した「処理」によって、これらの課題を解決して、環境負荷の低減と経済成長を当時に実現していくことを目指し、2030年をめどに事業化を広げていき、End to Endの光ネットワークを実現していきます。
【IOWNの利点】
・低消費電力:電力効率100倍。電気変換しない、光電融合素子の活用
・大容量・高品質:伝送容量125倍(光ファイバ1本あたりの通信容量)
・低遅延:End to End遅延を1/200倍。空間伝送の実現を目指し、同期装置やデータ圧縮が不要になる
APNは光ベースのネットワークを構築するもので、サーバ活用や光電融合デバイスにより電力効率をUpしていきます。実際に低消費電力サーバ(SWB)を26年度に商用化を目指しており、万博のNTTパビリオンでもIOWN活用した次世代NW技術として、リアルタイム空間伝送や、来場者のモバイル環境増強、低消費電力サーバ技術の活用を進めています。
QAセッション
質問)会場におけるWi-Fi提供エリアや、方式はどうでしょうか。
回答)入退場口(東ゲート、西ゲート)の整備、会場内では人が滞留する催事施設や休憩所、案内所などはしっかりカバーしています。方式はWi-Fi6での提供となります。携帯電話も4社のアンテナを設置しており、4G/5Gで全域をカバーしています。
質問)万博IDでの具体的なメリット、特典などはありますか。
回答)ミャクPayでの支払い、ミャクポのポイントを貯めること、タッチ決済、お店によっては顔認証も提供されていきます。
質問)NTTとして万博を起点にIOWNをどのように進めようとしていますか。
回答)IOWNはすでにサービス提供しています。万博を良い機会と捉えて色んな事にチャレンジしたい声があり、IOWN APNを活用してできることをディスカッションしており、エンタメ、とくに大容量や低遅延のユースケースをまず実験として進めたい声が届いています。まずは種をまいてビジネスにつなげていきたい。
質問)前回の大阪万博で見たものが今のあたりまえになっていますが、今回の万博で何か新しい展示があるでしょうか。
回答)通信の広がりの中で、空間(3D、雰囲気、におい、味覚)をリアルタイムで共有することが、社会にどう影響するのかを見ていきたい。
5/26からのBeyond 5Gは新しい携帯電話の使い方を世界に示すことになります。またバーチャル万博で全世界のパビリオンをバーチャルに再現する取り組みは非常に大規模な取り組みになります。
質問)IOWNの低遅延性を活用したユースケースとして、エンタメは分かりやすいが、それ以外のケースはあるでしょうか。
回答)低遅延のニーズは大きくなっており、自動運転や多地点を低遅延に結ぶアプリケーションなどがあります。
質問)Open Roaming対応の環境を提供していますが、万博を機に広がる機運はありますか。
回答)ぜひ広げていきたい(Osaka Free Wi-Fiを起点に)、大阪は便利だなと言う実感をもってもらい、さらに広がることに期待したいと思います。
質問)IOWNのWireless=無線に特化したポイント、トピックスはありますか。
回答)NTTとしてはBeyond5Gの取り組み、宇宙通信は次の世代の通信のトピックスになると思います。
質問)万博の展示の中で、通信の点でお奨めの展示はありますか。
回答)AI活用した未来の展示や、シグネチャーパビリオン(8つ)には期待ができると思います。
APNではキャンパスAPNとしてNWの裏側でリアルタイム性を提供しています。各パビリオン内のICTを使った展示、スマホアプリの活用、デジタル技術の活用をぜひ見ていただきたい。
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