全体報告 総務省 第5回「地域IoT実装推進タスクフォース」
ロードマップ実現に向け「第二次提言(案)」を発表
渉外・広報委員会 森田副委員長
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5月24日、第5回「地域IoT実装推進タスクフォース」が総務省7階省会議室で開催されました。事務局と各分科会からこれまでの取り組み状況の説明が行われ、構成委員からのコメントを受けたあと、「第二次提言(案)」に向けての発表がされました。
総合的推進体制の確立に向けて取組状況
最初に、第一次提言を受けた取り組み状況として、「縦」「横」「斜」総合的な推進体制について、各取り組みの報告がなされました。
まず「縦の糸」の取り組みとして、関係省庁、ICT関連推進団体と連携体制の構築に向けて、「ロードマップの主たる分野ごとに、関係する府省、団体等を中心として推進体制」を確立するために、関係省庁、既存ICT関連推進団体、分野別の業界団体等との連携・取組の強化を進め、教育分野、医療分野、働き方分野、防災分野、農林水産分野等にアプローチ状況の報告が行われました。
次に「横の糸」の取組として、地方自治体、民間企業、関係団体との「自治体間の情報連携体制」を構築するため、全国知事会、全国市長会、全国町村会と連携して、
① IoT推進に意欲的な自治体(100団体程度を想定)と民間企業等が参加する、「地域IoT官民ネットワーク(仮称)」の設立
② 地域IoT実装推進に向けた、全国市長会との地域IoT実装の取組内容、優良事例の紹介、意見交換の状況について報告がされた。
最後の「斜めの糸」の取組として、地方自治体、民間企業、関係団体、大学、市民、NPO法人等、各地域ブロック単位の民産学官の組織体を活用した、各地域ブロックにおけるIoT実装推進ロードマップ実現に向けての活動・取組状況の報告が行われました。
地方自治体に対するアンケート結果
本年3月に、全地方自治体を対象に「地域IoT実装推進ロードマップ」の「分野別モデル」の実装状況に関するアンケート調査を実施。4月末時点で773自治体からの回答があり、回答内容の傾向について説明がされた。(前回調査平成26年度との結果比較含む)
回答によって、地域におけるICT/IoT利活用に「関心」がある自治体は9割以上になることが分かりました。
地域IoT実装推進タスクフォース(第5回)配付資料 資料5-1より作成
実際に具体的な「行動」に移せていない自治体は多数あることが分かりました。
また実装に向けた地域の課題についても調査を実施し、傾向としては「予算の制約」「人材不足」「情報の不足」「推進体制の確立」が実装を阻む壁となっていることが分かった。
特に回答として多かった内容としては「予算の制約」と「人材の不足」が6割の自治体として抱えていることから、今後何らかの取組が必要となる。
取組状況以外にもIoT実装における地域の関心分野、地域の実装状況についてもアンケート結果の報告がなされた。
今年度「地域IoT実装推進事業」について
次いで、平成29年度当該事業の概要について説明が行われ、事業概要としては、以下のようになります。
① 「地域IoT実装推進ロードマップ」(平成28年12月)における「分野別モデル」等のIoT実装の成功モデルの普及展開を推進するため、IoT実装に取り組む地域に対して初期投資・連携体制の構築などにかかる経費を補助
② 成功モデルの民間プラットホームを利用して複数地域が連携する地域IoTの普及展開策を推奨
※単独地域による申請も可
補助対象:地方公共団体、民間事業者
補助率:小規模地方公共団体は定額補助(上限3,000万円)、または事業費1/2補助
それ以外の団体は事業費1/2補助。
人材・リテラシー分科会報告
地域IoT人材の育成・活用に関する現状と課題、地域IoT人材の育成・活用推進、地域IoT実装推進ロードマップへの反映について説明が行われました。
① 地域IoT人材の育成・活用に関する現状と課題
地域IoT実装推進に当たっては、全ての国民による課題設定、課題解決の素養の習得を前提に、全国のあらゆる地域、様々な人々が、IoT化の意義を理解し、IoT実装を牽引して積極的に利活用することが重要との提言を行い、「自治体」「民間企業」「地域住民」の各のこれからの取組の方針を明示しました。
② 地域IoT人材の育成・活用推進
現状の課題を踏まえて、それに対応すべく、地域におけるIoT人材の確保を加速させるために、地域を挙げて求められる人材の育成・活用に取り組むことが重要で、それに合わせて人材としての定義を、「IoTをビジネスサービスにつなげる人材」、「IoT実装の現場を牽引する人材」、「地域IoTを通して多様な事例展開を担う地域人材」とし、人材育成・創造プランの具体的内容についても新規施策について説明がされた。
- 初等中等教育段階からのIoT教育の強化と子供の学習を支えるIoT教育環境
- 地域住民IoT利活用の推進とIoT社会への理解とバリアフリー対策
③ 地域IoT実装推進ロードマップへの反映
人材育成と確保については、地域におけるIoT実装を重要な基盤と位置づけ、全国各地域において、民産学官で取組を加速させることが適当との提言があり、次期「地域IoT実装推進ロードマップ」の改定に当たり、地域おけるIoT人材の育成・共有についても検討・記載がされるべきとの提言があった。
地域資源活用分科会報告
当該分科会では、IoT自体の新たな地域資源、オープンデータ・ビックデータの利活用推進、シェアリングエコノミーの推進について報告が行われました。
① IoT時代の新たな地域資源
地方自治体が保有する膨大にデータ利活用を可能にする取組、個人等の遊休資産(空間、モノ、スキル等)のシェアする仕組みに対して、「利用者主体」、「安全性・信頼性」、「多様な連携・協働」の3つの基本視点を踏まえて具体策を推進する。
② オープンデータ・ビックデータの利活用推進
オープンデータ利活用に向けた推進方策として、新たにシーズ・ニーズのマッチング及びノウハウの拡充として、データを保有する自治体等とそれを活用する民間との調整、仲介機能の創設、データ加工・公開等を習得できるオープンデータ・テストヘッド(仮称)の整備の話が行われました。
ビックデータの利活用の推進方策も、新たに運用ルールの明確化、民間クラウドの活用推進、ノウハウ拡充・意識醸成について説明がされ、次期「第二次提言」に向けて新たな取り組みを拡充するとの説明がなされました。
③ 地域シェアリングエコノミー推進
地域におけるシェアリングエコノミーの現状と環境変化について、地方自治体5市がシェアリングシティ宣言を実施、地域活性化や地方創生に貢献しているとのことで、総務省としてもシェアリングエコノミー検討会議中間報告等を踏まえて、従来の推進施策に加えて新たな「民間PFの活用・連携」を進め、自治体と民間プラットホームを提供するシェア事業者とのマッチング支援を推し進める説明がなされました。
報告の最後に「地域IoT実装推進ロードマップ」改定に当たり、「官民協働サービス」分野を追加し、地域におけるオープンデータ・ビックデータ利活用、シェアリングエコノミーを「分野別モデル」として位置づけ、タスクフォースで具体的な工程を検討するとの提言がされた。合わせて地域資源活用を支える新たなファンディング手法の活用として、これらに対してもタスクフォースで更に検討を進めるとのことです。
データ活用型スマートシティの推進について
データ利活用型スマートシティについてはICT街づくりにおける実現、海外デンマークコペンハーゲン市の具体的な取り組み事例の説明、データ利活用型スマートシティの基本構想、今後の取組、事業サイクルについて説明がなされました。
① ICT街づくりの実現
データ活用型スマートシティの実現に向けて平成24~26はICT街づくり(個別実証)、平成27~28は成功モデルの横展開、平成29~も前年取組と同様に成功モデルの横展開(継続)と新たにデータ利活用型スマートシティの実現を定義した。
② 海外事例
デンマークコペンハーゲン市において実施している、IoTスマートシティの事例の説明があり、街灯Wi-Fi、交通車輌追尾、携帯電話からのWi-Fiアクセス、公共民間データ統合等の利活用をベースとした、データのXML化やクラウド連携の必要性について説明がされた。
③ データ利活用型スマートシティ構想
データ利活用型スマートシティの実現に向けては、3層の仕組みが必要となり基盤を支えるネットワーク層、既存環境を有効活用するプラットホーム層、データ活用するためのサービス(データ流通)層が必要である旨の説明があり、それらに対して「運用段階フェーズ」「構築段階フェーズ」「計画段階フェーズ」「対象フェーズ」があり、各フェーズのポイントについて官民連携が必要となるとの話がなされました。
④ 今後の取組と事業サイクル
スマートシティ実現に向けて今後の取組として、産学官一体となって推進することが必要であり、産業界、地方自治体、大学等、政府の各の取組方針について説明がなされました。
今後のアクションプランとしては、短期(2年)、中期(3~5年)、長期(6年以上)での方針を明示、合わせて政府予算ICTスマートシティ整備事業単独ではなく、内閣府「地方創生関連交付金」や総務省「ローカル10,000プロジェクト」等の関連施策と連携することによりスマートシティの普及拡大を進めるとのこと。
最後に事業サイクルとして[A]PDCA的サイクルと[B]社会実装活動的サイクルを並列で回し続けるための組織作り、参加する仕組みづくりが必要との話がありました。
地域IoT実装推進ロードマップ改定案
今回の人材リテラシー分科会報告、地域資源活用分科会報告等を踏まえて、地域生活に身近な分野として「官民協働サービス」、「スマートシティ」を追加し、各モデルを「地域IoT分野別モデル」として位置付けるとともに、「地域IoT人材の育成・活用」をIoT基盤に追加するとの提言がされました。
タスクフォース構成委員からのコメント
各構成委員からは、様々な意見や発言が寄せられました。以下そのコメントの抜粋となります。
- IoTの実際の稼働や効果については、まだまだ具体的・現実的なレベルには至っていない。そのことからも今後はさらに民産学官が中心になり、地域を巻き込んだ連携取組が必要。
- 先進国において米・英・独はGDPが倍増する中、日本は5%減となっていて、まさにICTの利活用が遅れている国となっている。今後は個人が持つ潜在能力の顕在化に向けた、ICT化IoTの取組や雇用の改革を進め、従来の仕事を減らして新たな仕事の創出が必要。
- 教育分野においても教育のクラウド化を推進するために通信環境の改善が必要となり、合わせてプログラム教育の定着に向けて、イノベータの育成が必要となる。
- 第二次提言に向けた内容に対して、市民生活がIoTを実装する(市民にも役割がある市民参加型のIoT)、新産業創出、世界標準を担う等の文言を入れる必要がある。
- IoTは手段の一つであり、IoT化に対して目的を持った人ををどう支援するのかの施策が必要。
- IoTを実現するための具体的な施策を進めるために、組織力やその中の個人の育成をどうするかが重要になる。
- IoTを実現する方法も重要となるが、それを広く流通させる仕組み、それら対しての人材育成や教育制度が必要。
- IoT化の取組としてふるさとテレワークの拠点は増えている。地方におけるIoT化拠点になる取組、それを支えるIoT人材の育成支援、人材支援が必要。
- 教育市場においては各学校へのタブレット配備、個人所有端末の持ち込み、大学受験から高校受験にシフト等、様々な環境変化があるが、教職員自体の意識が変わっていないことから、ICT化の本質的な教育がされていない現状があり、今後はICT教育の浸透を進めるとともにIoT化に対しての教育環境も必要となってくる。
- これから民間の参加が必須となり、民が参加する政策支援や民が参加したがる施策を発信して行く必要がある。
- ビックデータのアウトプットを作って行くのは、若手の人達が中心となるはず。そのことから若手の人達が期待できる政府の施策、取組が必要となり、若手の人材育成ブログラム等の環境整備の必要となる。一例として今流行りの「ふるさと納税」モノでなく、地域IoT化を推進するための目的参加型の活用にシフトをするのも良いのでは。
- 全省庁、全地方自治体、役所と民間企業、地域住民等、組織と個人が連携をして、IoT人材の育成、ICT起用行くとIoT教育の推進が必要。
タスクフォース構成員の小林会長からのコメント
無線LANビジネス推進連絡会(Wi-Biz)の小林会長から、発言が行われました。
Wi-Bizに参加している企業の活動によって、様々な環境でWi-Fiが整備されて来ている。
ここ数年はWi-Fi環境の整備とともに自宅の光回線の環境も整ってきたことから、テレワーク等のインフラ環境も著しく進化をしている。これはWi-Fiを整備する各民間事業者の活動の結果であり、合わせて政府としての補助金政策の効果で環境整備が進んでいる。
今後は末端のWi-Fi環境の整備がさらに進み、合わせて5G回線の整備が進むことにより、IoTデバイスや仕組み、ネットワーク、クラウド環境(ビックデータ等)に対して、Wi-Fi(無線通信)インフラで接続されることになるので、それに対しての事業や取組に対してはWi-Fi業界団体としても積極的に参加、取組を進めて行く。
今後は様々な環境でIoT化の取組を進めて行くが、その取組を進める上での懸念事項がある。
IoTはネットワーク経由でクラウド環境につながることになるが、その多くはWi-Fi等のワイヤレス環境で接続されることになる。
ワイヤレス環境でネットワークやクラウドの仕組みにつなげることは、単純に接続するのでなく当然そのような環境に対して、どのような手法や仕組みを利用してつなげるのか、相当のスキルが必要となってきてそれらのスキルを持った人材が不足していることも事実であることから、IoTを推進するためにはキャリアやWi-Fi等に携わるベンダー間で議論や検討をして、人材育成の基盤づくり必要との提案を実施した。
ロードマップ実現に向けた第二次提言(案)について
事務局と各分科会からの報告を受けて、地域IoT実装推進タスクフォースとして、「第二次提言案」について説明が行われました。
第二次提言については、今後のIoT等を活用した新たな手法に積極的に取り組みを進めることは不可欠であり、速やかに現在のステージの「実証」から「実装」向けたステージへの移行が必要となる。そのステージに向けた取り組み方針について、ポイントは以下になる。
① 改定ロードマップの推進
各分科会の検討等を踏まえて改定したロードマップに「官民協働サービス」「地域IoT人材の育成・活用」などを追加。
また全国のあらゆる地域において、地域におけるIoT化の意義やその実装の牽引、積極的利活用を進めるため、「① IoT時代の新たな資源活用」「② 地域IoT人材の創造」について明文化がされた。
② 地域IoT実装への総合的支援
地域におけるIoT実装の関心は高まって来ているが、その具体的な実装に向けては、多様な課題に直面をしている。それらの「壁」を官民協働して打破する必要があることから、民間活力を最大限に活用しつつ、ヒト・カネ・ノウハウ等のあらゆる資源を動員し、計画策定から実装段階、その先の発展段階に対して、「地域IoT実装総合支援パッケージ(仮称)」の創設を進める。
- 官民一体となった地域の体制整備・計画策定支援
- 民間人材派遣、地域人材の育成等の人的支援
- 民間活力を活用した地域IoTの実装事業への支援
- 地域IoT実装の全国的な普及促進活動の実施
③ 総合的推進体制の本格展開
②記載の「地域IoT実装総合支援パッケージ(仮称)」を有効活用することにより、IoT実装の積極的な取組を進める地域については実装が加速されることになるが、他方では行動や計画策定に移すことができない地域があり、地域IoT実装の2極化を招く恐れもある。
そのような状態にならないよう、日本全国の各地域の隅々までIoT実装が波及するよう、取組みを進める必要がある。
特に「地域IoT実装総合支援パッケージ(仮称)」と地域ブロックごとの民産学官との連携体制は、それぞれの地域でのIoT実装を各地域へ波及させて行く推進母体となることから、力強く推進をすべきとの提言がなされた。
④ PDCAサイクルの確立及び今後の取組
ICT/IoTの進歩はめざましいことから、それに対してのPDCAサイクルを確立し地域実装の状況及び課題を把握し、既存施策の見直しや新たな分野の継続追加が必要となる。
一つの地域で多岐に渡る取組、一つの地域モデルを多数の地域で横展開実装する取組、さらには収益性向上に資するモデルの展開等、応用発展的な展開についても検討を進めていく提言がなされた。
参考:総務省 地域IoT実装推進タスクフォース(第5回)配付資料(資料5-1から資料5-7)
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/chiiki_iot/02ryutsu06_04000125.html
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